上 下
1 / 2

1.プロローグ

しおりを挟む
『おめでとうございます! あなたは異世界スマートガチャに当選致しました!』

 ある日の夜、胡散臭い封筒が玄関の郵便受けに入っていた。普段見ないけど、あれだけ大きな音が鳴れば気づくというもの。
 中身はメッセージの書かれた紙と、スマートフォンらしきもの。

「これはどういう……」

 新手の詐欺でも始まったのか?

 そう思うのも仕方ないだろう。
 異世界や当選したという単語が悪い。
 とはいえ、このスマホが普通に使えるものなら貰っておきたい。そろそろ、買い替えの時期かなと思っていたから。

 詐欺だったのなら、全部無視すればいいだけ。
 そういうのには割と慣れているし。

「んん?」

 起動すると、画面に『ガチャ』『アバター管理』『ステータス確認』『課金』の項目が現れる。……ただ、ガチャ以外は選択不可になっているらしい。
 ソシャゲのようにしか見えないけど、とりあえず引いてみようか。

『・美少女ガチャ····月に1度、少女を手に入れることが出来る。引いた結果を消す場合は、アイテムガチャの10回無料券を獲得』

 なんというか、『引いた結果を消す』とか地味に生々しいからやめて欲しい。

『・アイテムガチャ····日に1度、異世界産の道具や武具を手に入れることが出来る。1万円課金で1日10回まで引くことが可能』

 課金で1万……ぼったくりにも程がある。
 本当だったらいくらでも課金しそうだけど……。

『・アビリティガチャ····週に1度、特殊な能力を得ることが出来る。10万円課金で1週間に2回まで引くことが可能』

 特殊な能力って……しかも10万は高すぎ。

 ちなみに、初回は無料で10連が引ける。アイテムかアビリティで選べるようだけど、アビリティガチャしか選択肢が無い。
 何故なら、アイテムを引いて『住所を登録してゲットしよう!』みたいなことになったら嫌だからである。

 そんな訳で、アビリティガチャを選択。

『注意:肉体と精神が変質するため、1時間程の間は意識が途絶えます。YESを選択する前に安全な場所へ移動して下さい。 YES/NO』

「はい?」

 そんなことがあるはずもないのだが、それならどうしてこんな注意を……? 少し気になるし、大した手間でもないからベッドに向かう。

 さて……

『本当によろしいですか?』

 YESを選択。






「…………………なんだ、何も起こらな――」



 そこで、僕は意識を失った。


 ◇◇◇

「……寝てたのかな」

 寝る前のことはしっかり覚えている。
 ガチャを引いて、何も起きないと思ったら本当に意識が途絶えた。
 時間も大体1時間ちょっと過ぎている。
 これは、もしかしたらもしかするのかもしれない。

「えーと、ガチャの方は……」

 ──────────────────
『獲得アビリティ一覧』
 ・透視〈HN〉
 ・魔力操作rank7〈SSR〉
 ・剣術rank2〈HN〉
 ・アイテムボックス〈HR〉
 ・魔力拡張rank3〈R〉
 ・料理rank4〈R〉
 ・鍛治rank1〈N〉
 ・鑑定〈R〉
 ・回復魔法rank3〈HR〉
 ・身体強化・改〈LR〉
 ──────────────────

 明らかに要らねってなるのがある。
 まぁ、【鑑定】は重宝しそうだけど。
 問題は、これが本物なのか偽物なのか。普通に考えれば嘘間違いなしでも、状況を考えると完全に否定は出来ない。
 したくない、というのもある。

 検証は簡単。僕が好きな微糖のコーヒー缶……それもスチール製のやつを握ってみればいい。【身体強化・改】があるならそれくらい握り潰せないと話にならないから。

 でも、筋肉あんまり無いし、

 ――グシャッ!

「what?」

 思わず英語が出てしまうくらいびっくりした。
 だって、筋肉無いよなーって確認しようとしただけでスチール缶が潰れるなんて……幸いなのは、力を込めようとしなければ普段通りなこと。

 それはいいとして、

「本当なのが証明出来ちゃったなぁ……」

 どうして僕に、どうやって、とか疑問はいくつかあるけど、これはドキドキせざるを得ない。いや、こう見えても健全な男子高校生ですから。

 残るはアイテムガチャ1回と美少女ガチャ。
 せっかくなので、美少女ガチャを引いてみる。

 ……いや待て、人間が出てくるとしたら、戸籍とか食費とか色々と問題があるのでは……?

「よしっ、細かいことは後で考えよう!」

 鑑定で宝くじの当たりとか分かるかもしれないし。

 演出は鎖に繋がれた顔の見えない誰かが歩いてくる姿。まるで奴隷のようだ……と考えてから本当にそうなのかもしれないと思い直す。
 酷い扱いをするつもりはないけれど。

『C』

 まさかのそんな低いやつ?

『N』

 と思ったら、レア度表示は変化するらしい。

『HN』

 もうちょい……

『R』

 今さらだけど、

『HR』

 これってどういうレア度なんだろう?

『SR』

 可愛さとか強さとか?

『SSR』

 それなら、SSRって相当……あ、終わったかと思ったら更に上がった。

『UR』

 ま、まだ終わらない……だと?

『LR』

 ここで本当に終了……かと思いきや、

『わたしは、あなただけをずっと見ています』

 ピシリと画面に罅が入り(演出として)、セリフが聞こえてくる。そして、完全に割れたところで見えたのは……金髪の獣耳っ娘とXRの文字。
 耳が頭に生えており、尻尾のもふもふ感からすると狐だと思われる。
 顔は滅茶苦茶可愛い。2次元な可愛さじゃなくて、リアルな可愛い女の子。胸も大きいし、声もいいし、性格さえよければパーフェクト。

『結果を確定しますか? 手に入れた少女は、貴方を想い行動します。ただし、貴方の言動次第で嫌われることもあるので気をつけましょう。少女が顔で判断することはありません』

 勿論YES。色んな問題とか、美少女が貰えるならどうにでもする。可愛すぎてもうヤバい。

「って眩しっ!?」

 目を瞑っていても明るいくらい光を放ち――

「お兄様ぁ~っ!」

 狐っ娘――ティアは、僕の胸に飛び込んできた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

腐違い貴婦人会に出席したら、今何故か騎士団長の妻をしてます…

BL / 連載中 24h.ポイント:30,797pt お気に入り:2,240

【R18】引きこもりだった僕が貞操観念のゆるい島で癒される話

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:653pt お気に入り:12

男が希少な「あべこべ世界の掲示板」

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:347pt お気に入り:32

あなたに愛や恋は求めません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:109,603pt お気に入り:8,823

【18禁】聖女の処女を守るため、逆アナルを教えたら、開眼した模様

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,057pt お気に入り:324

乙女ゲーム関連 短編集

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,640pt お気に入り:155

生産チートの流され魔王ののんびり流されライフ

BL / 連載中 24h.ポイント:106pt お気に入り:1,883

処理中です...