悪役令嬢は冤罪を嗜む

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噂①第一王子の毒殺未遂

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第一王子アントニオは、私の話に驚きつつも好意的な反応を見せている。

「そう言うことなら、協力するよ。実際問題、前は大っぴらにそう言ったこともあったからね。側妃側から貰ったお菓子を毒味した者が麻痺に罹ったり。

側妃が直々に仕掛けたと言うよりは、彼女に罪を着せて私諸共葬り去ろうとした者達もいたし。

勿論、犯人はその都度捕まえてはいるけどね。まあ、少しばかり情報を与えてやれば何の証拠もなくとも、暇な奴らは騒ぎ立ててくれるだろう。」

アントニオとアレクセイの仲はあまり良いとは言えない。

アレクセイから見たアントニオは越えられない高い壁であり、目の上の瘤で邪魔な存在だし、アントニオからみたアレクセイは愚かな王族の象徴だからだ。

アントニオからすると、母を蔑ろにし、その癖、公務では母に頼り切っている父の姿は情けないとしか言いようもなく、その父にそっくりな弟に至っては軽蔑の対象でしかない。

「正直、君を失っては国は立ち行かない。王族には代わりはいるが優秀な臣下を得ることは中々難しいことなんだ。愚かな者達を一掃した暁には、私に忠誠を誓ってくれるかい?」

第二王子の婚約者ではあるものの、彼本人には忠誠を誓えなかった私。

「お約束いたしますわ。」

言われなくともするつもりだったけれど、これで彼が協力してくれるのなら、と笑みをこぼす。

アントニオは満足げに頷くと、彼の部隊に指示を出した。

これで、冤罪の一つ目の種は植えた。後は芽が出るのを待つばかり。






毒殺未遂の実行犯に選んだのは、ブルック伯爵家の次男で、実は第一王子の子飼である男。彼は今第二王子派に潜入調査中で、所謂スパイの為、こういう仕事もこなしてくれる。この噂が流れる頃に彼がいなくなっていたなら、信憑性も増すだろうし、第一王子派を少しでも勘違いさせられたら、ラッキーだ。

彼曰く、彼方の企みは全て証言はあの男爵令嬢のみ、証拠もお粗末なもので、証拠として成り立つとは思えないものばかり。

「本気なの?」

あからさまに、冤罪だと言ってしまっている状態の向こうに対して、こちら側の火力は強すぎる。

「これじゃ、過剰防衛になるかもしれないわね。」

そうは言っても、クラリスには手を緩めてやる気は一切ない。誰に喧嘩を売っているのか、ちゃんとわからせなければならない。それはクラリスの義務だ。

「よくある恋愛小説みたいに、誰かが掻っ攫ってくれたらいいけれど、そうはいかないのよね。」

公爵令嬢として、舐められたら終わり。相手が王家だろうと、男爵令嬢だろうと、邪魔な物は消してしまうに限る。

イジメ、なんて大したダメージを与えられないことはしない。そんなに甘いと思われていたなんて、心外だわ。


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