勇者に恋した魔王の配下

ヒムネ

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ボクが彼女を救いたい

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「――ここラナロースは城下に華やかな薔薇と魅力的で華やかな踊り子の男女が住む美しい町です」

「へー、あんた詳しいなエメール」

「旅の魔法剣士ですから」

 話してくれたとおり目を向けると所々に色味の強い赤や紫の薔薇。男はタキシード、女は踊り子の服装で楽しそう。あたいが着るなら薄くピンクなドレス、いや薄い緑も綺麗だなぁ、あとはアヴエロと踊るとか……。

「プリンセス?」

「はっ、いやいや、いまは情報だ、情報」

 どんな城下町でも図書館はあるはず、まずはエメールに指示して探すことに。


「――周れば見つかるだろ」

「ボクは、まってられないんだっ!」

 ガチャンッ、と大きなドアを開いたのは若い男。

「待ちなさいっ、スノーッ!」

 意見の食い違いとかで喧嘩か、しかも止める方はお母さんっぽい。

「危険をおかしてまで……見捨てればいいのよ……あんな――」


「はぁ、はぁ、待っていてロップ……」

「ようっ」

「あっ、魔族の女性さん、すいません急いで」

「スノー、さっきあんたの声が聞こえてその助けたいって人に興味があるから、手を貸すよ」

「……断ります」

「えっ」

 即座に断られて目が丸くなる。一見頼りなさそうな垂れた目尻をして弱そうになのに強がって、一応最低限の装備である剣や盾を持ってはいるけど。

「ちゃんと剣と盾使えるの……」

 話してる最中にスノーは走って豆粒に。

「おいっ、まったくっ、カッコつけて」

 スノーはラナロースの東側を走り途中の林を突っ切る。あたいが追いついて見てみると彼は魔獣ウルフに襲われていた。

「うわぁ、う、う、くそぉぉ!」

 魔獣ウルフはスノーのがむしゃらな剣をひたすら避けていく。あれは

「ガァオォォォーッ」
「うわぁぁぁロップゥゥゥッ!」

「ガオッ、ガオッ」

「あ、あれ?」

 あたいは後ろに周って魔獣ウルフの尻尾を掴み爪で、切る。それが弱点。

「あ、あなたは……さっきの」

「……今あたいが助けなきゃ殺されてた。それでも1人でそのロップっていう娘を救えると思う?」

「それは……」

「さらに言うと、魔獣ウルフはあんたの顔ごと食い千切ろうとしてた」

「くっ、食いちぎる、って……」

「これが魔獣ってわかっただろ、危険だからあたいが付いていく」

「あ、あのっ、お名前は」

「ネモネア」

「すいませんネモネアさん……そうだ、お願いがあります」

「お願い?」

 あたいがスノーにお願いされている頃、すっかり忘れていた、

「あれー、ネモネア・プリンセスは一体どこに……」

 エメールの事を……。


「――魔獣キャットは火や氷でも丸く出して放った魔法を避けることはない!」

「はいっ!」

 スノーの思いつきとは大切な彼女を護るため魔獣と戦って少しで経験すること。そこで魔物、魔獣のベテランのあたいが先生みたいにアドバイスするってわけ。もちろんヤバくなれば助けるけど。

「魔法、魔法……」

「危機的な状況なら魔法は使えるようになるはずだ、自分を信じてっ」

「うわぁっ、サンダー・ボールッ!」

「ニャジャニャジャァァァッ、」

「いいぞっ!」

「やぁあああーっ!」

 痺れてる空きにスノーの剣が魔獣キャットを横一閃。

「よくやったスノーッ!」

「は、はいっ……まっててねロップッ」

 大切な人を救おうとする思いがここまで人を強く逞しくするんだ。ここに希望ってやつを感じずにはいられない。でも今のあたいには懐かしくもあり、少し寂しく感じちゃった。

「よしっ、その調子スノー」

「ぜぇ、ぜぇ、はいっ!」

 疲れていても引くのではなく前に出るスノーを徹底的に指示して応援した。スノーは戦いの中でも徐々に魔獣の弱点を聞くのにも慣れて進んでいった。
 そして先の崖にロップが魔獣でも魔物でもなく、謎の魔族の女に捕まっていたんだ。

「スノーッ!」
「ロップーッ!」

「へ~、ほんとに来たんだ。この魔族の女のために」

 スノーの彼女ロップは赤いドレスを着てあたいと同じ。だからかな、スノーの母親が魔族と言ったとき興味がわいた。

「……あんたは何なんだ、どうしてスノーとロップにこんなことをするっ」

 崖の下は海、変な挑発をしたらロップを投げ飛ばすかもしれない。ここは慎重に。

「あたしに、今の場所から離れてって言うからよ……それと、魔族を好きになるなんてバカな人間がいるから誘拐したの」

「バカなこと?」

「だって魔族が人間と一緒だなんて思われるのは嫌じゃな~い、あんたも分かるでしょっ?」

「……わからないね」

「あらぁあ~?」

「あたいは幼い頃、魔族の両親に捨てられた。そんなあたいから見たら、魔族だろうと人間だろうと悪い事する奴は一緒さ」

「両親に捨てられた……」

「あんたも悪い人間と変わらないんだよ、ロップを返せっ!」

「ネモネアさん、どうすれば?」

「ネモネア?」

 あたいの名前を聞いた途端に目付きがあきらかに変わった……。
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