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【六十】学園都市に戻って新しい企画でござる!

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 夜神紫依は、近江の打ち合わせから戻り、宝田劇団本部の責任者の朝川夏夜に報告しに行く。

[トン、トン、トン・・・・・・]
朝川のドアにノックの音が響く。

「夜神ですが」
「どうぞ、お入り下さい」

「朝川さん、徳田さんとの打ち合わせの結果ですが」
「上手く行ったのね」

「はい、お陰様で」
「お顔見れば、分かりますわ」

「はい、具体的に報告します」
「移転規模ですが、五百五十名全員の受け入れが可能と言うことです」

「スケジュールはどうなりますか」
「生徒たち八十名の転居に四日です。
ーー 劇団員四百名の転居に二十日と考えています」

夜神は説明を続けた。 
「生徒たちのあとで、赤城麗華、大河原百合を優先します。
ーー 劇団員の転居終了が八月二十日前後です。
ーー 幹部とスタッフを入れますと八月下旬になるかと思います」

「やっぱり、七月中は無理でしたようね。
ーー それで、私たちは、どうします」
朝川が言った。

「生徒たちと合わせて、七月中では、どうでしょうか」
「そうね、夜神さん、それでいいと思うわ」

 夜神は移転の詳細を朝川に伝える。

「学園寮は地上十六階、地下三階の茶色の土の棟になる予定です。
ーー 中廊下を挟んで西側に二十五室、
ーー 東側に二十五室のビジネスホテルタイプと聞いています。
ーー 幹部とスタッフを合わせて五百五十名ですから、定員七百名の寮で大丈夫かと思います」

「そうね、夜神さん、宝田劇団の東都本部が完成するまでの間ですから、それで十分ね」
朝川が夜神に言った。

「じゃあ、朝川さんの了承を含めて、豊下さんに報告します」
「夜神さん、忙しいのに悪いわね。
ーー 東都に移転したら、私からも徳田大統領にご挨拶させて頂くわ」

「じゃあ、朝川さん、今日は失礼します」
 夜神紫依は、朝川に挨拶して自室に戻ると、豊下秀美に連絡を入れた。



 徳田康代たちは、安甲晴美かるた部臨時顧問の引率で東都の羽畑第二空港に到着した。
それぞれが空中浮遊タクシーに分乗して神聖学園都市に向かう。

 神聖女学園の玄関前で、生徒たちは数日ぶりに学園寮に戻った。
徳田、織畑、前畑、豊下、明里の大統領キャビネットの重鎮と天宮静女は、ショッピングセンターのカフェに行くことを決めている。

「康代さん、先に行って席を確保して置きますね」
『いつも悪いわね。秀美』

 豊下秀美の前世意識が、無意識に彼女をそうさせていた。

 康代は、玄関で別れたばかりの安甲先生に連絡する。

『安甲先生、すみませんが、センターのカフェに来て頂けませんか』
「これから・・・・・・」

『はい、今から移動しますので』
「分かったわ。ちょっと遅れるけど」
『先生、ありがとうございます』

「康代さん、いつもの席が空いていましたので確保しました」
『秀美は、早いわね』

 秀美は、照れると、髪の毛をいじる癖があった。
光夏が慣れた手付きでホログラムディスプレイのオーダー画面に数量を入れている。

『じゃあ、オーダーも終えたようなので、本題ね。
ーー 先日、稲葉旅館で宝田劇団の夜神さんと打ち合わせしたわ。
ーー 内容は、宝田劇団本部の移転計画よ』

徳田康代は水を飲みながら続けた。

『神聖の学園寮は五棟あって、教員と生徒の寮になっているのは知っているわね。
ーー それぞれの寮の定員は七百名だから、五棟で三千五百名になるわ』

「神聖女学園、中等部、高等部、大学の生徒の合計が二千名になります」

『豊下さん、続きをお願いしますね』
「幸い一番奥の茶色の棟の寮が空いていますのでと・・・・・・。
ーー 夜神さんに伝えました」
豊下が報告した。

『移転スケジュールは、どうですか』
「はい、夜神さんと朝川さんに伝えてあります」

『豊下さん、こちらの受け入れ準備は、どうですか』
「大きな荷物が無ければ、問題ありません」

「宝田劇団本部が学園都市の外れに出来るまでなら十分じゃないでしょうか」
『で、転居期間は、八月中に終えるの』
「はい、大丈夫です」

『向こうの本部は、当分支部扱いになると言うことで間違いない』
「はい、そう聞いています」

 豊下の言葉を聞いた徳田康代は、明里光夏を見て用件を変える。

『明里さん、宝田劇団の舞台練習で大講堂の使用が必要になって来ますけど・・・・・・』
「講堂使用スケジュールと体育館を合わせて、夜神さんと調整します」
明里が徳田に答える。

『練習スペースの確保は神聖女学園のスケジュールと擦り合わせてくださいね』
「はい」

『体育館の地下や地下広場も必要になるかもしれないわね』
「その時は、都度、対応します」

『あと武道場で・・・・・・。
ーー もう一度、八月に校内かるた大会を開催したいの、それもお願いね。
ーー もしも人手が足らない場合は、生徒会に要請してください』

「分かりました」
 明里の返事を聞いた時、安甲晴美がカフェに到着した。



「徳田さん、遅くなったわ」
『先生、ありがとうございます』

「話って何でしょうか」
『処暑の日に校内かるた大会を開催したいのですが』
「処暑か・・・・・・」

「私はいいと思うわ。まだ時間あるし」
『それで、白波女子高を招待したいと思うんですが』

「向こうの顧問に聞いてみないと分からないけど、面白そうね。
ーー 白波女子とは一勝一敗ね。
ーー 向こうにも損はないわね。
ーー じゃあ、そっちは、私から聞いて見るわね」

『先生、ありがとうございます』

「徳田さん、優勝チームになると練習試合の申し込みが増えるわよ」
『そうなんですか』

「当たり前じゃない。
ーー あなたたちが目標になったのだから。
ーー かるた部の部員は、もっと百人一首を勉強しないとダメね」

『それは、そうですね』
徳田は、安甲の言葉にはにかむ。

「上に行けば、通用しなくなるから」
『肝に銘じて置きます』

「じゃあ、私は、用事あるので失礼しますわね」
安甲が去って、緊張が解けたのか。
静女が口を開く。

「陰陽師、珍しく波動が乱れてござるなー」
『静女も感じたの』

「お疲れのようでござる」
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