攻略対象達の婚約破棄ミッション!~僕達の婚約者がヤバいんです~

樹林

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Mission Ⅰ and ・・・ 獅子王颯矢は鳥籠を作る為

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不動雅を一言で表現するなら、颯矢は迷わず「卑怯」と言うだろう。

颯矢が雅と婚約破棄したい理由は3つ。

①   声が無理
②   性格が無理
③   生理的に無理

「雅はいい子のフリをしているだけで実際はかなり悪どいよ。
自分が死なないように振る舞って他人を貶めようとしてるんだ。これを卑怯と言わずして何を卑怯と言うんだい?それに一般生徒の事を平民と呼ぶのも気に入らない。何時代なんだと思わないかな?」

いつものリビングで颯矢は言い放った。

「でもー、雅ちゃんは結構人気あるよねっ?」

「勉強は苦手のようだが、一般生徒にも優しいと評判だしな」

「ですが、取り巻きがアレらですからね。アレらを放置している時点で・・・いや、敢えて放置しているとすれば、不動さんはかなりの策略家でしょうね」

「で、俺の出番なわけだよな!?」

智の言葉に颯矢は深く微笑み頷いた。

「うん、もう話は通してあるから明日からこれを来て学園に来てね」

颯矢の護衛が運び入れた大きな箱は3つあった。
その中には学園の女子の制服一式、薄い茶色のロングのウィッグが1個。
そして、黒髪の様々な髪型のウィッグは30個はあり、同じく10種類のカラコン、メガネが30種類、なぜか下着が20セットと同じ数のブラパットが入っていた。

「これどうすんの?ローテーションで変えんの?」

「薄茶色のウィッグ以外はローテーションでいいよ。うまく行った頃に薄茶色になってもらうかからね」

「は?」

「一般生徒に成りすましてもらって、雅とその取り巻き達に不信感を与えてほしいから」

「なんで不信感なのー?」

「取り巻き達は雅が一般生徒を快く思ってないんだよ。そこに彼女達の気に入らない事をする一般生徒が現れたらどうするかな?」

「取り巻き達は怒り狂い、一般生徒達の不動さん達への信頼がなくなる、という事ですね」

「そういう事。ああ、実際に編入するのは薄茶色だけだから上手く立ち回ってね」

「は?編入?それってバレねえ?」

「1学年400人の巨大学園なんだから知らない顔なんていくらでもあるんだよ。まぁ。その為のありふれた黒髪だけど」

「で、なんで薄茶色だけガチで編入すんの?」

「破棄の後で本人と入れ替わってもらうからだよ」

颯矢の言葉に全員が目を見開いた。

「じゃあ、その子に会わせてくれよ。仕草や話し方を本物に近付けないとヤバいだろ?成りすましがふっつけ本番はさすがには無理だぜ」

その言葉に颯矢の眉がピクリと上がった。

「彼女の父親の了承が得られなくて無理なんだ。教えるのは僕がするよ。もちろん顔もメイクで似せるから任せて」

「どうして颯矢は会えるのー?」

「 彼女を見つけたのが僕だから?」

「は?まさか恋人とか!?いやありえねーな」

「ありえないよねー颯矢だもんねっ」

「まだ高等部に上がって1週間だし颯矢だからな」

「ですが、その人は獅子王家に受け入れられる家柄の女性ですよね?そうでなければすぐに排除されているでしょう」

颯矢は悠斗の言葉に頷き「そういう事」とだけ言い、彼女の名前を告げた。

────朝比奈美咲。

智以外の幼馴染達は朝比奈という苗字に「おや?」という顔をしていたが、颯矢の次の言葉で真剣な表情に変わった。



「さあ、最初であり最後となる長期ミッションの開始だ」





「あなた!何をしてるのよ!」

「はー?頼まれた資料運んでるだけですけど?見て分かりませんか?」

「どうして私達にぶつかってきたのかと聞いてるのよ!」

「この状態で前が見えると思いますか?普通はあなた達が避けるでしょ?だいたいね、こっちはどいてって言ったし!」

一人の女子生徒の抱える山積みの資料を見て、その場にいた一般生徒達は女子生徒の発言に小さく頷いていた。

最近になってこういうトラブルが毎日のように起こり、その中心には必ず不動雅がいる事に生徒全員が気付いていたが、これまでの雅の人気もあり誰もが様子を見ている最中のトラブルに興味津々という表情も見える。
実際には、雅は文字通り中心にいるだけで一言も発言していないが、生徒達には雅が言わせているように見えていたのである。

