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白い薔薇を貴女に
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「記憶が破壊? 未来のことと関係があるの……?」
泣きそうになりながらルクレティアは言った。
「それとも、誰かが黒魔術で、偽の記憶を未来の記憶としてわたしに植え付けたってこと? 誰が、なぜ? 黒魔術って、代償があるんでしょう? 誰かが代償を覚悟して、わたしにあんな記憶を入れたの? どうしてあんな、恐ろしい記憶を……」
再び吐き気を催したが、温かなソフィーの手が背に触れ、ほっと安堵の息をつく。
だが謎はある。
「ねえソフィー。黒魔術に関する知識なら、わたしだってあるわ。だけど記憶の操作とか、心の操作なんて、かけられた本人が望んでいないと失敗してしまうことが多いんでしょう? わたし、望んでなんていないわ。そんなこと望む理由もないもの」
ソフィーは心配そうな表情を浮かべながらも言った。
「分からないことが多くて、さっぱりだわ。もう少しだけ探ってみる。横になれる? ――催眠術のようなものを貴女にかけてみるわ。ハルヤナギの香を取ってくるから、待っていて」
その香は、人の意識に入り込み、魔術をかけやすくするものだ。主には精神に傷を負った者への対処に使われる。
頷いて、ベッドに横たわって待っていると、ほどなくしてソフィーは戻り、香を焚き始めた。甘い匂いが、部屋を包む。
体の中にソフィーの魔術が流れる感覚がした。
「さあ、貴女の記憶を思い出して――」
優しい彼女の声がして、ルクレティアの意識が、ふと無くなった瞬間だった。
――バチンッ!
大きな音を立ててルクレティアの体から黒い影が出現した。小さな悲鳴を上げたソフィーは、影に弾き飛ばされ壁に激突する。彼女の額から血が流れたのを見て、慌ててルクレティアは駆け寄り、自分の服の袖で彼女の額を抑えた。白い絹の布が、みる間に血に染まっていく。
「ソフィー、治癒魔法をかけないと!」
「そんなの後でいいわ。それよりも全然だめ。記憶に接続しようとすると弾かれてしまうわ。とても強い魔術なの。
修復しようとすると、貴女の精神も壊れてしまう。――こんなに強い魔術をかけられる人間の心当たりは、あたしの知る限り二人だけよ。分かるでしょう?」
ルクレティアの脳裏にもその二人がよぎる。
(オーウェン様と、リーヴァイ兄様? どちらかが、わたしの記憶を壊したの?)
だがルクレティアは、それがリーヴァイであるとほとんど確信していた。彼の方がオーウェンより魔力が高いというだけではない。
あの冷たい瞳、冷たい声色――彼から向けられた軽蔑と憎しみは、偽物の記憶と言ってしまうにはあまりにも強い実感が伴っていた。あれは現実にあった感情なのではないのか。
ソフィーは、ため息を吐く。
「でも、全然別の人かもしれない。誰か分からない以上、断定的なことは言うべきじゃないわね。ごめん、忘れて」
「さっきの影は、なんだったの?」
「言うなれば、貴女の記憶の番人よ。可視化されるほど強い魔術だということね。記憶を探るのは危険かもしれないわ。一人でやってはだめよ」
そう言ってから、ようやくソフィーは自身に治癒魔法をかけ、汚れたルクレティアの服の袖も魔法により綺麗にする。
「でもどうしよう。こんな状態の貴女を、放っておけるわけないし。しばらくは、あたしが毎日様子を見に来ようと思うけれど、いい?」
彼女が側にいてくれるなら安心する。何度も頷くルクレティアを見て、ソフィーは笑った。
「さっき貴女の中に魔術を入れて改めて思ったの。貴女の魔力は不思議よ。弱いのは確かだけど、側にいると癒やされる。魔力の強い者は時々暴走したり、強すぎる魔力に体が壊されてしまうこともあるのよ。
殿下も貴女のお兄様も、その類の人であることは確かで、だから貴女をとても愛しているのかもね……。でも、だから狙われやすいわ。貴女にかけられている魔術がどういう類のものなのか、もっとよく知っておかないとね」
それから、ふいにソフィーは思案するかのように頬を膨らませた。
