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第一部
子はよくても親はダメ
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マシュー・カーターが引っ掛かったのは王妃の手の者ではなかった。最後の試験と称して仕上げを施している間に本物が出張って来てしまった。
背に腹は変えられないと、ウィリアムは自身が最も信頼する男の元へ相談することにした。
本来なら彼を一番の側近に置きたかったのだが、父による猛反対にあったことで彼側からの辞退に繋がったのだった。
曰く「アレはお前の地位を奪う者で懐に置いておくべき者ではない。」
ウィリアムには父の考えが一生理解できない、と思った瞬間だった。母と彼の考えはそう言った人物だからこそ敵に置くのではなく、味方にしよう、としたのだろうから。それでも、父が怯えるのには訳がある。彼の父に、再起不能までに追い込まれたのは確実なのだから。
こちらの事情を知っていて、側近をしなくて良くなった彼、ルイス・デズモンドは彼の家の考えかどうかはわからないが、ウィリアムとはわかりやすく距離を置いた。彼とは従兄弟に当たり、前には良くサンドラを交えて会っていたと言うのに。
ウィリアムは彼の元に向かう途中、不都合な記憶に思い当たり苦笑を溢した。今となっては幼い苦い記憶。彼はサンドラとルイスが自分にわからない難しい話を楽しそうにしているのを見て、嫉妬した。あの辺りからウィリアムはあの二人に追いつきたくて勉強を強化したような気がする。嫉妬という言葉も知らなくて二人に対してモヤモヤした思いを消化することも出来ずに足が徐々に遠のいた。
ある時期から、サンドラと二人の会になったが、ルイスについて尋ねることはなかった。サンドラはもしかして、彼に隠れて会っているのではないか、という疑念を持ちながらも、ウィリアムはサンドラの心を手に入れたいと、必死だった。
ここに来て、彼女と会えない時間の中、当初の疑念が頭をもたげ、劣等感に苛まれる。この問題を収めることができなければ今度こそサンドラの隣には、彼が立つことになるだろう。
彼がこの歳まで未だに婚約者を決めていないのも、その考えを裏付けているようで、ウィリアムは、今は一旦サンドラのことは置いておくと決める。自分の地位を確立しないことにはサンドラに会うことは永遠に叶わない。
純粋な政略とは言い難い程には、ウィリアムはサンドラに惹かれている。それこそ誰にも渡したくはないぐらいに。
先方は先触れより早かった到着にも嫌な顔はおくびにも見せずに予定通りと行った様子でウィリアムを受け入れた。というより、本当に来ることがわかっていたようで、ウィリアムは一瞬薄寒くなった。ここに来なければ瞬時に自分が王の資質なし、と判断されていたことに気がついたからだ。
ウィリアムとしては、ルイスにだけ話を持って行きたかったのだが、残念なことに彼の父にまで話が上がってしまっていた。国際問題にもなりかねない、というか確実にその部類なのだから、国外にも顔の広い彼に助けを求めることは吝かではないのだが、父ではないが、彼に対しては全身が危険を察知して、拒絶反応が起きてしまう。ルイスはまだマシなのだが流石と言うべきか、息子とは年季が違い、まさしく大魔王と一部界隈で呼ばれるように風格が漂っている。
彼と父ではそりゃ、父が負ける。陛下だという最高権力者の筈なのに、何も権限など持たせてもらえない程にされた父に同情などできない。彼こそ味方につけるべき人物ではないか。人選を誤ったのは父自身だ。
ウィリアムは自身の父に出来なかったことをこれからしなければ、生き抜けないことに腹を括るしかないと決意を固くした。
相談の前に密かに胃薬を飲んでおいた。体のダメージは少ない方が良い。それを気の毒な目でルイスが見ているとも知らずに。
背に腹は変えられないと、ウィリアムは自身が最も信頼する男の元へ相談することにした。
本来なら彼を一番の側近に置きたかったのだが、父による猛反対にあったことで彼側からの辞退に繋がったのだった。
曰く「アレはお前の地位を奪う者で懐に置いておくべき者ではない。」
ウィリアムには父の考えが一生理解できない、と思った瞬間だった。母と彼の考えはそう言った人物だからこそ敵に置くのではなく、味方にしよう、としたのだろうから。それでも、父が怯えるのには訳がある。彼の父に、再起不能までに追い込まれたのは確実なのだから。
こちらの事情を知っていて、側近をしなくて良くなった彼、ルイス・デズモンドは彼の家の考えかどうかはわからないが、ウィリアムとはわかりやすく距離を置いた。彼とは従兄弟に当たり、前には良くサンドラを交えて会っていたと言うのに。
ウィリアムは彼の元に向かう途中、不都合な記憶に思い当たり苦笑を溢した。今となっては幼い苦い記憶。彼はサンドラとルイスが自分にわからない難しい話を楽しそうにしているのを見て、嫉妬した。あの辺りからウィリアムはあの二人に追いつきたくて勉強を強化したような気がする。嫉妬という言葉も知らなくて二人に対してモヤモヤした思いを消化することも出来ずに足が徐々に遠のいた。
ある時期から、サンドラと二人の会になったが、ルイスについて尋ねることはなかった。サンドラはもしかして、彼に隠れて会っているのではないか、という疑念を持ちながらも、ウィリアムはサンドラの心を手に入れたいと、必死だった。
ここに来て、彼女と会えない時間の中、当初の疑念が頭をもたげ、劣等感に苛まれる。この問題を収めることができなければ今度こそサンドラの隣には、彼が立つことになるだろう。
彼がこの歳まで未だに婚約者を決めていないのも、その考えを裏付けているようで、ウィリアムは、今は一旦サンドラのことは置いておくと決める。自分の地位を確立しないことにはサンドラに会うことは永遠に叶わない。
純粋な政略とは言い難い程には、ウィリアムはサンドラに惹かれている。それこそ誰にも渡したくはないぐらいに。
先方は先触れより早かった到着にも嫌な顔はおくびにも見せずに予定通りと行った様子でウィリアムを受け入れた。というより、本当に来ることがわかっていたようで、ウィリアムは一瞬薄寒くなった。ここに来なければ瞬時に自分が王の資質なし、と判断されていたことに気がついたからだ。
ウィリアムとしては、ルイスにだけ話を持って行きたかったのだが、残念なことに彼の父にまで話が上がってしまっていた。国際問題にもなりかねない、というか確実にその部類なのだから、国外にも顔の広い彼に助けを求めることは吝かではないのだが、父ではないが、彼に対しては全身が危険を察知して、拒絶反応が起きてしまう。ルイスはまだマシなのだが流石と言うべきか、息子とは年季が違い、まさしく大魔王と一部界隈で呼ばれるように風格が漂っている。
彼と父ではそりゃ、父が負ける。陛下だという最高権力者の筈なのに、何も権限など持たせてもらえない程にされた父に同情などできない。彼こそ味方につけるべき人物ではないか。人選を誤ったのは父自身だ。
ウィリアムは自身の父に出来なかったことをこれからしなければ、生き抜けないことに腹を括るしかないと決意を固くした。
相談の前に密かに胃薬を飲んでおいた。体のダメージは少ない方が良い。それを気の毒な目でルイスが見ているとも知らずに。
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