~マザー·ガーディアン~

ヒムネ

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     父との再開

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 月曜日、今日から仕事······一人で。今日は生月先生が未来を看てくれる。
 妊娠も十週目と代わりに言われた······未来の喜んでいる姿がみえる気がした。


 そしてその日、ついに、


「うっ······うっ、未来ぃぃー」


 オレは自宅で膝を落とし、泣き崩れる。


 自分の気持ちの奥にある『未来は二度と目を覚まさない』その言葉が毎日頭をよぎり、とうとう耐えられなくなった······。

 昨夜の影響が次の日に、
「徹君!」
「はい?」
「······大丈夫?」
「大丈夫ですよ」
 目に熊が出来て、やつれている。
「今日は止めた方が」
「いえ、お構い無く、未来の側にいる方が楽ですから」
「······分かったわ、お願いね」
「はい······」

 ――生月先生は、まだ帰らずに社長室に行っていた。
「誰だ? 生月か」
「霞」
「何だ」
「あなたが今何を考えてるか分からないけど······このままじゃ徹君も危ないわよ」
「徹が、くっ······」

 目覚めない未来を看ていた時、LINEが鳴って、
「徹、明日の日本時間の午前十時位に冱寺市ごじしの空港に着く」

「父さん······そうだ、父さんならっ!」
 すぐにLINEで、
「明日冱寺市に迎えに行くよ」
 そう送り、眠っている未来をみて、
「絶対に助けるからな――」

 十月一日、未来は目覚めず朝に生月先生に変わったあと、
「母さん、今日は仕事、無理かも知れない」
「社長室に来て言うことか」
「じゃあっ」
「おい······何のつもりだ」

 冱寺市の空港には、マザー·クリエイトから四、五十分掛かる。
 オレは未来を救いたい一心で午前八時にもかかわらずスカイカーで空港に向かう······。

「八時五十分か」
 案の定、早めに着き空港で待つことに······。

 十時五分になった時、

「父さんっ!」

「徹っ!」

 道長 創造、オレの父さんだ。

「父さん――何か少しやつれたね。体も痩せた感じだ」
「ハハッ、子供達を育てるのは、大変だからな······お前も人の事言えない顔してるな、そんなにまずい状況なのか?」
「まずいどころじゃないんだ。早くスカイカーに乗って訳は中で話すから」
「ああ」
 スカイカーに荷物を載せこれまでの事を説明した······。

「ではその彼女は今も」
「もう六日間は眠りっぱなしなんだ、くそっ」
「だから徹はそんなに焦っているのか······」
「ねえ父さん、何か、何か未来を救う方法ないか?」
「······今は何とも言えん」
「そんな」
「だが霞に訊いてみなければ······聞いてはくれないとは思うがな」
 そう簡単な事じゃない。母さんに父さんを会わせたら、どうなるか分からない。
 だけど今はそんな事も気にしてはいられないんだ。未来を助ける事が今のオレの全てだから······。

 会社に着き入り口で、
「実際に観るとデカイ会社だな」
「驚いてないで行くよ父さん」
 オフィスからエレベーター、
「ここか」
「······さあ行こう父さん――母さん、入るよ」
 社長室へ――。

 そこには資料を見ていた母さんが、

「徹······あんたは」

「久し、ぶりだな、霞」
 一瞬だけ動揺した母さんだったがすぐ鋭い目付きになり、
「何のつもりだ徹、そんな奴を連れてきて」
「霞」

「あんたは黙ってろっ······お前、結婚を許してほしいからなんて言うんじゃないだろうな、徹っ!」
 母さんはオレに強く睨んでくる。
 だけど、
「最初はそのつもりだった」
「だった?」

「だけど今はそれどころじゃないっ、未来を救う方が先だっ!」

「救う? どうやって救うって言うんだっ」
「·····母さんも気付いてるんじゃないか、未来は眠って六日目、もう普通の病気じゃないって」

「······さあ、知らないね」

「霞、徹の話を」
「あんた、よくあたしの前にツラ出せたね」
「霞の前にいる資格がないのは分かってる。徹に呼ばれなければ私がここに姿を現す事はなかった」
「クズが、だったらとっとと帰れ、目障りだっ」
 そう言って社長室を出た。
「待ってくれ、母さん」
「徹、お前は奴といつからだ」
 背のまま訊き、
「······中学卒業した時に父さんとLINEを交換したんだ」
「ちっ、それでか」
 父さんが来た。
「フンッ、あんたが徹の卒業式に来ていたとはな」
「徹に、会いたかったんだ」
「今さら父親ずらかっ!」
「母さんっ!」
 エレベーターに乗って行ってしまう。

「母さん······父さん、何で母さんはあんなに」

「······訳を話そう――」
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