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5話:楽しいランチを。
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「ケイ、さっきはほんとうにごめんね」
ランチを予約していたお店につくなり、アランはしょげた顔をして僕に謝ってくる。
アランが謝る理由は、沢山の人の視線を浴びたままアランに抱きかかえられお店までやってきてしまったことだろうか?
僕は「気にしないで」と笑みを浮かべ、アランを落ち着かせる。
実際は、とんでもなく恥ずかしかったし、お店に入った時なんて店員さんは目をまん丸にして驚いていた。
アランに抱きかかえられたままで「……予約した久貫です」と伝えた時は、顔から火が出ちゃうかと思ったくらいだ。
でも、アランにそんなこと言ったら余計にへこんじゃいそうなので笑って誤魔化していると、アランが不安げに問いかけてくる。
「さっきのアルファに何かされなかった?」
「え? 特に何も……」
「顔……すごく近かったよ?」
「顔?」
先程のアルファとのやりとりを思い浮かべる。
匂いが~と言って顔を寄せてきたことは覚えているが、それ以外はなんて特別なことなどなかった。けど、背後からやってきたアランには違うように見えたのだろうか?
「匂いを嗅がれただけだよ。さっきもあの人が言ってたでしょ? 僕から香る匂いはアランのだったのかって。今日は、アランのネクタイを借りてたから、いい匂いを振り撒いてたのかもね」
「オレからいい匂いがするの?」
「うん。すっごく! アランの香りって、柔らかで優しいよね。アランは、香水とか使ってるの?」
「ううん。特に使ってないよ」
そう言ってアランは何故だか嬉しそうに微笑む。
ーー香水を使ってなくて、あんなにいい匂いってことは柔軟剤が決めてなのか? 今度、何を使ってるか教えてもらおう。
そんなことを考えていると、注文したパスタセットがやってくる。
美味しそうな食事を目の前に、またお腹がなってしまい再び熱くなる頬。
アランはそんな僕を見て「じゃあ、食べようか」と小さく微笑む。
入学早々に色々とあったけれど、美味しいパスタで全て帳消しだ。
パスタを頬張りアランに視線を向ければ、上品に食べている。
パスタを食べているだけで絵になるアラン。
もちろん、そう思っているのは僕だけじゃなくて他のテーブルに座っている人たちも同じようだ。
アランに集まる視線は、どれも好意的。
けれどそのアランと一緒にいる僕に向けられる視線は「なんで君が?」と言いたげだ。
ーー皆様、僕も同意見です。
セットについていた熱々のスープが入ったカップを両手で持ち、ふぅふぅと息をかけ冷やすとびん底眼鏡が一気にくもる。
僕のようなもさもさチビベータが、アランのような完璧アルファと一緒にいれることは奇跡的だ。
家賃や授業料を免除してもらっているが、むしろ僕がアランに支払わなくてはいけないんじゃないかと最近よく思う。
ーーアランに僕は何をしてやれるだろうか……
そう考えながらスープをすすっていると、アランがクスクスと笑っている。
熱々のスープカップを顔もとから遠ざけ、眼鏡のくもりがなくなり、アランを見れば口元を押さえながら笑っている。
「何かおかしなことでもあったの?」
そう問いかけると、アランは僕を見て笑みを深くする。
「ケイのスープを飲む姿が、曽祖母によく似ててさ。曽祖母も温かいものを飲む時に、よく眼鏡を曇らせてたなって思い出したら懐かしくて何故だか笑えてきたんだ」
笑ってごめんとアランは謝るが、そんなことでアランが笑顔になってくれるならむしろ大歓迎だ。
僕はアラン笑いかけ「もっとスープ飲もうか?」と、スープ片手にずれた眼鏡をくいっとあげる。
僕の姿にアランは屈託のない笑顔を見せてくれる。
煌めくアランの笑顔に、つられて僕も笑顔になりまたスープをまた一口。
アランとの楽しいランチの時間。
これからもっともっと楽しい日々が待っている気がして、僕の胸はとてもワクワクした。
ランチを予約していたお店につくなり、アランはしょげた顔をして僕に謝ってくる。
アランが謝る理由は、沢山の人の視線を浴びたままアランに抱きかかえられお店までやってきてしまったことだろうか?
僕は「気にしないで」と笑みを浮かべ、アランを落ち着かせる。
実際は、とんでもなく恥ずかしかったし、お店に入った時なんて店員さんは目をまん丸にして驚いていた。
アランに抱きかかえられたままで「……予約した久貫です」と伝えた時は、顔から火が出ちゃうかと思ったくらいだ。
でも、アランにそんなこと言ったら余計にへこんじゃいそうなので笑って誤魔化していると、アランが不安げに問いかけてくる。
「さっきのアルファに何かされなかった?」
「え? 特に何も……」
「顔……すごく近かったよ?」
「顔?」
先程のアルファとのやりとりを思い浮かべる。
匂いが~と言って顔を寄せてきたことは覚えているが、それ以外はなんて特別なことなどなかった。けど、背後からやってきたアランには違うように見えたのだろうか?
「匂いを嗅がれただけだよ。さっきもあの人が言ってたでしょ? 僕から香る匂いはアランのだったのかって。今日は、アランのネクタイを借りてたから、いい匂いを振り撒いてたのかもね」
「オレからいい匂いがするの?」
「うん。すっごく! アランの香りって、柔らかで優しいよね。アランは、香水とか使ってるの?」
「ううん。特に使ってないよ」
そう言ってアランは何故だか嬉しそうに微笑む。
ーー香水を使ってなくて、あんなにいい匂いってことは柔軟剤が決めてなのか? 今度、何を使ってるか教えてもらおう。
そんなことを考えていると、注文したパスタセットがやってくる。
美味しそうな食事を目の前に、またお腹がなってしまい再び熱くなる頬。
アランはそんな僕を見て「じゃあ、食べようか」と小さく微笑む。
入学早々に色々とあったけれど、美味しいパスタで全て帳消しだ。
パスタを頬張りアランに視線を向ければ、上品に食べている。
パスタを食べているだけで絵になるアラン。
もちろん、そう思っているのは僕だけじゃなくて他のテーブルに座っている人たちも同じようだ。
アランに集まる視線は、どれも好意的。
けれどそのアランと一緒にいる僕に向けられる視線は「なんで君が?」と言いたげだ。
ーー皆様、僕も同意見です。
セットについていた熱々のスープが入ったカップを両手で持ち、ふぅふぅと息をかけ冷やすとびん底眼鏡が一気にくもる。
僕のようなもさもさチビベータが、アランのような完璧アルファと一緒にいれることは奇跡的だ。
家賃や授業料を免除してもらっているが、むしろ僕がアランに支払わなくてはいけないんじゃないかと最近よく思う。
ーーアランに僕は何をしてやれるだろうか……
そう考えながらスープをすすっていると、アランがクスクスと笑っている。
熱々のスープカップを顔もとから遠ざけ、眼鏡のくもりがなくなり、アランを見れば口元を押さえながら笑っている。
「何かおかしなことでもあったの?」
そう問いかけると、アランは僕を見て笑みを深くする。
「ケイのスープを飲む姿が、曽祖母によく似ててさ。曽祖母も温かいものを飲む時に、よく眼鏡を曇らせてたなって思い出したら懐かしくて何故だか笑えてきたんだ」
笑ってごめんとアランは謝るが、そんなことでアランが笑顔になってくれるならむしろ大歓迎だ。
僕はアラン笑いかけ「もっとスープ飲もうか?」と、スープ片手にずれた眼鏡をくいっとあげる。
僕の姿にアランは屈託のない笑顔を見せてくれる。
煌めくアランの笑顔に、つられて僕も笑顔になりまたスープをまた一口。
アランとの楽しいランチの時間。
これからもっともっと楽しい日々が待っている気がして、僕の胸はとてもワクワクした。
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