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家での女の子と火事
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「――これがクリスロッサ城の城下町」
「ネモネアは来たことないんですか?」
「うん、魔王の配下のときもずっと魔王城の中だったから」
今あたいはアヴエロと一緒に女神を祀るというクリスロッサの城下町に買い物に来ている。お店に並ぶたくさんのパンっていう美味しそうなやつが並んでいて食べてみたい。
「美味しそうー!」
「そこの魔族お嬢ちゃん、これは苺をジャムにしてね」
「ふんふん」
「ネモネア、ダメですよお店のものを食べちゃ」
「ガブッ」
食べちゃった。
「――はぁっ、まったく~、言ったそばから」
「ごめんゴメンつい美味そうでさ、ハハッ……それにしても魔族のあたいに皆ビビらないんだ」
「この町も魔族は普通にいます。魔族と人の混血児なども当たり前なんです」
「へ~……ふつうなんだ」
だからアヴエロと一緒に歩いても別に問題ないわけかとパンを食わえるあたい。
「ネモネア」
「ブッ、ゲホッゲホッ」
「パンを口にくわえながら歩いているから喉に詰まらせるんです。だらしないですよ」
「まあいいじゃん、ね?」
「私はそういうのは好きじゃありません」
「……わかった、やめる」
せっかく一緒に歩いてるのに嫌われるくらいならやめるしかないし。パンを口に入れ反省しながら帰っていると城下町の入口近を通ると人が。
「あの、家の娘を見ませんでしたか」
そう話す貴婦人、話を聞くと娘が昨日から帰ってこないらしい。置き手紙には『探さないでください』と書いてあったそうだ。残念ながら見ていないと帰ったけど、意外にもあたい達はすぐその子と遭遇することに……。
「――ただいま」
「どうかお願いしますっ、ここにおいてくださいっ!」
知らない声がしてなんだと思えばシスター・カルタにお願いしているあたいより少し若い感じの長髪女の子。
「ああ、アヴエロ、ネモネアおかえりなさい。今ちょっと……あとアヴエロ、あなたにもお客さま」
「わかりました、伺います」
アヴエロはお客さんに会にいき、あたいは小麦粉などの荷物を台所に置く。次いでにとカルタ達の話も耳で聞いてみる事に。
「お名前は……」
「ジュリ・アマランスです」
「どうして、この教会に?」
「町や村で噂を聞いたんです『身寄りのない子どもたちを養うシスターがいる』と」
「そう……あなたお年はいくつ? 大人にはみえないけど」
「……15です」
「あら~、なら親が心配してるでしょ?」
「だいじょうぶです……書き置きしてきたから」
「書き置きって、もしかしてクリスロッサの城下町で探してた貴婦人の子?」
「わっ、魔族の人」
驚くジュリという女の子、魔族を間近で見たのは初めてそうだ。
「それより、本当なの?」
「……はい」
「いけないわよそんな、お母さんを心配させるなんて」
「お母さんはっ……お母さんはただ私を自分の家に閉じ込めておきたいだけなんです」
涙ぐみながら話をするジュリは魔物が徘徊するとして両親により幼い頃から町の外に出れず、クリスロッサから出たことがない。大きくなっても変らず、ついに魔王ルモールが倒されたのに『外には魔物がいるから、家にいなさい』と何時までも閉じ込められる事に嫌気が差し家を抜け出した。
「へ~、それでよくここまでこれたね、魔物に襲われたでしょ」
「はい、初めてで怖かったけど、あの……」
両の手で丸を作り小さく綺麗な火の玉。
「魔法が使えるようになったんです!」
「危機的状況で開花したんだ、あたいも低級魔法くらいなら使えるよ、ホラッ」
火や水や回復魔法を見せてあげた。
「あぁ~、すごいっ」
「でしょっ、他にも……」
「コホンッ」
「「あっ」」
