此れ以上、甘やかさないで!

abang

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潮時なんてないわよ

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「星華~っ、指名。愛慈さんだよ。」


愛慈くんとはまだNo.1じゃない頃からの付き合いで、彼に愛してると言われた事は一度もないが、

それとなく、適当に遊んでる感じだった愛慈くんに物分かりのいい女を演じる事で割り切った関係を、今までの誰よりも長く続けて来た。


この店もお金の面で世話になっている、藤堂組の組長の孫の世話係だと皆が知っている。


なにしろ世間知らずのお嬢様らしく、そんなわがままな小娘の相手なんて、可哀そうだと皆が愛慈に言うと彼は殺意のこもった笑っていない目で曖昧に笑うだけだった。

私は何かずっとそれが気に入らなかった。


「あら愛慈くん、今日ははいいの?」


「あぁ、これも仕事みたいなもんだからな。」


何気なしにそう言う愛慈くんの言葉にイラっとしながら、お酒を作ってあげる。



「はい、どうぞ。今日はゆっくりできるの?」


「いや、お嬢が明日早いからそんなにかな。」


「また?たまにはウチに泊まってくれないのね」


「そんな関係でもないだろ、」


最近の愛慈くんは殆ど空っぽって感じで全く寝てくれないし、義務的に時々仕事でに店に来たら私を指名するだけ。



「まさか、その子の事好きなの?」


「…コホッ…っなんで?」



「何年、愛慈くん見てると思うの?」



「あー、そんなんじゃねぇよ」

(もっとずっと前から、愛してるよりも深い何か…)




「あっそ。こないだ会った子よね?」




「そうだっけ?」

(何でこんな探ってくんの、コイツこんなだっけ?)




~♪~♪…

「ごめん。」

「どうぞ。」



「はい…はぁ!?お嬢がなんでこんな時間に?親父は…?…あぁ、うん、分かった。」




「どうかしたの?」



「いや、私用でちょっと出る。」


(は?こっちは仕事で、あのガキが私用ってこと!?)




「ちょっと、こんなすぐに立たれるとこっちの顔が立たないんだけど。」



「また今度来るよ。」



「ちょっと…!今夜こそ待ってるからね!?」



「…はぁ、今日は無理そうかな、」




急いでいるのか愛慈は、イライラした様子で星華に掴まれた手首をやんわり振り払う。


ライバルであり、友達である女の子達の目線を感じて、プライドを傷つけられたような気にもなった。




「愛慈くん、彼女の私と、ただの仕事どっちが大事なの?」




今引き留められなくても、皆の前で彼女だと肯定してくれる一言があれば良かった。

ごめん、と申し訳無さそうにしてくれれば良かった。



「星華、お前なんか勘違いしてない?お嬢とお前比べた事なんかねぇよ。」


どっち?どうゆう意味?ってみんなが注目してる。


私とあのガキじゃ女として比べられないって意味よね?皆もそう思っているはず、


いつも通りの笑顔の愛慈くんを不安を隠すように睨みつける。



「お嬢に決まってんでしょ。お前が彼女だった事も無いよ。うるさく無かったからそのままにしといただけで…まぁ潮時かな。」



「んなっ!!!愛慈くん!ふざけないでよ!!」



周りの嘲笑うような視線とヒソヒソ話、今まで見下してきた奴がこっちを哀れむように見てる。


「真面目だよ。早く退いてくれ、」


騒がせて悪かったなと、多すぎるお金を置いて出た愛慈くんはもう二度と私の所に戻らない気がした。

(元々、私のものでも無かったんだっけ)




ーーー

「かなりタイムロスした、お嬢こんな時間に外に出るなんてまさか男じゃねーだろうな….」

車を飛ばしてGPSが指す、夜にやってるお洒落なカフェへ到着すると、窓際の席からお嬢とこないだの男が見えた。



(なんでこんな時間に….)

確かにお嬢は俺を拒絶しなかったし、あと一歩だと思ったのにどう言う展開なのか、親父に、



「ドライブに誘われたの。」と恥ずかしそうに言って出たらしい。



0時までには家に帰っているようにと言われたらしいが、
今はまだ22時……

(何かあるには充分すぎる!)



そんな危険なことを親父が何でと思ったが、


「どうせ、愛慈が付けとるわ。時間よりはよ帰ってくる」


と言っていたらしいので、親父は十中八九GPSを知っているということになる。


(仕事だって知ってるくせに、親父も人が悪いよ…)


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