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そろそろ分かったでしょ?
しおりを挟む「…。」
「お嬢。」
「…。」
ーーキキィ
不貞腐れる天音が愛慈に返事をしないでいると、車を端に停めた愛慈が天音のシートに乗り出して、覆い被さるように、腕をついて天音に顔を近づけて、頬にそっと触れた。
「お嬢。」
「…っなに。」
広い道なのに、この辺は店が殆どないので暗くて静かであり、狭い空間に二人っきりなのが今日はとてもドキドキした。
見つめる愛慈に居心地が悪くなり、柔らかい生地のプリーツスカートをきゅっと握りしめた。
「お嬢は、なんで男が欲しいんですか?」
「なんでって、恋をしたいの…っ」
「男なんか作らなくても俺が居るでしょう。」
少しだけ目を細めて、艶やかな表情で天音を見下ろす。
心臓が跳ねて、一瞬息を止めた天音の鼻先に触れるか触れないか程のキスをして、
今度はおでこ、頬、耳……天音はその微かな唇の感触にもどかしいような、ムズムズした気持ちになり、愛慈と目が合うと力が抜けたように真っ赤な顔を両手で隠した。
「なにして…んっ」
首元に唇が触れたときにはくすぐったいような感じがしてすぐにチクッと刺すような痛みがした。
そのまま愛慈の手はスカートを手繰り上げて天音の太腿を撫でながら徐々に上がって来ていた。
急に外気に肌が晒されてすうっと冷たい感触がした。
「愛慈、ほんとにどうしたの?やめっ…」
「男と車に二人なんて、誘ってるようなもんですよ。俺以外の男は皆危険なんです。いつこうなってもおかしくない。」
「律先輩はそんな悪い人じゃないよ、やだ…ぁ」
愛慈はよく天音のおでこや頬に子供にするようなキスをするがどうやらそれとは様子が違うキスが降ってきて、愛慈が天音の脚から下着の縁をなぞる。
「分かんないでしょ。それとも誘ってんの?」
「ちがっ……っっっきゃぁ!」ボスッ
「ーっ!」
愛慈が天音の片脚をグイっと開いた瞬間に天音は愛慈のみぞおちをキレイなフォームで入れた。
「愛慈いい加減にして…!」
「…って、お嬢ひどい。」
「愛慈が変なことするからでしょ!」
「お嬢が男とふたりで車なんか乗るから…」
愛慈は、いてー。と恨めしげに天音を見ながら拗ねている。
天音はチラリと愛慈をみて、袖をきゅっと少し引っ張ると、その仕草に撃ち抜かれたような愛慈の表情には気づかず、
愛慈を見上げるように、
「でも、愛慈。いつもありがとう…。」
って恥ずかしそうに言って、少し身を乗り出して愛慈の胸に頭を預ける。
「!…俺しか居ないって分かったでしょ、お嬢。」
「…何言ってんの彼女いるくせに。」
(妹みたいに思ってるだけでしょう。)
「お嬢、…~♪~♪~♪……すんません。」
「ううん、どうぞ出て。」
最悪のタイミングで鳴ったスマホを忌々しげに握って相手を確認せずスライドして応答する。
(誰だよ、いい雰囲気だったのに…)
「愛慈…?さっきはごめんね…大切な組長さんのお孫さんだって分かってるから…仕事の次でいいの。また気持ち良いことしよう?」
静かな車内、近い距離。スマホから漏れる声はバッチリ天音に聴こえていた。
身体が冷えるような感覚がして、天音と目を合わせられない。
身体を硬らせて、そっと愛慈から離れた天音は、申し訳無さそうにバッグからイヤホンを出してこれ以上聞かないように、耳につけた。
(気持ちいい事?彼女さんかな?そうよね、私ももう子供じゃないんだし愛慈とはちゃんと距離をおかないと…)
天音はこれ以上何も聞こえないが、何やら言い争いをしている愛慈をチラリと見ると焦ったような顔をして、スマホの電源を切った。
「…ぅ」
「-ーょう」
「お嬢?」
急にイヤホンを取られて愛慈に呼ばれて我に帰る。
バツが悪そうに天音の頬に触れて、
「あの…星華は…
「わかってるよ!愛慈は大人だし、私だってもう大人だもんね…星華さんを悲しませないように、ちゃんと距離を置かないとね。」
いつもの大人びた笑顔で言った天音の本心が知りたい、愛慈は天音の気持ちを確認したかった、
(無意識にでも、俺に傾いていると思ってたのに…こんなにあっさり。)
「星華とは、そんなんじゃない…」
「遠慮しなくていいのに、私ももう一人で大丈夫だよ?」
頬から手を下ろし、向き合ったまま天音を抱きしめようとした愛慈の胸を、天音は、綺麗すぎる笑顔で胸を軽く押して拒絶した。
天音が愛慈を拒絶したことはなかったので、その拒絶する目を見てチクリと胸が痛んだ。
(私も、私の愛慈だってどこかで思ってた。そんな傲慢な気持ちって良くないよね。ちゃんと応援しなきゃ、)
何か、決心したような天音の強い瞳に、愛慈悲は焦燥感に苛まれた。
(お嬢、お願い俺から離れてかないで。)
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