「とにかく、お母さんに言わないわけには……」
「たいへんだーっ!」
扉から青ざめた顔で開けてきたシクロ。
「どうしたシクロ」
「ネモネアの姉ちゃん、大変なんだ」
「だから落ち着ついて」
「森が火事になっててブリジットが!」
ブリジットという名前を聞くと近くの教会の森に飛び出していったあたい。なぜそんなことに、また森の奥に行ったのだろうか……。
子どもたちが必死にあたいに助けを求める。あたいの目の前には炎の森、無事な子どもの中にやはりブリジットの姿はない。どうやら剛炎の中のようだ。
「ブリジット……しかたないっ」
赤と橙がバチバチと重なる炎の中へと入った。頭を両腕で庇うようにして、手から水魔法を掛けながらブリジットを探す。
「ブリジットっ、ブリジットォォ~ッ!」
あたいの下級水魔法なんかじゃ到底消せない炎の牢、なら叫び続けるしかない。
「……ア……姉ちゃん……」
「ブリジットの声!」
かすかな声の方をただひたすらに走った。木は脆くあたいの身体に時に火とともに落ちてくるがんなことはどうだっていい。
「ブリジットッ!」
「ネモネア、ひが、ひがきえないの!」
「そんなことはいいっ、ほらっ」
ふらつくブリジットを抱いて抜け出そうとも炎の勢いは更に強くなっていく。
「くそっ……いくしかないっ!」
たとえ死んでもブリジットだけは教会にたどり着かせるんだと死を覚悟したその時、
「コンサントレイト……アヴェルスッ!」
「うわぁっ!」
突然の豪雨に見舞われ驚いているとまたたく間に炎は火へ、そして焦げた木々とあたいとブリジットだけが姿を現した。
「ブリジットッ、ネモネアッ!」
「アヴエロ……ブリジットはだいじょうぶ」
「よかったっ、2人とも無事で、本当によかった」
「怖くて気絶してる……助けてくれてありがとう、アヴエロ」
「いや、僕じゃないんだ」
「えっ、じゃあ」
アヴエロの隣に現れたのは、
「あ、あんたは……」
かつて勇者とともに魔王ルモールに挑み倒した仲間。
「……回復師 スオーロ」
「ネモネアは来たことないんですか?」
「うん、魔王の配下のときもずっと魔王城の中だったから」
今あたいはアヴエロと一緒に女神を祀るというクリスロッサの城下町に買い物に来ている。お店に並ぶたくさんのパンっていう美味しそうなやつが並んでいて食べてみたい。
「美味しそうー!」
「そこの魔族お嬢ちゃん、これは苺をジャムにしてね」
「ふんふん」
「ネモネア、ダメですよお店のものを食べちゃ」
「ガブッ」
食べちゃった。
「――はぁっ、まったく~、言ったそばから」
「ごめんゴメンつい美味そうでさ、ハハッ……それにしても魔族のあたいに皆ビビらないんだ」
「この町も魔族は普通にいます。魔族と人の混血児なども当たり前なんです」
「へ~……ふつうなんだ」
だからアヴエロと一緒に歩いても別に問題ないわけかとパンを食わえるあたい。
「ネモネア」
「ブッ、ゲホッゲホッ」
「パンを口にくわえながら歩いているから喉に詰まらせるんです。だらしないですよ」
「まあいいじゃん、ね?」
「私はそういうのは好きじゃありません」
「……わかった、やめる」
せっかく一緒に歩いてるのに嫌われるくらいならやめるしかないし。パンを口に入れ反省しながら帰っていると城下町の入口近を通ると人が。
「あの、家の娘を見ませんでしたか」
そう話す貴婦人、話を聞くと娘が昨日から帰ってこないらしい。置き手紙には『探さないでください』と書いてあったそうだ。残念ながら見ていないと帰ったけど、意外にもあたい達はすぐその子と遭遇することに……。
「――ただいま」
「どうかお願いしますっ、ここにおいてくださいっ!」
知らない声がしてなんだと思えばシスター・カルタにお願いしているあたいより少し若い感じの長髪女の子。
「ああ、アヴエロ、ネモネアおかえりなさい。今ちょっと……あとアヴエロ、あなたにもお客さま」
「わかりました、伺います」
アヴエロはお客さんに会にいき、あたいは小麦粉などの荷物を台所に置く。次いでにとカルタ達の話も耳で聞いてみる事に。
「お名前は……」
「ジュリ・アマランスです」
「どうして、この教会に?」
「町や村で噂を聞いたんです『身寄りのない子どもたちを養うシスターがいる』と」
「そう……あなたお年はいくつ? 大人にはみえないけど」
「……15です」
「あら~、なら親が心配してるでしょ?」
「だいじょうぶです……書き置きしてきたから」
「書き置きって、もしかしてクリスロッサの城下町で探してた貴婦人の子?」
「わっ、魔族の人」
驚くジュリという女の子、魔族を間近で見たのは初めてそうだ。
「それより、本当なの?」
「……はい」
「いけないわよそんな、お母さんを心配させるなんて」
「お母さんはっ……お母さんはただ私を自分の家に閉じ込めておきたいだけなんです」
涙ぐみながら話をするジュリは魔物が徘徊するとして両親により幼い頃から町の外に出れず、クリスロッサから出たことがない。大きくなっても変らず、ついに魔王ルモールが倒されたのに『外には魔物がいるから、家にいなさい』と何時までも閉じ込められる事に嫌気が差し家を抜け出した。
「へ~、それでよくここまでこれたね、魔物に襲われたでしょ」
「はい、初めてで怖かったけど、あの……」
両の手で丸を作り小さく綺麗な火の玉。
「魔法が使えるようになったんです!」
「危機的状況で開花したんだ、あたいも低級魔法くらいなら使えるよ、ホラッ」
火や水や回復魔法を見せてあげた。
「あぁ~、すごいっ」
「でしょっ、他にも……」
「コホンッ」
「「あっ」」
「とにかく、お母さんに言わないわけには……」
「たいへんだーっ!」
扉から青ざめた顔で開けてきたシクロ。
「どうしたシクロ」
「ネモネアの姉ちゃん、大変なんだ」
「だから落ち着ついて」
「森が火事になっててブリジットが!」
ブリジットという名前を聞くと近くの教会の森に飛び出していったあたい。なぜそんなことに、また森の奥に行ったのだろうか……。
子どもたちが必死にあたいに助けを求める。あたいの目の前には炎の森、無事な子どもの中にやはりブリジットの姿はない。どうやら剛炎の中のようだ。
「ブリジット……しかたないっ」
赤と橙がバチバチと重なる炎の中へと入った。頭を両腕で庇うようにして、手から水魔法を掛けながらブリジットを探す。
「ブリジットっ、ブリジットォォ~ッ!」
あたいの下級水魔法なんかじゃ到底消せない炎の牢、なら叫び続けるしかない。
「……ア……姉ちゃん……」
「ブリジットの声!」
かすかな声の方をただひたすらに走った。木は脆くあたいの身体に時に火とともに落ちてくるがんなことはどうだっていい。
「ブリジットッ!」
「ネモネア、ひが、ひがきえないの!」
「そんなことはいいっ、ほらっ」
ふらつくブリジットを抱いて抜け出そうとも炎の勢いは更に強くなっていく。
「くそっ……いくしかないっ!」
たとえ死んでもブリジットだけは教会にたどり着かせるんだと死を覚悟したその時、
「コンサントレイト……アヴェルスッ!」
「うわぁっ!」
突然の豪雨に見舞われ驚いているとまたたく間に炎は火へ、そして焦げた木々とあたいとブリジットだけが姿を現した。
「ブリジットッ、ネモネアッ!」
「アヴエロ……ブリジットはだいじょうぶ」
「よかったっ、2人とも無事で、本当によかった」
「怖くて気絶してる……助けてくれてありがとう、アヴエロ」
「いや、僕じゃないんだ」
「えっ、じゃあ」
アヴエロの隣に現れたのは、
「あ、あんたは……」
かつて勇者とともに魔王ルモールに挑み倒した仲間。
「……回復師 スオーロ」
応援ありがとうございます!
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