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9話:アメリカンな感情表現
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ーーへっ……???
額に触れる柔らかな感触。
目の前はアランの真っ白な首筋。
そして、入学式の朝に嗅いだアランから香るとってもいい香り。
恋愛経験がほぼゼロの僕でも今の状況がなんなのか理解できた。
ーーおでこに、キス、されてる……
アランの薄い唇が僕のおでこに軽く触れ、ゆっくりと離れていく。
そして、アランの瞳がまた僕を見つめる。
「ケイ、今日は本当にありがとう」
「う、うん」
アランの言葉に僕は呆然としたまま返事をかえすが、頭の中は「なんで?」の疑問だらけだ。
目をパチクリさせてフリーズしている僕の手からコーヒーがなくなると、アランはニコリと笑い、今度は抱き寄せてくる。
温かいアランの体温と甘い香りが僕を包み込む。
さらに混乱した僕はアランにされるがまま行為を受け入れる。
アランは僕を抱きしめ、頭を撫でてから、もう一度額にキスをして、ようやく解放してくれる。
ハグなんて家族以外としたことなんてないし、キスなんて……初めてだった。
心臓がドキドキする。
顔を真っ赤にしたままアランを見つめていると、アランは柔らかく微笑む。
「ケイに沢山感謝を伝えたかったんだ」
「え、あ、う、……うん!」
ーーアメリカでは、感謝を伝える時はこんなんなの!?
うわずった声で答えると、アランはまた僕の頭を撫でる。
普段と変わらぬアランの様子に、アランにとってはこれは普通のことなんだと感じた。
確かに、海外ではハグなんて普通だしチークキスだってする。なんなら、キスが感情表現や挨拶の一種なとこだってある。
多国籍なアメリカで育ったアランにとっては、今の行為は普段と変わらないのかもしれない。
むしろ、アランが僕に心を開いてくれたってことなのかもしれない。
そう考えると腑に落ちて、胸のドキドキが少しおさまる。
そのあとは、いつものように二人でまったりとリビングで過ごす。
ただ、いつもよりもアランと僕の距離が近く、肩と肩が触れ合う距離だ。
常にアランのいい香りに包まれれば、やっぱり胸がドキドキする。
寝る時間になり「おやすみなさい」と声をかけると、またアランが近寄ってきてぎゅっと抱きしめられる。
「おやすみ、ケイ」
そんでもって、またオデコにキス。
三回目ともなると、僕も少し慣れてきてへへッと笑顔で応える。
ベッドで横になり瞼を閉じればアランのことが思い浮かぶ。
柔らかな唇の感触、甘い香り、アランの体温。
あらためて思い出すと恥ずかしさが強くなり、頬が熱くなった。
◇
翌日。
いつもより早く目が覚めて、寝ぼけたままリビングに行くとアランがいた。
「おはよう」
爽やかなアランの笑顔が朝日と混じり眩しい。
朝の挨拶を返すと、アランが近寄ってくる。
ふわりと香るアランの香りが昨日の記憶を呼び起こし、鼓動が速くなる。
またオデコにキスされるんだと思い、直立不動でアランを待っていると髪の毛を撫でられる。
「ケイの寝癖って面白いね」
寝癖でぴょんぴょんと何箇所か跳ねているのか、アランはおかしそうに僕の寝癖に触れる。
くるんと巻いた癖っ毛か寝癖か分からない僕の髪を指で絡めながら、アランの灰色の瞳は楽しそうに弧を描く。
ーー今日はキスしないんだ……
寝起きで寝ぼけていたせいか、そんなことを考えてしまう。
恥ずかしくなって考えを消すように小さく頭を振ると、アランは面白そうに笑う。
「頭触られるの、くすぐったかった?」
「ううん。それは大丈夫」
「それは?」
他に何かあるの?と、アランの視線が突き刺さるが、キスしてくれないことに疑問をもったなんて恥ずかしくてとてもじゃないけど言えない。