結局、その言い争いは女子生徒が土下座で謝罪させられるという終わりを迎え、それによって雅達の評判は完全に地に落ちた。


「聞いた?不動様が前が見えない位に重い荷物持った一般生徒にわざとぶつかって転ばせて、その子が怪我したんだって」

「おい、聞いたか?不動様が一般生徒の足を引っ掛けて転ばせたってよ」

5人の居合わせた生徒達から始まった噂は、たった2日で全校生徒に伝わり事実として認識されていた。

そこにもう1つ、新しい噂が出た。

「知ってる?不動様達が一般生徒は言葉遣いを正せって言ってたんだって。自分達には敬語で話せって事らしいよ」

「知ってるか?不動が一般生徒の事を平民って言ってたってよ」

「知ってる!生徒会の皆さんが注意しても聞かないんだって。最悪よね」

「あの人達を達を見損なったわ」

「あんな最低な人達と同類だと思われたくないから距離をとった方がいいわね」

「そうね」

「そうだな」

「そうしよう」





「おい、また不動達が一般生徒にひどい事したらしいぞ!」


この噂を払拭するのは難しく、良い人と言われていた雅もたったの数ヵ月で西太后とあだ名される程に嫌われていた。

そして、夏休み明けに1人の編入生が学園にやってきた。

孤児として育った素朴な少女は朝比奈家の隠し子で、再会した父親が快く家に迎え入れたというであった。

「今の生活に慣れない」と嘆く彼女に、ある生徒会のメンバーが寄り添った。
勉強を教えたり作法を教えたりと、かいがいしく編入生の世話を焼く生徒会メンバーはこの学園でも一番の人気者である為、生徒達は2人を優しく見守り嫌がらせをする生徒も出なかった。


そして10月も半ばになったある日の昼休みに食堂での事件が起こり、その日の放課後に生徒会からの通達により全生徒は講堂に呼び出された。


「生徒会に届く不動雅、取り巻きA.B.C.Dの罪についてこれより生徒達全員から聞き取りを行い、現在待機して下さっている学園長及び理事長会へと罪状及び処分に該当する内容を報告すると同時に審議を始めていただく事となっている。在校生徒は嘘偽りなく話すように!では始める」

1年生でありながら、後期の生徒会長に選出されたばかりの颯矢が高らかに宣言した。


「今日、食堂で不動さん達が朝比奈美咲さんに嫌がらせをして怪我までさせていました」

「その時に不動さん達は平民は食堂で食べるなと言っていました」

「不動さん達が悪いのに女子生徒に土下座させていました」

「平民は不動さん達に敬語で話せと強要していました」





生徒達から次々と告げられる悪行を聞きながら雅は困惑していた。

自分は何もしていないではないか。
確かに止めなかったが言葉すら発していないのに主犯扱いのように言われるのはなぜだと内心頭を抱えていた。
ヒロインのせいかと思い颯矢達のいる方向を見たが、壇上にいるのは攻略対象者達と生徒会のメンバーのみ。

その時、颯矢と目が合い心を読んだかのように言われた。

「不動さん達に怪我をさせられた生徒──朝比奈美咲は、あの後倒れて病院に運び込まれた。そしてそのまま入院したよ」

雅はますます困惑した。ゲームでは食堂で叩いて額を怪我するまではあったが、入院などしていなかったのだ。

「何をしても、何もしなくてもダメなのね」

雅は口の中で呟いたが、聞こえていた者は1人もいなかった。

そして、その翌日。

不動雅及び取り巻きA.B.C.Dは全員退学。
家からも出され、その後の消息は不明である。






遠い北の国で雅に似た日本人女性が修道女として働いているという話が伝わってはいたが、確かめる者は1人もいなかった。





──────────────────────────Mission Accomplished.
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