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教会とラングネス
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「――ふぅ、ここは……海岸ですか?」
魔獣を退治しながらは一苦労するからかエメールは疲れてため息を吐く。
「失礼ですが、何もない、ですね」
寄り道したのはかつてのシスター・カルタ教会であたいの家。いまは崩壊してボロボロ。
「こんなに被害が大きいなんて、くそっ、魔物どもめ」
悔しそうなモント。ここから観る海はちょっと前まで太陽の光が身体を潤すような綺麗な海だった。今では雲で空は覆われてグレーな現実しか見えない場所に変わってしまった。
「……この前の奴、クレマとかいう女魔族は魔王の配下と言っていたが……魔王はやはり生きていたのか?」
「わからない、でも魔王ルモールと近い力は感じた」
「それはそれは物騒ですね。あの勇者アヴエロでも倒せなかったと?」
「いや、魔王ルモールはたしかにアヴエロが倒したんだ、間違いなく……」
「ここに住んでいたシスターたちはどうしたんだ?」
「カルタたちならクリスロッサの城下町に避難してる」
魔獣共がこの世界に増えた時に気がついたシスター・カルタやジュリや子供たちはみんな城下町に避難した。ここにはその皆で耕した畑があったんだ。少しだけどあたいも手伝って。シスター・カルタが暖かい春や夏はもっと大変だよって教えてくれて、ネモネア寝坊しちゃうよって子供たちにからかわれたっけか。
「くそ……」
「ネモネア・プリンセス」
「はやく行こうラングネスに。ここで悔やんでも始まらないからなネモネア」
あたいは畑の土をグッと握った。そして自分自身のやるべきことを再度確認して崩壊したシスター・カルタ教会を出た……。
ラングネスの城下町はクリスロッサ村から北へと進み、途中で北東に進んだ場所。襲ってくる魔獣は逃げるのは困難で仕方なく倒しながら道をいくとまる一日かかってしまった。
「これからは城下に行くたびに戦闘ですか~」
「弱音を吐くなエメール……それよりネモネア、ほんとに魔獣のことに詳しいな」
「倒すために覚えたからね……ここがラングネス」
周りは城下町だけど一番違うのは、奥の方に大きな弓を引く構えをした女神フラデーアの石像があること。その更に奥には大きなお城が立っている。
「ここにも謎の光の壁があるんだ」
「魔獣が現れるとともに5つの城に光の壁も出現して、魔物や魔獣を寄せ付けない不思議な壁だよ」
「これが神の御業ですかね」
神の御業、ほんとうにそんな感じがする。モントやエメールはもちろん、あたいも光の壁には普通に通過出来るしやっぱり……。
「それと、ラングネスからシスター・カルタは始まったんだ」
前にちょっと話してくれたっけ、あのときは助かった。
「それで、どうする?」
「モント……う~ん、とりあえず図書館を探して……」
「そこのあなた、いまシスター・カルタって言わなかった?」
「ん、言ったけど……えっ!」
声をかけてきたのは修道服からも覗きみえる筋肉でマッチョの男……。
「ん、なによ?」
「あ、あの~、シスターですか?」
「そうよ、あたしはシスターのヴィゴーレよ、うふんっ」
「シスター? たしか男ならブラザーでは」
「そうなのモント」
「モント・プリンセスの言うとおりですネモネア・プリンセス。シスターとは女子修道院における修道女の事で、男性はブラザーと呼ばれるのが普通ですが」
「ちょっとっ、あたしは身体は男だけど心は乙女のシスター・ヴィゴーレよ!」
ちょっと沈黙したけど本人がそういうんだから別に言うことはない。
「あのシスター・ヴィゴーレさん、カルタのこと知ってるの?」
「ええ、むかし小さい時に一緒にいろんな事をしたものよ……」
掃除や洗濯、料理も教えてもらったり、一緒に隣で並んでお祈りしたりとヴィゴーレはお姉さんのようであり時には母のようなカルタの話を延々と続ける。
「カルタってすごいね……なんか完璧って感じで」
「いいんや、そうでもないのよ」
「えっ、そうなんだ、知りたいなぁ」
「常に真面目なんだけど、時折いたずら無茶苦茶するの、お腹空いたからって木に登って果物取るとか、興味本位で魔物に近づいて襲われたりとか」
「うっそーっ、とてもあのシスター・カルタとは思えない!」
「そんなことをして怒られたりもしてたけど、あたしはそんな優しくてちょっぴりお茶目なシスター・カルタが大好きだったわ」
ヴィゴーレの嬉しそうな笑顔からカルタへの想いが伝わってくるのを見て、あたいも嬉しくなってくる。
「おいネモネア、本来の目的を思い出せ」
「あ、ゴメンごめんモント……あのさヴィゴーレさん」
「それでね……あ、ごめんなさいっ、あたしったらカルタの事を聞いて嬉しくて……それで、何かしら?」
「図書館ってどこかな?」
「図書館……ああ、知らないのね。ここラングネスのお城は教会と図書館とが1つになってるの」
「え、そうなんだ~」
「そうなのか、あたしも知らなかった」
あたいとモントがエメールに向くと、両手を広げ首を振るエメールも知らなかったみたい。そんなあたいらに笑顔で案内してくれるヴィゴーレ。
「図書館はお城の地下にあるのよ、だから知らなくて当然よ」
「地下、それであたしも知らないのか」
「ところで何か探しもの?」
「うん、魔王と女神フラデーアとかブラック・オーブについて、かな」
「ブラック・オーブ……」
その言葉を聞いてヴィゴーレの顔が歪む……。
魔獣を退治しながらは一苦労するからかエメールは疲れてため息を吐く。
「失礼ですが、何もない、ですね」
寄り道したのはかつてのシスター・カルタ教会であたいの家。いまは崩壊してボロボロ。
「こんなに被害が大きいなんて、くそっ、魔物どもめ」
悔しそうなモント。ここから観る海はちょっと前まで太陽の光が身体を潤すような綺麗な海だった。今では雲で空は覆われてグレーな現実しか見えない場所に変わってしまった。
「……この前の奴、クレマとかいう女魔族は魔王の配下と言っていたが……魔王はやはり生きていたのか?」
「わからない、でも魔王ルモールと近い力は感じた」
「それはそれは物騒ですね。あの勇者アヴエロでも倒せなかったと?」
「いや、魔王ルモールはたしかにアヴエロが倒したんだ、間違いなく……」
「ここに住んでいたシスターたちはどうしたんだ?」
「カルタたちならクリスロッサの城下町に避難してる」
魔獣共がこの世界に増えた時に気がついたシスター・カルタやジュリや子供たちはみんな城下町に避難した。ここにはその皆で耕した畑があったんだ。少しだけどあたいも手伝って。シスター・カルタが暖かい春や夏はもっと大変だよって教えてくれて、ネモネア寝坊しちゃうよって子供たちにからかわれたっけか。
「くそ……」
「ネモネア・プリンセス」
「はやく行こうラングネスに。ここで悔やんでも始まらないからなネモネア」
あたいは畑の土をグッと握った。そして自分自身のやるべきことを再度確認して崩壊したシスター・カルタ教会を出た……。
ラングネスの城下町はクリスロッサ村から北へと進み、途中で北東に進んだ場所。襲ってくる魔獣は逃げるのは困難で仕方なく倒しながら道をいくとまる一日かかってしまった。
「これからは城下に行くたびに戦闘ですか~」
「弱音を吐くなエメール……それよりネモネア、ほんとに魔獣のことに詳しいな」
「倒すために覚えたからね……ここがラングネス」
周りは城下町だけど一番違うのは、奥の方に大きな弓を引く構えをした女神フラデーアの石像があること。その更に奥には大きなお城が立っている。
「ここにも謎の光の壁があるんだ」
「魔獣が現れるとともに5つの城に光の壁も出現して、魔物や魔獣を寄せ付けない不思議な壁だよ」
「これが神の御業ですかね」
神の御業、ほんとうにそんな感じがする。モントやエメールはもちろん、あたいも光の壁には普通に通過出来るしやっぱり……。
「それと、ラングネスからシスター・カルタは始まったんだ」
前にちょっと話してくれたっけ、あのときは助かった。
「それで、どうする?」
「モント……う~ん、とりあえず図書館を探して……」
「そこのあなた、いまシスター・カルタって言わなかった?」
「ん、言ったけど……えっ!」
声をかけてきたのは修道服からも覗きみえる筋肉でマッチョの男……。
「ん、なによ?」
「あ、あの~、シスターですか?」
「そうよ、あたしはシスターのヴィゴーレよ、うふんっ」
「シスター? たしか男ならブラザーでは」
「そうなのモント」
「モント・プリンセスの言うとおりですネモネア・プリンセス。シスターとは女子修道院における修道女の事で、男性はブラザーと呼ばれるのが普通ですが」
「ちょっとっ、あたしは身体は男だけど心は乙女のシスター・ヴィゴーレよ!」
ちょっと沈黙したけど本人がそういうんだから別に言うことはない。
「あのシスター・ヴィゴーレさん、カルタのこと知ってるの?」
「ええ、むかし小さい時に一緒にいろんな事をしたものよ……」
掃除や洗濯、料理も教えてもらったり、一緒に隣で並んでお祈りしたりとヴィゴーレはお姉さんのようであり時には母のようなカルタの話を延々と続ける。
「カルタってすごいね……なんか完璧って感じで」
「いいんや、そうでもないのよ」
「えっ、そうなんだ、知りたいなぁ」
「常に真面目なんだけど、時折いたずら無茶苦茶するの、お腹空いたからって木に登って果物取るとか、興味本位で魔物に近づいて襲われたりとか」
「うっそーっ、とてもあのシスター・カルタとは思えない!」
「そんなことをして怒られたりもしてたけど、あたしはそんな優しくてちょっぴりお茶目なシスター・カルタが大好きだったわ」
ヴィゴーレの嬉しそうな笑顔からカルタへの想いが伝わってくるのを見て、あたいも嬉しくなってくる。
「おいネモネア、本来の目的を思い出せ」
「あ、ゴメンごめんモント……あのさヴィゴーレさん」
「それでね……あ、ごめんなさいっ、あたしったらカルタの事を聞いて嬉しくて……それで、何かしら?」
「図書館ってどこかな?」
「図書館……ああ、知らないのね。ここラングネスのお城は教会と図書館とが1つになってるの」
「え、そうなんだ~」
「そうなのか、あたしも知らなかった」
あたいとモントがエメールに向くと、両手を広げ首を振るエメールも知らなかったみたい。そんなあたいらに笑顔で案内してくれるヴィゴーレ。
「図書館はお城の地下にあるのよ、だから知らなくて当然よ」
「地下、それであたしも知らないのか」
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