僕は「顔洗ってくる!」と言って逃げるように洗面台に向かった。
額に触れる柔らかな感触。
目の前はアランの真っ白な首筋。
そして、入学式の朝に嗅いだアランから香るとってもいい香り。
恋愛経験がほぼゼロの僕でも今の状況がなんなのか理解できた。
ーーおでこに、キス、されてる……
アランの薄い唇が僕のおでこに軽く触れ、ゆっくりと離れていく。
そして、アランの瞳がまた僕を見つめる。
「ケイ、今日は本当にありがとう」
「う、うん」
アランの言葉に僕は呆然としたまま返事をかえすが、頭の中は「なんで?」の疑問だらけだ。
目をパチクリさせてフリーズしている僕の手からコーヒーがなくなると、アランはニコリと笑い、今度は抱き寄せてくる。
温かいアランの体温と甘い香りが僕を包み込む。
さらに混乱した僕はアランにされるがまま行為を受け入れる。
アランは僕を抱きしめ、頭を撫でてから、もう一度額にキスをして、ようやく解放してくれる。
ハグなんて家族以外としたことなんてないし、キスなんて……初めてだった。
心臓がドキドキする。
顔を真っ赤にしたままアランを見つめていると、アランは柔らかく微笑む。
「ケイに沢山感謝を伝えたかったんだ」
「え、あ、う、……うん!」
ーーアメリカでは、感謝を伝える時はこんなんなの!?
うわずった声で答えると、アランはまた僕の頭を撫でる。
普段と変わらぬアランの様子に、アランにとってはこれは普通のことなんだと感じた。
確かに、海外ではハグなんて普通だしチークキスだってする。なんなら、キスが感情表現や挨拶の一種なとこだってある。
多国籍なアメリカで育ったアランにとっては、今の行為は普段と変わらないのかもしれない。
むしろ、アランが僕に心を開いてくれたってことなのかもしれない。
そう考えると腑に落ちて、胸のドキドキが少しおさまる。
そのあとは、いつものように二人でまったりとリビングで過ごす。
ただ、いつもよりもアランと僕の距離が近く、肩と肩が触れ合う距離だ。
常にアランのいい香りに包まれれば、やっぱり胸がドキドキする。
寝る時間になり「おやすみなさい」と声をかけると、またアランが近寄ってきてぎゅっと抱きしめられる。
「おやすみ、ケイ」
そんでもって、またオデコにキス。
三回目ともなると、僕も少し慣れてきてへへッと笑顔で応える。
ベッドで横になり瞼を閉じればアランのことが思い浮かぶ。
柔らかな唇の感触、甘い香り、アランの体温。
あらためて思い出すと恥ずかしさが強くなり、頬が熱くなった。
◇
翌日。
いつもより早く目が覚めて、寝ぼけたままリビングに行くとアランがいた。
「おはよう」
爽やかなアランの笑顔が朝日と混じり眩しい。
朝の挨拶を返すと、アランが近寄ってくる。
ふわりと香るアランの香りが昨日の記憶を呼び起こし、鼓動が速くなる。
またオデコにキスされるんだと思い、直立不動でアランを待っていると髪の毛を撫でられる。
「ケイの寝癖って面白いね」
寝癖でぴょんぴょんと何箇所か跳ねているのか、アランはおかしそうに僕の寝癖に触れる。
くるんと巻いた癖っ毛か寝癖か分からない僕の髪を指で絡めながら、アランの灰色の瞳は楽しそうに弧を描く。
ーー今日はキスしないんだ……
寝起きで寝ぼけていたせいか、そんなことを考えてしまう。
恥ずかしくなって考えを消すように小さく頭を振ると、アランは面白そうに笑う。
「頭触られるの、くすぐったかった?」
「ううん。それは大丈夫」
「それは?」
他に何かあるの?と、アランの視線が突き刺さるが、キスしてくれないことに疑問をもったなんて恥ずかしくてとてもじゃないけど言えない。
僕は「顔洗ってくる!」と言って逃げるように洗面台に向かった。
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