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第5章 鼻から牛乳
しおりを挟む市議会のことが話題になっていた。
丸中市議が議会のたびに居眠りをしているというのだ。
ワイドショーが伝えるところによると
開始のあいさつが終わるとすぐに机に突っ伏して寝るという。
何回か、録画が紹介されたが毎回である。
しかも議会に参加していたが途中で眠くなって耐えきれずコクリ コクリ しているのとは
わけが違った。
議長のあいさつが終わると机に突っ伏すのである。
完全な確信犯であった。
「こんな 税金泥棒は許せません。」
「市民も投票率をあげてこんな人には当選させないようにしなければなりません」
などと至極当然のことをコメントしていた。
このワイドショーではこの後、市のホームページで公開されている議会を生放送するという。
中継が始まると全国中継されているとは少しも思っていない丸中議員はいつもどうり机に突っ伏した。
「これ、本当に生ですか?」
「考えられませんね。」
などワイドショーの中ではコメントが続いた。
やがて市民からの通報で市の職員が起しに行った。
その様子も生放送されていた。
朝倉はこの日、公休で昼過ぎに起きて洗濯をしながらこれをながら見ていた。
以前はあまり感じなかったがこの丸中議員には引っかかるものがあった。
バジリカートでは役人は民の為に全力で公務に当たっていた。
さぼっている者など一人もいなかった。
バジリカートの議会にも出席したが皆、真剣であった。
それに引き換え、この国の議会というのは本当に腐っていると感じていた。
また、税金泥棒という言葉にも朝倉は引っかかるものがあった。
給与の控除額があまりに多いと感じていた。
国民の税負担があまりに多いのだ。
バジリカートでは王も王女も民のためと内政 外交と寝る間を惜しんで働く姿を見てきた。
民たちは自らが働いた分はほとんど自分たちの為に使っていた。
「腐っている!この国の役人は腐っている!」
「これは成敗せねばなるまい。」と手にしたコップの白い液体に目をやると朝倉はニヤリとした。
「牛さんから頂いた白き恵!どうか、丸山の目を覚まさせてください。ぷっぷるぷっぷっぷー」
朝倉が転移魔法を使うとき、無詠唱でいいのだが、朝倉はテレビの前でふざけてみた。
市の職員に起こされ顔をあげた丸山議員は眠気を覚ますために自分の頬を手でパンパンと叩いた。
その瞬間、鼻から白い液体がどどどーっと流れ出て机の上に跳ねてあたりを白く染めた。
テレビ画面の中ではコメンテーターたちが驚いている。
「えっ なに? なにあれ?」
「なに なんなん?」
「なんでしょう?」
「まさか?」
キャスターとコメンテーター全員がハモった!!!
「鼻から牛乳!!」
「あんたら 広島の人?」
「山口の宇部ですが」
「あの辺の子供たちよく歌うよね、鼻から牛乳・・・」
音声さんもタイミングよくバッハのトッカータとフーガ ニ短調を流した。
この出来事は中高生を中心に話題は広がり
結局、丸中議員は辞職した。
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