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彼の本性

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ステラの新しい婚約者アルトは、ステラに一方的な親近感を覚えていた。彼にはある欠点があって、この年まで婚約者もできなかった。そうは言っても、彼は一度婚約間近だったご令嬢にイタズラを仕掛けて、彼女の友人がその罠に引っかかり、大変な騒ぎになったことがあった。

彼の周りにいた女性達は皆体格が良く、女性にしては頑丈だった為に、普通のご令嬢に対するイタズラの加減がわからずに、ついやりすぎてしまったのだった。

ステラのエディに対する悪戯は、ある界隈ではすごく有名で、彼は一度でいいからステラに会って見たかったのである。


アルトは念願のステラに出会った時、驚いた。

「あれ?思っていたよりも、可愛い!」

彼女の悪戯の相手のエディ・ライナーは、彼女を地味でパッとしない女だと言っていた。

だが、アルトの目には可愛くて明るい女の子に見えた。

アルトはステラに会うまで様々なイタズラを考えて仕掛けてみようと思っていたのだが、全て不発に終わった。

イタズラが原因で、彼女に嫌われたらどうしよう?アルトは同年代の女性で生まれて初めて「この人に嫌われたく無い」と思った。だから、女性に人気の友人に頭を下げて、女性のアプローチの仕方を学び実践していたのだが。

毎日ニコニコと話を聞いていても、アルトはステラの表情を見るだけで幸せだったので、ステラの心境に気づけなかった。イタズラをしなくなったアルトを家族は大人になったのだと安堵していたが、そうではない。単にステラに嫌われたく無いと、制御装置が動いただけだった。

だから、ステラが前婚約者にしようと仕掛けていた悪戯をアルトに仕掛けてきた時は、心臓が止まるかと思ったぐらい驚いたし、同時に笑いが止まらなくなった。

土まみれになって大声でゲラゲラ笑っているアルトに、少し困惑しながら、ステラがアルトに笑いかける。

「悪戯、大成功ですわね。」


後から聞いた話では、ステラは、アルトの色男モードは退屈で死にそうだったようだ。

「前の婚約者に仕掛けた悪戯だったのですが、引っかかる前に彼が捕まってしまいまして、披露できなかったのです。正直アルト様に叱られたらどうしよう、とヒヤヒヤしておりましたが、笑っていただけて何よりですわ。」


アルトはこの日、ステラにプロポーズをした。婚約をすっ飛ばして結婚を望んだアルトのことをステラは悪戯が気に入ったのだと勘違いしていたが。アルトは、ステラとなら退屈しない人生が送れるのではないか、と確信した結果だった。

アルトはその後、トルソーの新しい使い方と、驚かせる方法をいくつか提案し、ステラから尊敬の眼差しを向けられることになる。
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