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さくら side 獅子王颯矢
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コンコン──。
ノックをすると、鈴の音のような可愛らしい声で返事があり、颯矢は扉を開けて中に入った。
「久しぶり・・・さくら」
薄茶色の背中の半分を覆う綺麗な髪、アーモンド型の大きな目の中にはヘーゼルの虹彩が光る。細い鼻に桜色の唇。
天使のような彼女の容姿と鈴の音のような声に優しく穏やかな性格は会う者全てを魅了する。
顔立ちは母親によく似てはいるが、母親が妖艶であるのに対してさくらは可憐。
その彼女がフワリと微笑んだ事で、颯矢は許された事を自覚して、窓際に立つさくらの元へ駆け寄った。
「やっと、やっとここに会いに来れるようになった。もうずっと一緒だからね。だから、もうあんな事は言わないで。ずっと側にいて」
そう言ってさくらを抱きしめながら、颯矢は今までの事を思い返した。
颯矢は雅の話を聞いた後、事実か妄想かを検証する為に街にある孤児院を全て訪れ、そこでさくらに出会った。
孤児院の庭で楽しそうに花を植えているさくらを見た瞬間、颯矢の色褪せた世界に色がつき全てが輝いてみえた。
───さくらは僕のものだ。
そう思った颯矢は、毎週のように孤児院へ通ってはさくらに思いを伝え続けた。
結局、さくらが颯矢を受け入れてれたのは出会いから1年3ヶ月後の颯矢の12歳の誕生日だった。
「颯矢君は私でないとダメって気がして。おかしいよね」と言って笑うさくらを抱きしめ、颯矢は永遠の愛を誓った。12歳とは思えない激しい愛である。
そして、思いを受け入れてもらってからと決めていた計画を実行に移す為に颯矢は生まれて初めて父親に頭を下げた。
────朝比奈に合わせてほしい。
父親は戸惑いつつも「勉強になるだろう」と了承したが、父親は政財界を牛耳る獅子王家のトップであり、とてつもなく忙しい。朝比奈家も政治家一家であり、父の応援する政党の派閥ではなかった事もありアポイントメントをとる事が難しい。
息子の願いを叶えるのに2年もかかってしまった父親は、颯矢の冷たい視線が刺さる度に背中に冷や汗をかいていたというが、海外出張時に偶然ではあるが彼と話す事ができたおかげで漸く約束が果たされる事となった。
14歳になった颯矢は財界のパーティーに出席していた。
父親から朝比奈志朗・美冬夫妻を紹介され、完璧な挨拶を披露した後で颯矢は美冬をジッと見た。
「私の顔に何かついているのかしら?」
美冬がそう言って妖艶な笑みを浮かべると、颯矢は真剣な表情で口を開いた。
「いえ、慰問先で知り合った友人が美冬様によく似ているので驚いてしまって・・・申し訳ありません」
夫妻がその言葉に反応しない筈はない。
その時の時間は20時。翌日が土曜日だった事もあり、颯矢は孤児院に連絡して了承を得るとすぐに2人を案内した。
院長と共に入口で待っていた彼女は、颯矢の後ろに立っている朝比奈夫妻の涙でボロボロの顔を見て驚きながらもハンカチを手渡していた。
そこからの展開は早く、鑑定結果は見るまでもない結果だった事から彼女は14年振りに家に戻った。
彼女の本名は「美咲」である。
そう呼ばれる事に抵抗がなくなるまで娘が見つかった事は公表しない、と志朗達が決めたのは彼女が戻ってすぐの頃。
その為に学園に通う事も禁じられた。
在籍はするが自宅学習という形をとる事になったが、彼女はこれに反発して部屋から出てこなくなったそうだ。
それと同時に颯矢は彼女に会う事を禁じられた。
不動雅という婚約者の存在を志朗は使った。
怒鳴る志朗に颯矢は雅から聞いたアマシューの話を嘘と真実を混ぜて話した(自分が探さなければ再会はなかった事、さくらは志朗の兄に迎え入れられた等)。
最初は全く信じなかった朝比奈も悪役令嬢やその親達の評判は聞いていたらしく、学園には入学自体させないと言い出したが、強制力というもので引き合わされて結局は悪役令嬢達に酷い目に合うと話すと、彼女を心から愛している志朗は颯矢を信用する事にした。
それからの日々は颯矢にとって地獄のようだった。
さくらに会えないのはもちろん、幼馴染達の婚約者達が話以上に問題があったのだ。
本人達には伝えていないが、自分達に計画があるように婚約者側にもそれがあり悠長に構えていられない。
悠斗の婚約者は悠斗の殺害計画を立てており、その為の人脈作りに余念がなかったのもお相手が多い理由の一つ。彼女が迂闊だったおかげでその計画を颯矢側に知られたのだが、最後の最後までそれに気付く事はなかった。
今は軟禁状態だが、それをネタに漫画を描いているそうだ。
奈央の婚約者は奈央を夏休み中に監禁しようとしていた。あのショップの2階には奈央専用の部屋が作られていた。ありとあらゆるSMグッズが飾られた部屋には家具はなく、天蓋付きのキングサイズのベッドがあるだけで、そのベッドには鎖で伸ばされた手錠が固定されており、奈央をどう扱うかはすぐに分かった。
今は用意した本人に使われている。
英司の婚約者にはデブ専の崇拝者が3人いた。その男達が英司を暴行する計画を立て実行まで後数日という所だったのだが、宇佐家の没落と婚約破棄で麗華が自ら男達の所有物となる事を望んだ為、実行される事はなかった。
ちなみに、計画が実行されたとしても返り討ちにあっていただろう。
───全てが終わるまでさくらと外で会えないのは本当に辛かったけど、その代わりのようにミッションはなんの障害もなく遂行できた。
さくらを取り戻せて幼馴染達も救えたのだから喜ぶ所だろう。
ああ、でも彼らはさくらを狙ってるから油断は出来ないね。
隠してるようだけど、僕に分からない筈がないだろう?
さくらの匂いを堪能しながら颯矢は嗤った。
ノックをすると、鈴の音のような可愛らしい声で返事があり、颯矢は扉を開けて中に入った。
「久しぶり・・・さくら」
薄茶色の背中の半分を覆う綺麗な髪、アーモンド型の大きな目の中にはヘーゼルの虹彩が光る。細い鼻に桜色の唇。
天使のような彼女の容姿と鈴の音のような声に優しく穏やかな性格は会う者全てを魅了する。
顔立ちは母親によく似てはいるが、母親が妖艶であるのに対してさくらは可憐。
その彼女がフワリと微笑んだ事で、颯矢は許された事を自覚して、窓際に立つさくらの元へ駆け寄った。
「やっと、やっとここに会いに来れるようになった。もうずっと一緒だからね。だから、もうあんな事は言わないで。ずっと側にいて」
そう言ってさくらを抱きしめながら、颯矢は今までの事を思い返した。
颯矢は雅の話を聞いた後、事実か妄想かを検証する為に街にある孤児院を全て訪れ、そこでさくらに出会った。
孤児院の庭で楽しそうに花を植えているさくらを見た瞬間、颯矢の色褪せた世界に色がつき全てが輝いてみえた。
───さくらは僕のものだ。
そう思った颯矢は、毎週のように孤児院へ通ってはさくらに思いを伝え続けた。
結局、さくらが颯矢を受け入れてれたのは出会いから1年3ヶ月後の颯矢の12歳の誕生日だった。
「颯矢君は私でないとダメって気がして。おかしいよね」と言って笑うさくらを抱きしめ、颯矢は永遠の愛を誓った。12歳とは思えない激しい愛である。
そして、思いを受け入れてもらってからと決めていた計画を実行に移す為に颯矢は生まれて初めて父親に頭を下げた。
────朝比奈に合わせてほしい。
父親は戸惑いつつも「勉強になるだろう」と了承したが、父親は政財界を牛耳る獅子王家のトップであり、とてつもなく忙しい。朝比奈家も政治家一家であり、父の応援する政党の派閥ではなかった事もありアポイントメントをとる事が難しい。
息子の願いを叶えるのに2年もかかってしまった父親は、颯矢の冷たい視線が刺さる度に背中に冷や汗をかいていたというが、海外出張時に偶然ではあるが彼と話す事ができたおかげで漸く約束が果たされる事となった。
14歳になった颯矢は財界のパーティーに出席していた。
父親から朝比奈志朗・美冬夫妻を紹介され、完璧な挨拶を披露した後で颯矢は美冬をジッと見た。
「私の顔に何かついているのかしら?」
美冬がそう言って妖艶な笑みを浮かべると、颯矢は真剣な表情で口を開いた。
「いえ、慰問先で知り合った友人が美冬様によく似ているので驚いてしまって・・・申し訳ありません」
夫妻がその言葉に反応しない筈はない。
その時の時間は20時。翌日が土曜日だった事もあり、颯矢は孤児院に連絡して了承を得るとすぐに2人を案内した。
院長と共に入口で待っていた彼女は、颯矢の後ろに立っている朝比奈夫妻の涙でボロボロの顔を見て驚きながらもハンカチを手渡していた。
そこからの展開は早く、鑑定結果は見るまでもない結果だった事から彼女は14年振りに家に戻った。
彼女の本名は「美咲」である。
そう呼ばれる事に抵抗がなくなるまで娘が見つかった事は公表しない、と志朗達が決めたのは彼女が戻ってすぐの頃。
その為に学園に通う事も禁じられた。
在籍はするが自宅学習という形をとる事になったが、彼女はこれに反発して部屋から出てこなくなったそうだ。
それと同時に颯矢は彼女に会う事を禁じられた。
不動雅という婚約者の存在を志朗は使った。
怒鳴る志朗に颯矢は雅から聞いたアマシューの話を嘘と真実を混ぜて話した(自分が探さなければ再会はなかった事、さくらは志朗の兄に迎え入れられた等)。
最初は全く信じなかった朝比奈も悪役令嬢やその親達の評判は聞いていたらしく、学園には入学自体させないと言い出したが、強制力というもので引き合わされて結局は悪役令嬢達に酷い目に合うと話すと、彼女を心から愛している志朗は颯矢を信用する事にした。
それからの日々は颯矢にとって地獄のようだった。
さくらに会えないのはもちろん、幼馴染達の婚約者達が話以上に問題があったのだ。
本人達には伝えていないが、自分達に計画があるように婚約者側にもそれがあり悠長に構えていられない。
悠斗の婚約者は悠斗の殺害計画を立てており、その為の人脈作りに余念がなかったのもお相手が多い理由の一つ。彼女が迂闊だったおかげでその計画を颯矢側に知られたのだが、最後の最後までそれに気付く事はなかった。
今は軟禁状態だが、それをネタに漫画を描いているそうだ。
奈央の婚約者は奈央を夏休み中に監禁しようとしていた。あのショップの2階には奈央専用の部屋が作られていた。ありとあらゆるSMグッズが飾られた部屋には家具はなく、天蓋付きのキングサイズのベッドがあるだけで、そのベッドには鎖で伸ばされた手錠が固定されており、奈央をどう扱うかはすぐに分かった。
今は用意した本人に使われている。
英司の婚約者にはデブ専の崇拝者が3人いた。その男達が英司を暴行する計画を立て実行まで後数日という所だったのだが、宇佐家の没落と婚約破棄で麗華が自ら男達の所有物となる事を望んだ為、実行される事はなかった。
ちなみに、計画が実行されたとしても返り討ちにあっていただろう。
───全てが終わるまでさくらと外で会えないのは本当に辛かったけど、その代わりのようにミッションはなんの障害もなく遂行できた。
さくらを取り戻せて幼馴染達も救えたのだから喜ぶ所だろう。
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さくらの匂いを堪能しながら颯矢は嗤った。
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