~赤き龍が町娘に恋をした~

ヒムネ

文字の大きさ
10 / 20

悪いのは······

しおりを挟む
「ぐすっ、ぐすっ」


「落ち着いたかいロマーヌ」


「お母、さん、ぐすっ、わたし、どうしたら」


 気持ちを落ち着かせるが、襲われた町を思うとまた涙が溢れる。屋根の上でそれを繰り返していた。


「ロマーヌちゃんのせいじゃないよ」


 ブレットおばあちゃんが言うと皆で慰めるが止まらず、後悔するロマーヌを見ていたフィンが、


「ロマーヌさんっ、自責の念に駆られないで!」


「ちょっとフィン君」


 彼の強い口調に娘を心配するお母さん。


 でも、


「あなたは悪くない、悪いのはあの青い龍の方なんだ」


「······でも、わたしが、ううっ」


「あなたが悪いなら、なぜあっちの赤い龍が青い龍と戦うんですか······なぜあんなに必死にあなたをを守るんですか、ロマーヌさんっ!」


 上を見上げれば、上空で太陽に照らされる2匹の龍が激突している。


 すると、


「え、雨?」


 快晴なのに降ってきたそれは、ブルー·ドラゴンの吐き出すウォーター·ブレスをレッド·ドラゴンが尻尾で払った事による雨粒だったのだ。


「······元気を出してくださいロマーヌさん、そして、いつもの笑顔の素敵なあなたに戻って来てください。お願いしますロマーヌさん」


 フィンもロマーヌを好いている。


 だからこそ彼女に元気を取り戻してほしいという想いを込めて言葉にすると周りの人も自分を励ましてくれて、



「ぐすっ······ありがとう皆、フィン。あたし、もうめげない」



「ピィ」


 ブルー·バードも左肩に乗り涙を手で拭い彼女はフィンや周りの人の言葉、そして今も必死に戦っている赤い龍、皆に励まされ笑顔を取り戻す。


 その事に周りは安堵し、ロマーヌは空の上で戦うレッド·ドラゴンの無事を強く祈り続ける。


「死なないで、レッド·ドラゴンさん」



「――どうしたレッド、なぜ避けん?」


「フンッ、貴様のブレスなど避けるまでもないわ」


 彼は下のフローティアにこれ以上被害が及ばぬように避けずに尻尾で払っていた。


「避けぬ理由はわかっている。だが容赦はせんぞ!」


 互いにブレス吐き、または高速で飛行しながら龍の爪が当たり合い、肩に翼にそして顔にかすり傷を負っていく。


「やるなブルー、貴様と戦うのは初めてだな」


「今さら許されようなどと思うなよレッドッ!」


 普段は水のように大人しいブルー·ドラゴンが熱くなり、燃えているだろうと思われるレッド·ドラゴンは冷静なため『死なないでレッド·ドラゴンさん』脳に語りかけるロマーヌの声を見逃さなかった。



「元気を取り戻したようだなロマーヌ」



「あっ、レッド·ドラゴンさん!」


 彼は精神感応テレパシーで彼女に言葉を送る。


「ゆっくりと話をしたいが今はそれどころではない、なので要件だけ聞いてくれ――」


 ロマーヌに内容を送り、


「――はい、わかりました」


「頼んだぞ」


 戦う赤い龍を見守っていた彼女は振り向いて皆に、


「皆さん町の外へ避難しましょう」


「ロマーヌさん?」


 それは町民を守りながらの戦いは不利なこと、さらには追い込まれた青い龍が皆に仕掛ないとも限らないとレッド·ドラゴンは危惧していることを話す。


「分かりましたロマーヌさん、僕は父の方へ行ってこの事を伝えます」


 お母さんやブレットおばあちゃんの周りの人も理解する。


 急いで向かおうとしたが、すぐ足を止めるフィンは、


「あ、そうだ、ロマーヌさん」


「はい、なんですか?」


「あのー~パジャマの脚の部分が濡れてるので着替えた方がいいと思います」


 自分がパジャマ姿で髪の毛も結んでいない事を忘れていて頬を赤くしたロマーヌ、


「わ、わかってます、は、早く行ってください!」


 彼は笑顔で屋根からロマーヌの家の窓へと降りて行く。


 彼女もお母さんと、特にお年寄りのブレットおばあちゃんを先に町から避難させるために行動に移す。


 勿論、ちゃんと着替えて······。


 ロマーヌ達が避難をしている中、2匹の龍による戦いはさらに激しさを増していく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

何もしない公爵夫人ですが、なぜか屋敷がうまく回っています

鷹 綾
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスの妻となったフィレ・バーナード。 けれど彼女は、屋敷を仕切ることも、改革を行うことも、声高に意見を述べることもしなかった。 指示を出さない。 判断を奪わない。 必要以上に関わらない。 「何もしない夫人」として、ただ静かにそこにいるだけ。 それなのに―― いつの間にか屋敷は落ち着き、 使用人たちは迷わなくなり、 人は出入りし、戻り、また進んでいくようになる。 誰かに依存しない。 誰かを支配しない。 それでも確かに“安心できる場所”は、彼女の周りに残っていた。 必要とされなくてもいい。 役に立たなくてもいい。 それでも、ここにいていい。 これは、 「何もしない」ことで壊れなかった関係と、 「奪わない」ことで続いていった日常を描く、 静かでやさしい結婚生活の物語。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

愛しの第一王子殿下

みつまめ つぼみ
恋愛
 公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。  そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。  クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。  そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。

処理中です...