勇者に恋した魔王の配下

ヒムネ

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砂漠の盗賊

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「――うわぁぁああっ!」

「逃げろっ!」

 砂漠からキングロビウ城に向かっていたあたいらは、魔獣に襲われている人たちを見つけて助けることにした。

「あれは魔獣シーガル!」

「魔獣? 巨大な鳥だろ!」

「とにかく救いましょう」

 こんな砂漠に巨大な鳥の魔獣シーガルは変だと言うモントだが、空高く飛べる魔獣には餌が見えれば襲うため関係ない。
 服装はキングロビウの城下町の人だと直感して2人、3人と魔獣シーガルが飛び上がる隙に逃していくが1人は逃げ遅れてしまう。

「ひぃっ!」

「あぶないっ!」

 急降下してくちばしで刺し殺そうするも間一髪避けると、魔獣シーガルは再び上空へ。

「だいじょうぶかい?」

「はい……!」

 そう言って砂漠へ逃げていった。

「魔獣は逃げましたか」

「やっかいなやつだったな」

「いや、まだだ……まだこの上空にいる、奴はあたいらを標的に決めたみたい」

「ビアァァァッ!」

 鳴き声を出しながら魔獣シーガルはさっきのように急降下、あたいに狙いをつけたようだ。

「ネモネアッ!」

「だいじょうぶ」

「「うわっ!」」

 魔獣シーガルの翼で砂が舞う。
「ぷはっ、砂でよく狙えないのは困りますねネモネア・プリンセス……プリンセスはっ?」

「ネモネアッ、どこだっ」

「くうぅぅぅーっ!」

 あたいは魔獣シーガルの右翼に爪を指して一緒に上昇していた。

「ううーっ、もっと広く大きな雷を……くらえっ、ヴァイト・サンダーッ!」

「――もしかして魔獣に捕まったとか」

 そう思うとすぐ上から落ちてくる魔獣シーガルの姿が、そして砂の地面に顔が埋まる。

「やっぱり……翼を爪で刺した跡、魔獣が急降下してきたと同時に刺したのか……」

「ネモネア・プリンセスは」

「こっちだエメール」

 途中で魔獣シーガルから飛び離れてウイングの魔法であたいは地上に降りた。

「おおっ、ネモネア・プリンセス、まるで砂漠の天女のようだ」

「誰が天女だよ……まったく」

「ネモネア、すごいヤツだ……」

「どうしたのモント?」

「いいや、何でもない」


「――ではキングロビウ城はもうすぐです。行きましょう」

「うん」


「……ネモネア、荷物は?」

「え……ああぁぁぁぁぁぁーっ……ない、ない、ないないないないっ、ブラック・オーブが入ってた袋がっ、ないよぉぉぉっ!」

「そ、そんなネモネア・プリンセス」

「もぉぉぉ~っ、探すぞっ!」

 助けた気分に浸るのも一瞬、魔獣シーガルとの戦いに集中していて頭になかった。探すと言ってもここは砂漠、何処をどういうふうに探せばいいのか。

「ちょっとまってください、ネモネア・プリンセスが袋を手放す様子は見ませんでしたよ」

「それはたまたまで……でもネモネアが、あの大切なブラック・オーブの袋を手放すとは考え難いな」

「あたいはちゃんと持ってたはずなのに……」

 そういえばあの時、あたいが逃げ遅れた人を助けてると何か手こずってて……ありがとうって。

「ははーん、なるほど」

「エメール、なに? 教えて!」

「おそらく、あの三人はだったんですよ」

「なに、盗賊、か!」

「そんな……盗賊なんて……」

 魔獣シーガルに襲われていたのは偶然だろう。そこで助けに入ったあたいたちから逃げる次いでに盗もうとしたんだ。だからって、ブラック・オーブの謎を解くためにキングロビウに向かってたのにその盗賊達をどうやって探し出せば……。


 キングロビウ城の城下町、一年中砂漠に暮らしているだけあって肌を出すのではなくフードで隠している、それと家々もレンガで……とっ、じっくりと楽しみたいけど今はそれどころではないのでエメール、モントたちと手分けして盗賊の情報を探す。

「――ありがとうございました……キングロビウでは盗賊が色々と困らせる奴等なのか」

 キングロビウには、度々こまらせる盗賊たちが昔からいるらしい。それと、ここ最近では宝石を付けている者達が狙われるので注意喚起してるとか。

「ネモネアッ」

「モント、エメール」

「情報を得ましたよ、ネモネア・プリンセス」

「ホントか!」

「ああ、夜になると盗賊やつらは遺跡の近くのアジトに戻るらしいと住民たちから聞いた」

「……遺跡、か……」

 勇者を殺すためにあたいが魔王ルモールから試練と力をもらって、アヴエロたちを苦しめた場所。出来れば避けたい苦しく哀しい場所。

「どうしたネモネア?」

「……うんうん、はやく盗賊共を見つけよう!」


「――ウフフッ、いいねぇ~、お金に包まれて」

「姐さん、あねさんっ!」

「金は決して裏切らないからね~」

「あねさーん!」

「あぁあっ、なんだようるさいね、あたしはいま金に囲まれて幸せな気分だったのに、高い金でも盗めたのかい?」

「キングロビウの兵がいて簡単には盗めませんよ~……って、それよりもこの袋の中身を見てくださいっ、ゴールドじゃありませんが多分すごいやつですよっ!」

「ゴールドじゃないのか~、金になるのかね~どれどれ……ほーおぉぉぉーうっ、こいつは綺麗な黒い玉だね~」
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