「でもリーヴァイはさっきはなんだか、普通の人のようだったわ。あの人ほどの魔力があれば、貴女の様子のおかしさに、気づかないなんてことはないと思うんだけど――」
いずれにしても、もう少しだけ探ってみる。
ソフィーは、ルクレティアにそう言ってくれた。
(でも兄様は、いつかわたしを憎んでしまうかもしれない)
もしかするとすでにそうなっていて、だからルクレティアの壊れた記憶について言及しなかったのではないのか。いや、リーヴァイがルクレティアを憎むのは、アリシアを殺害しようとしたからだ。ならば今の彼は、妹を思いやる純粋な兄のはずだった。
目線は自然と、ベッド脇の白い薔薇に向けられた。
(白い薔薇――いつもそうね)
ふいに、幼い頃の思い出が蘇った。
手に白い薔薇を持ち、屈託なく笑いながらこちらに向かい差し出した、幼いリーヴァイの姿を。
――おれが育てたんだ。ルゥに、あげる。これ、好きって言ってただろ。
なんの憂いもなく領地で暮らしていた頃の、幸せな記憶。
家族としてよりも、公爵家の家長とその妻として子供に接する両親は、多くを王都で過ごしていた。
そのため両親はほとんど領地におらず、だからいつも、リーヴァイと一緒に遊んでいた。幼い頃、自分と兄は仲が良かったはずだ。なのにあれほど憎まれてしまうなんて。思い出して、ルクレティアの胸は締め付けられた。
薔薇を見つめるルクレティアに気づいたのか、ソフィーが笑いかける。
「意外にもリーヴァイったら、キザなところがあるわね。彼は貴女をとても心配していたわ」
ふふ、とソフィーはなおも笑う。
「断言するけれど、リーヴァイは貴女をとても愛してる。偏屈で分かりにくいところがあるけれど、貴女を大切に思っていることだけは、すごく分かりやすいもの」
それから彼女は考えるように眉間に皺を寄せた。
「少し、確かめたいことがあるの。まだ全然あやふやな推論だから、確信に至ったら、貴女に伝えるわ。あ、それからアリシア嬢についても探ってみる」
「いいの?」
迷惑ではないだろうかと恐る恐る問いかける。
「当たり前よ! こんなに楽しくてわくわくすることってないわ! 研究者魂に火が付くわ」
目を輝かせてソフィーはそう言った後、うんうんと、一人で、何度も頷いていた。
◇◆◇
それからも、医者や魔術師が順番にルクレティアを検査したが、誰もがソフィーほどの見解を持たず、問題ないと言うだけだった。ようやく診察が終わり、ほっと息をつけた頃、オーウェンが部屋にやってきた。
ずっと寝間着姿だったルクレティアは慌ててケープの一つを羽織ろうとするが、オーウェンは優しくそれを制する。
「そのままでいい」
頬に軽く口付けをすると、オーウェンはルクレティアの手を引き、そのまま長椅子へといざなう。
自分の膝の上に、ルクレティアを乗せる。背後から抱きしめられ、ルクレティアは顔が赤くなるのを感じた。
耳元で、オーウェンは囁く。
「君に何事もなくて良かった。とても心配したんだ」
ということは、ソフィーはまだ、オーウェンに記憶のことを報告していないようだ。
「リーヴァイも君の様子を気にかけていたが、君の昼間の様子から、側にいさせない方がいいと思ったんだ。良かったかな?」
なんと答えていいのか分からず、首だけ縦に振っておいた。リーヴァイを恐れているのは、記憶があるからだ。だがその記憶は偽物なのかもしれない。それでも彼が、恐ろしいのは確かだった。
(それに――オーウェン様に、言わなくちゃ)
腹に彼の熱い手を感じながら、顔だけ向け、ルクレティアは言った。
「オーウェン様の優しさには、いつもとても感謝していますわ。けれどもし、この先、貴方にわたしの他に愛する方が現れたら、わたしに遠慮などしないでくださいね。いつでもおっしゃってください」
記憶がもし壊され植え付けられているというのなら、アリシアとオーウェンの恋仲もまた偽りのものということになるのかもしれないが、それでも言わなくてはならないと思った。聞いたオーウェンはほんの僅かに眉を上げ、それから小さく笑った。
「そんなことあり得ない。私が愛しているのは、可愛いルクレティア、君だけだ」
そう言って彼は、蕩けるような口付けをした。
それが本心かどうか、ルクレティアには分からなかった。
泣きそうになりながらルクレティアは言った。
「それとも、誰かが黒魔術で、偽の記憶を未来の記憶としてわたしに植え付けたってこと? 誰が、なぜ? 黒魔術って、代償があるんでしょう? 誰かが代償を覚悟して、わたしにあんな記憶を入れたの? どうしてあんな、恐ろしい記憶を……」
再び吐き気を催したが、温かなソフィーの手が背に触れ、ほっと安堵の息をつく。
だが謎はある。
「ねえソフィー。黒魔術に関する知識なら、わたしだってあるわ。だけど記憶の操作とか、心の操作なんて、かけられた本人が望んでいないと失敗してしまうことが多いんでしょう? わたし、望んでなんていないわ。そんなこと望む理由もないもの」
ソフィーは心配そうな表情を浮かべながらも言った。
「分からないことが多くて、さっぱりだわ。もう少しだけ探ってみる。横になれる? ――催眠術のようなものを貴女にかけてみるわ。ハルヤナギの香を取ってくるから、待っていて」
その香は、人の意識に入り込み、魔術をかけやすくするものだ。主には精神に傷を負った者への対処に使われる。
頷いて、ベッドに横たわって待っていると、ほどなくしてソフィーは戻り、香を焚き始めた。甘い匂いが、部屋を包む。
体の中にソフィーの魔術が流れる感覚がした。
「さあ、貴女の記憶を思い出して――」
優しい彼女の声がして、ルクレティアの意識が、ふと無くなった瞬間だった。
――バチンッ!
大きな音を立ててルクレティアの体から黒い影が出現した。小さな悲鳴を上げたソフィーは、影に弾き飛ばされ壁に激突する。彼女の額から血が流れたのを見て、慌ててルクレティアは駆け寄り、自分の服の袖で彼女の額を抑えた。白い絹の布が、みる間に血に染まっていく。
「ソフィー、治癒魔法をかけないと!」
「そんなの後でいいわ。それよりも全然だめ。記憶に接続しようとすると弾かれてしまうわ。とても強い魔術なの。
修復しようとすると、貴女の精神も壊れてしまう。――こんなに強い魔術をかけられる人間の心当たりは、あたしの知る限り二人だけよ。分かるでしょう?」
ルクレティアの脳裏にもその二人がよぎる。
(オーウェン様と、リーヴァイ兄様? どちらかが、わたしの記憶を壊したの?)
だがルクレティアは、それがリーヴァイであるとほとんど確信していた。彼の方がオーウェンより魔力が高いというだけではない。
あの冷たい瞳、冷たい声色――彼から向けられた軽蔑と憎しみは、偽物の記憶と言ってしまうにはあまりにも強い実感が伴っていた。あれは現実にあった感情なのではないのか。
ソフィーは、ため息を吐く。
「でも、全然別の人かもしれない。誰か分からない以上、断定的なことは言うべきじゃないわね。ごめん、忘れて」
「さっきの影は、なんだったの?」
「言うなれば、貴女の記憶の番人よ。可視化されるほど強い魔術だということね。記憶を探るのは危険かもしれないわ。一人でやってはだめよ」
そう言ってから、ようやくソフィーは自身に治癒魔法をかけ、汚れたルクレティアの服の袖も魔法により綺麗にする。
「でもどうしよう。こんな状態の貴女を、放っておけるわけないし。しばらくは、あたしが毎日様子を見に来ようと思うけれど、いい?」
彼女が側にいてくれるなら安心する。何度も頷くルクレティアを見て、ソフィーは笑った。
「さっき貴女の中に魔術を入れて改めて思ったの。貴女の魔力は不思議よ。弱いのは確かだけど、側にいると癒やされる。魔力の強い者は時々暴走したり、強すぎる魔力に体が壊されてしまうこともあるのよ。
殿下も貴女のお兄様も、その類の人であることは確かで、だから貴女をとても愛しているのかもね……。でも、だから狙われやすいわ。貴女にかけられている魔術がどういう類のものなのか、もっとよく知っておかないとね」
それから、ふいにソフィーは思案するかのように頬を膨らませた。
「でもリーヴァイはさっきはなんだか、普通の人のようだったわ。あの人ほどの魔力があれば、貴女の様子のおかしさに、気づかないなんてことはないと思うんだけど――」
いずれにしても、もう少しだけ探ってみる。
ソフィーは、ルクレティアにそう言ってくれた。
(でも兄様は、いつかわたしを憎んでしまうかもしれない)
もしかするとすでにそうなっていて、だからルクレティアの壊れた記憶について言及しなかったのではないのか。いや、リーヴァイがルクレティアを憎むのは、アリシアを殺害しようとしたからだ。ならば今の彼は、妹を思いやる純粋な兄のはずだった。
目線は自然と、ベッド脇の白い薔薇に向けられた。
(白い薔薇――いつもそうね)
ふいに、幼い頃の思い出が蘇った。
手に白い薔薇を持ち、屈託なく笑いながらこちらに向かい差し出した、幼いリーヴァイの姿を。
――おれが育てたんだ。ルゥに、あげる。これ、好きって言ってただろ。
なんの憂いもなく領地で暮らしていた頃の、幸せな記憶。
家族としてよりも、公爵家の家長とその妻として子供に接する両親は、多くを王都で過ごしていた。
そのため両親はほとんど領地におらず、だからいつも、リーヴァイと一緒に遊んでいた。幼い頃、自分と兄は仲が良かったはずだ。なのにあれほど憎まれてしまうなんて。思い出して、ルクレティアの胸は締め付けられた。
薔薇を見つめるルクレティアに気づいたのか、ソフィーが笑いかける。
「意外にもリーヴァイったら、キザなところがあるわね。彼は貴女をとても心配していたわ」
ふふ、とソフィーはなおも笑う。
「断言するけれど、リーヴァイは貴女をとても愛してる。偏屈で分かりにくいところがあるけれど、貴女を大切に思っていることだけは、すごく分かりやすいもの」
それから彼女は考えるように眉間に皺を寄せた。
「少し、確かめたいことがあるの。まだ全然あやふやな推論だから、確信に至ったら、貴女に伝えるわ。あ、それからアリシア嬢についても探ってみる」
「いいの?」
迷惑ではないだろうかと恐る恐る問いかける。
「当たり前よ! こんなに楽しくてわくわくすることってないわ! 研究者魂に火が付くわ」
目を輝かせてソフィーはそう言った後、うんうんと、一人で、何度も頷いていた。
◇◆◇
それからも、医者や魔術師が順番にルクレティアを検査したが、誰もがソフィーほどの見解を持たず、問題ないと言うだけだった。ようやく診察が終わり、ほっと息をつけた頃、オーウェンが部屋にやってきた。
ずっと寝間着姿だったルクレティアは慌ててケープの一つを羽織ろうとするが、オーウェンは優しくそれを制する。
「そのままでいい」
頬に軽く口付けをすると、オーウェンはルクレティアの手を引き、そのまま長椅子へといざなう。
自分の膝の上に、ルクレティアを乗せる。背後から抱きしめられ、ルクレティアは顔が赤くなるのを感じた。
耳元で、オーウェンは囁く。
「君に何事もなくて良かった。とても心配したんだ」
ということは、ソフィーはまだ、オーウェンに記憶のことを報告していないようだ。
「リーヴァイも君の様子を気にかけていたが、君の昼間の様子から、側にいさせない方がいいと思ったんだ。良かったかな?」
なんと答えていいのか分からず、首だけ縦に振っておいた。リーヴァイを恐れているのは、記憶があるからだ。だがその記憶は偽物なのかもしれない。それでも彼が、恐ろしいのは確かだった。
(それに――オーウェン様に、言わなくちゃ)
腹に彼の熱い手を感じながら、顔だけ向け、ルクレティアは言った。
「オーウェン様の優しさには、いつもとても感謝していますわ。けれどもし、この先、貴方にわたしの他に愛する方が現れたら、わたしに遠慮などしないでくださいね。いつでもおっしゃってください」
記憶がもし壊され植え付けられているというのなら、アリシアとオーウェンの恋仲もまた偽りのものということになるのかもしれないが、それでも言わなくてはならないと思った。聞いたオーウェンはほんの僅かに眉を上げ、それから小さく笑った。
「そんなことあり得ない。私が愛しているのは、可愛いルクレティア、君だけだ」
そう言って彼は、蕩けるような口付けをした。
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