16 / 33
別れてやらないんだから
しおりを挟む「お嬢、おいで…」
ソファに座って呼ぶ愛慈の元におずおずと天音が近づくと、そのまま腕を引いて隣に座らせる。
「お嬢、明日は休みですよね?」
「う、うん。だから車は大丈夫だよ。」
「…どっか行きます?」
「へ…愛慈、仕事は?」
「ちょっとだけ、朝付き合ってくれれば…」
天音は嬉しそうに頷いて、愛慈に甘えるように頭を預けた。
(う、わ…可愛いっ!お嬢、俺のお嬢!)
愛慈は片手で目元を覆って天井を仰いだ。
「あー、帰んないとな。」
「うん。」ギュッ
(言葉と行動がちげーよお嬢。可愛すぎて死にそう。)
ーー
どうしてこうなった?あんなに幸せだったのが数十分前。
「……。」
「あの…お嬢?誤解だから…ね?」
(何、こんな愛慈くん初めて見たんだけど。いつもと全然違うじゃない。ギリ)
「ちょっと、愛慈くん。なんでこの人いるのよ。」
「逆になんでココ知ってんの?」
無言で微笑む天音に対して、機嫌を伺うように必死で話しかける愛慈は星華に対してはいつも通り冷たく突き放すような話し方。
「星華、お前と付き合った事はないよ。勝手にそう言ってただけだし、無害だったから女避けに放っておいただけ。」
確かに、星華は愛慈に付き合おうと言われた事もないし、仕事以外で会ったりすることはそういう時だけだった。
「こんな子供で満足できるわけ?」
「?」
「 !お前っお嬢の前でやめろよ。」
もう天音も子供ではない、会話の中でなんとなく満足の意味が分かってしまった。
「…あ。」カァ
「このぐらいで赤くなっちゃって…愛慈くんって、とっても激しいの。ちょっとSだし…あなたじゃ役不足よねぇ…」ニヤリ
天音は顔を真っ赤にして、キッっと愛慈を睨むと慌てて天音の手を握る愛慈に「さいてー。へ、変態。」って言ったと思えば、
星華の方を真っ直ぐに見つめた。
「愛慈はもしかしたら本当に、女性にだらしないのかもしれない。でも、誰が相応しいかなんて愛慈が決める事よ。」
「なっ!生意気な子ね!」
「お前!誰に向かっていってん……」
怒って言い返す愛慈を手で制して、背筋を伸ばして言った。
「ここで親の立場を傘にきるつもりは無い。でも、貴女が愛慈の彼女じゃなかったのなら、私はこの気持ちに気付いてしまったもの、引き返すつもりはないわ。それに…」
「お嬢…!」
「なによ……!?!!!」
天音は愛慈の襟を掴んで噛み付くようにキスをして、愛慈が絡める舌に必死でついていく。
そのまま愛慈のおっきくなったものを服越しにさすって、
愛慈にキスの嵐を降らせると、
瞳の奥を燃え上がらせ、恍惚とした表情でまるで天音を獲物を捕らえるかのような視線で見る愛慈に星華はドキリとする。
星華に対して愛慈は求めてくれた事など無く、星華が誘えば何となく部屋に来て、まるで誰かの代わりにでも抱くように激しく、無理矢理果てる。
もちろんキスなどした事は無かった。
それが、まるで飢えた獣のようにぎこちなく愛慈に口付ける天音を求め大切そうに髪を撫でる。
(何あの顔、ガキでも顔がいいとサマになんのね)
愛慈が必死で薄着の彼女のあちこちに赤い華をさかせているその天音の表情はまるできちんと大人の女のようだった。
「愛慈くん、悪ふざけはいい加減に…っ」
「星華さん、子供だというのならこのまま確かめますか?」
ソファに押し倒した愛慈に跨ってこっちを真っ直ぐに見る天音はとても妖艶に見えた。
(なによ、愛慈くん顔真っ赤にして、あんなにおっきくしちゃって!!!!)
「どきなさいよ!愛慈くんとは別れないわ!私のものよ!」
「…っお嬢、やめ…!せいかお前と付き合ったことはねぇ…」
「!!??」
「っ!んっ!」
天音はいきなり愛慈のTシャツをまくって、突起部をペロリと舐めて口に含んだ。
(やば、お嬢の唇…こんなに赤くなりながら…)
「星華さん……見ていきます?」
天音が努めて強気に言うと星華怒って、グラスの水を天音と愛慈にぶっかけて、ドタバタと出て行った。
星華が出て行ったあと、ヘナヘナと愛慈の上に倒れかかった天音をぎゅっと抱きしめて愛慈は、自身を治めようと深呼吸した。
(俺、大人の男らしく、我慢しろ。)
「愛慈…ごめん、ヤキモチ妬いてしまったの、とんでもない事しちゃった…恥ずかしいわ……。」
「俺の心臓が持ちません…。たまににして下さいね。」
天音のおでこにキスして笑った愛慈に、恥ずかしそうに顔を隠したら天音は少しのあいだ愛慈と顔を合わせられなかった。
10
あなたにおすすめの小説
ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
旦那様の愛が重い
おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。
毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。
他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。
甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。
本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています
六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった!
『推しのバッドエンドを阻止したい』
そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。
推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?!
ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱
◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!
皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*)
(外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)
虚弱なヤクザの駆け込み寺
菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。
「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」
「脅してる場合ですか?」
ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。
※なろう、カクヨムでも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる