10 / 66
信用
しおりを挟む
「――とりあえずこれでよしっと」
微熱をもっていたブリジットをシスター・カルタのベッドで寝せ額の汗をタオルで拭いく。
「がんばったな、ブリジット……」
一緒にいた友だちの話では教会の森を探索して遊んでいたら、魔物カマキリが現れて皆を逃がすために魔法で戦ったみたい。
「紅い眼か」
「スオーロ、紅い眼って」
「様々なものに紅の力を与えると言われ、火ならば炎に強化することもできる」
「じゃあブリジットは」
「おそらく友を守るため火の魔法を放つはずが、紅い眼によってワンランク上の魔法に進化してしまったのだろう……」
「そうか、怖かっただろブリジット……なんか色々ありがとうスオーロ」
瞳の色の違いにそんな効果もあったなんて初めて聞いてお礼を言ったつもりが、あたいと目が合うと部屋を出ていった。
「ちょっと……」
「――残念だけど今回は……」
「そ、そんな」
「やっぱりお母さんに心配かけるのはいけないわ」
あの声はシスター・カルタ。それと顔が下を向いてガックリ肩を落としてるジュリ。
「アヴエロ、この子を家まで送ってくれないかしら」
「はい、わかりました」
女の子を1人で返すわけにはいかない。けど、あの子を見てるとせっかく家を飛び出してきたのにと可哀想にも見えてくる。
「その子なら私が送ろう」
「スオーロ、しかし……」
「私はクリスロッサの村に暮しているから散歩のようなものだ。お前はゆっくりしていろアヴエロ」
「ありがとう、では頼みますスオーロ」
「あっ、まってっ、あたいも付いていかせて」
「……なぜだ」
「それは……可哀想だし……気になるんだ」
「可哀想……」
「頼むスオーロ。あたいも付いていかせてくれ」
「……なんだかわからんが、すきに付いてくればいい」
なんとか許してもらった。けど、素っ気ない態度のスオーロはあたいを嫌ってると感じる。一度は敵同士だったから仕方ないんだけど、気にならないと言えば嘘になる……。
あたいらは教会を出てクリスロッサの村を目指した。遠回りしなければ日を跨ぐ必要はなく魔物が現れてもあたいとスオーロがいれば問題ない。
「――元気だしな、ジュリ」
「ネモネアさん……」
「またきっとチャンスはあるよ」
「チャンス、ですか?」
「ジュリがお母さんを説得すれば許してもらえるかも」
「無理です。お母さんは私をそばおいておきたいだけなんです。お母さんの人形なんです」
顔を上げた目は悲しいまま沈黙するジュリ。両親と居るっていうのは幸せとばかりと思ったけど一緒に暮らしていてもすれ違う子もいるんだな。
「でも、話してみたほうがいいと思う」
「そんなこと、言われましても……」
――木の家が並ぶ素朴な村、クリスロッサの村についた頃には夕方になっていた。ここまでくれば少しの休憩をしてもクリスロッサの城下町までは一時間もかからない。そんなベンチで休憩のとき、スオーロが右、ジュリが真ん中であたいは左に座る。
「……最初に会ったときとは違うなネモネア」
「スオーロ、あたいのことか?」
「ああ」
「……あんた達のおかげだよ」
「ずいぶんと楽しそうだ」
「うん、あの頃より全然楽しい」
「そうか、それは構わないが言っておく……私はアヴエロのように、お前を信用してはいない。もしかしてまだ何か企んでいるかも知れないしな……」
「そっ、そんなことはないっ!」
思わず立ち上がってスオーロの目を見ようとするも、あわせたくないのか閉じている。
「……どうだかな」
「企むって、ネモネアさんはそんな方じゃ……」
「はぁ~っ」
「だいじょうぶですかネモネアさん」
「ああごめん、あんたは自分のこと考えてなよジュリ。もうすぐお母さん家だろ」
あたいのせいで真ん中に挟まれたジュリにも嫌な思いをさせてしまった。
「ジュリ」
「は、はいスオーロさん」
「君はこのまま母の家に着いたらどうするつもりだ、元の箱入り娘に戻るのか?」
「わかりません……また家出ちゃうかも……」
下を向いてコッソリ言ったつもりだろうけどあたいに聞こえたまた出る宣言。気弱そうに見えて心んなかは頑固でなんか安心した。
「フッ、では休憩はこのくらいにして行くぞ」
――豪華な花瓶にキラキラ光る手すりで何か落ち着かない。住む世界がぜんぜん違う気がしてあたいはため息。でもそれよりも部屋ん中では怒号が。
「もうジュリッ、外は危ないって言ってるのになんでこっそりでたのよっ!」
「私はもう家の中に閉じ込められてるのは嫌なのっ、外に出たいっ!」
「外はあなたの思ってるような呑気な世界じゃないのよっ!」
「呑気って、それはお母さんの方でしょっ、いつもいつも豪華な服とキラキラした宝石して外に出てどっちが呑気よっ!」
「そ、それは~……」
「なんでそんな服装のお母さんが外出ていいのよ、お母さんのほうが危険よっ、町の外のことわかってないのはお母さんよっ、ハァ……ハァ……」
すごい迫力の2人……ジュリのお母さんも凄いけどジュリってこんなに言えたのか。それだけ外出したい気持ちが、ビリビリと伝わってくる。
「ただいま」
そんな言い争いの中ジュリの父親が帰ってきてまた波乱の予感……。
微熱をもっていたブリジットをシスター・カルタのベッドで寝せ額の汗をタオルで拭いく。
「がんばったな、ブリジット……」
一緒にいた友だちの話では教会の森を探索して遊んでいたら、魔物カマキリが現れて皆を逃がすために魔法で戦ったみたい。
「紅い眼か」
「スオーロ、紅い眼って」
「様々なものに紅の力を与えると言われ、火ならば炎に強化することもできる」
「じゃあブリジットは」
「おそらく友を守るため火の魔法を放つはずが、紅い眼によってワンランク上の魔法に進化してしまったのだろう……」
「そうか、怖かっただろブリジット……なんか色々ありがとうスオーロ」
瞳の色の違いにそんな効果もあったなんて初めて聞いてお礼を言ったつもりが、あたいと目が合うと部屋を出ていった。
「ちょっと……」
「――残念だけど今回は……」
「そ、そんな」
「やっぱりお母さんに心配かけるのはいけないわ」
あの声はシスター・カルタ。それと顔が下を向いてガックリ肩を落としてるジュリ。
「アヴエロ、この子を家まで送ってくれないかしら」
「はい、わかりました」
女の子を1人で返すわけにはいかない。けど、あの子を見てるとせっかく家を飛び出してきたのにと可哀想にも見えてくる。
「その子なら私が送ろう」
「スオーロ、しかし……」
「私はクリスロッサの村に暮しているから散歩のようなものだ。お前はゆっくりしていろアヴエロ」
「ありがとう、では頼みますスオーロ」
「あっ、まってっ、あたいも付いていかせて」
「……なぜだ」
「それは……可哀想だし……気になるんだ」
「可哀想……」
「頼むスオーロ。あたいも付いていかせてくれ」
「……なんだかわからんが、すきに付いてくればいい」
なんとか許してもらった。けど、素っ気ない態度のスオーロはあたいを嫌ってると感じる。一度は敵同士だったから仕方ないんだけど、気にならないと言えば嘘になる……。
あたいらは教会を出てクリスロッサの村を目指した。遠回りしなければ日を跨ぐ必要はなく魔物が現れてもあたいとスオーロがいれば問題ない。
「――元気だしな、ジュリ」
「ネモネアさん……」
「またきっとチャンスはあるよ」
「チャンス、ですか?」
「ジュリがお母さんを説得すれば許してもらえるかも」
「無理です。お母さんは私をそばおいておきたいだけなんです。お母さんの人形なんです」
顔を上げた目は悲しいまま沈黙するジュリ。両親と居るっていうのは幸せとばかりと思ったけど一緒に暮らしていてもすれ違う子もいるんだな。
「でも、話してみたほうがいいと思う」
「そんなこと、言われましても……」
――木の家が並ぶ素朴な村、クリスロッサの村についた頃には夕方になっていた。ここまでくれば少しの休憩をしてもクリスロッサの城下町までは一時間もかからない。そんなベンチで休憩のとき、スオーロが右、ジュリが真ん中であたいは左に座る。
「……最初に会ったときとは違うなネモネア」
「スオーロ、あたいのことか?」
「ああ」
「……あんた達のおかげだよ」
「ずいぶんと楽しそうだ」
「うん、あの頃より全然楽しい」
「そうか、それは構わないが言っておく……私はアヴエロのように、お前を信用してはいない。もしかしてまだ何か企んでいるかも知れないしな……」
「そっ、そんなことはないっ!」
思わず立ち上がってスオーロの目を見ようとするも、あわせたくないのか閉じている。
「……どうだかな」
「企むって、ネモネアさんはそんな方じゃ……」
「はぁ~っ」
「だいじょうぶですかネモネアさん」
「ああごめん、あんたは自分のこと考えてなよジュリ。もうすぐお母さん家だろ」
あたいのせいで真ん中に挟まれたジュリにも嫌な思いをさせてしまった。
「ジュリ」
「は、はいスオーロさん」
「君はこのまま母の家に着いたらどうするつもりだ、元の箱入り娘に戻るのか?」
「わかりません……また家出ちゃうかも……」
下を向いてコッソリ言ったつもりだろうけどあたいに聞こえたまた出る宣言。気弱そうに見えて心んなかは頑固でなんか安心した。
「フッ、では休憩はこのくらいにして行くぞ」
――豪華な花瓶にキラキラ光る手すりで何か落ち着かない。住む世界がぜんぜん違う気がしてあたいはため息。でもそれよりも部屋ん中では怒号が。
「もうジュリッ、外は危ないって言ってるのになんでこっそりでたのよっ!」
「私はもう家の中に閉じ込められてるのは嫌なのっ、外に出たいっ!」
「外はあなたの思ってるような呑気な世界じゃないのよっ!」
「呑気って、それはお母さんの方でしょっ、いつもいつも豪華な服とキラキラした宝石して外に出てどっちが呑気よっ!」
「そ、それは~……」
「なんでそんな服装のお母さんが外出ていいのよ、お母さんのほうが危険よっ、町の外のことわかってないのはお母さんよっ、ハァ……ハァ……」
すごい迫力の2人……ジュリのお母さんも凄いけどジュリってこんなに言えたのか。それだけ外出したい気持ちが、ビリビリと伝わってくる。
「ただいま」
そんな言い争いの中ジュリの父親が帰ってきてまた波乱の予感……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる