勇者に恋した魔王の配下

ヒムネ

文字の大きさ
64 / 66

永遠に・・・。

しおりを挟む
「――あれはっ、ソレイル・プリンセス!」

「姉さんっ、なんで……」

「やはり……待ってくれ2人とも、クレマ、君もだ」

「え、どうして……」

 あたいらに気づかれず離れるように促したのはスオーロだった。

「ちょっとスオーロさん、どうして姉は……」

「薄々と感じてはいた、だがソレイルがここまでするとは思ってはなかったが」

「どういうことですかスオーロさん、訳を話して下さい」

「……魔界に閉じ込められたときから、ソレイルの様子が変わったのに気がついた。そしてホワイト・オーブを探す旅を続けていくうちに私は彼女がアヴエロに好意を持っていることに気づいた」

「あの、姉さんが……」

「おそらく、ネモネアの存在がソレイルの気持ちを大きく変えたのだ。ネモネアが入って、彼女のアヴエロに対する純粋な気持ちが、騎士ではなく女性ソレイルを目覚めさせたのだろう」

「それは、誰にも邪魔はできませんね」

「いや、おそらくは1人だけ……」

 立ち止まる3人、スオーロはあたいを騎士であるソレイルが殺すはずはないと言って傍観するように説得し見守ることにした……。


 夜中なのに剣と爪はが激しく響いている。

「ソレイルッ、あたいだってソレイルの様な女性に憧れてた。今でもそう、容姿端麗で強くて優しくていずれはこういう女性になりたいって……そんなソレイルでもここはゆずれない、ゆずるわけにはいかないのっ!」

「くうっ、強いっ……」

 ソレイルを攻撃してるなんて、やっぱり辛くないわけがない。

「はぁ、はぁ、手加減してたのね、ネモネア」

「……集中出来なかっただけよ」

 でも彼女の思いはわかる。そうやって自分の運命に逆らって生きてきたから。


 好きになるって突然よね、ソレイル。


 ソレイルと一緒に笑ったはずなのに戦って、辛いはずなのにアヴエロを思うと力が湧いてくる。それは彼女もきっとそうなんだ。

 それが引けない愛ならば、戦い続けよう、決着がつくまで永遠に……。


「フフッ、ネモネア」
「ソレイル」

「ネモネアァァァッ!」
「ソレイルゥゥゥッ!」


「いかんっ、ソレイルッ、ネモネアァッ!」

 お互いのゆずれない気持ちが頂点までのぼり、我を忘れたかのような渾身の一撃。スオーロは想いが強すぎて危険と感じた、ときだった。


「ハァ、ハァ、アヴエロ、あたいは」

「……アヴ、エロ」

「……なにをしているんですか、仲間同士ですよ」


 剣と爪の間に入ったのがアヴエロと分かったときあたいとソレイルは渾身の一撃を止める……。


「せっかく魔王を倒したのに、仲間同士で喧嘩なんて穏やかではありませんよソレイル」

「……ごめん」

「ネモネア」

「……ごめん、なさい」

 我に返った。と同時にいくら必死だったとはいえ、下手をすればソレイルを殺す勢いだった。それは彼女の気迫も同じで死んでいたかもしれないと、思う。

「ソレイル、ネモネア……」

 がっかりしたような、疲れたような顔のアヴエロ。もしかしたら仲間と戦った事で嫌われてしまったかもしれない。そう思うと辛いけど、どうしようもなかった。

「……違うだアヴエロ、ネモネアを襲ったのは私なんだ」

「ソレイル!」

「……本当なのかい、ソレイル」

「うん、ネモネアは私に巻き込まれただけ……だからネモネアを責めないでほしい」

 さっきまで戦ってたのにどうして庇うのソレイル。そんなの、卑怯よ。あたいに襲われたとか、ネモネアが悪いとか言ってくれたほうがまだ楽じゃないか。

「「ネモネア!」」


 あたいは居ても立ってもいられなく、その場から走り去る。


「ネモネアッ、どこに行くんだっ」
「まってっ、アヴエロ」

「ソレイル、ネモネアが……どうしたんですか……」

「あなたに言っておきたいことが、あるの……」


 崩壊した教会に必死に走って疲れた。本来ならここでアヴエロに……。
 夜ってけっこう寒くてあの魔王の城を思い出す。寄りかかってどうしてこうなってしまったのだろうと、ぼんやりと夜空に見上げる。


「ハァ、ハァ……なにやってんだろ」

 嫌われちゃったかな、でもソレイルから……いや言い訳かな、あたいがちゃんと説得すれば済んだかもしれない。いやソレイルのあの気持ちは本気だった……それともあたいに諦めろってことかな。それがソレイルの言うあたいの運命なのか……。

 考えれば考えるほど、辛くなる。

 ただ、あたいはあたいなりに必死に頑張ってきたつもりなのにそれじゃ駄目ってこと。

「ううっ……うっ」

 その場で膝をついて崩れ落ちる。この関係を壊したくなかったのに、なんかもう元に戻れないような気がして。ただ戦ってしまったことを後悔した……。


 しばらくすると足音が。

 でもどうしよう、彼だったら。

 嫌われちゃったら。

 あたいが悪いけど嫌われたくない。

 徐々に見えてきた、やっぱり彼。


「ハァ、ハァ、ネモネア……探したよ」

「……アヴ、エロ」

「……泣いて、たんですか」

「それは……ソレイルと戦っちゃって、彼女を傷つけて……」

「ネモネア」

「酷いことをして……ううっ……戦いたくなかった。ソレイルの事は大好きだし、辛かった」

「ネモネア、落ちついて」

「ぐすっ、ごめん、なさい」

「ソレイルの事は僕も悪い、謝るよ、ごめん」

「え、どういうこと……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...