此れ以上、甘やかさないで!

abang

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大切な人の大切な人

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「あら、あなた…」



少しだけ低めの、艶やかな声が聞こえて振り返ると…相変わらず艶やかな服装と豊かな自分の武器をふんだんに使った星華が何故か自慢げな顔で立っていた。




「愛慈くんとのの事聞いたのね?」



「….っ、はい。」


咲は睨みつけるように星華を見つめる。



「何、生意気な目で見てんのよ。」




「….綺麗だなと思って。」



「分かってるじゃない、それなら見てなさい。」



「あなたがオネエだって誰も気付かない筈ですね。」



「ハァ!?誰がオネエですって!?私はれっきとした女よ!!」


「….ふっ!咲…っだめよ…!」




その会話で店の中の他のお客達も、店員までもが思わず笑ってしまい店中がクスクスと笑いの渦に巻き込まれた。



「えっごめんなさいオバさん!じゃなかったんだ!」


「っ!?このガキ…っ!!」




「きゃあ!てっきり化粧があまりに濃いから…髭でも隠してるのかなって思ったんです…」



「っ…ごめんなさい星華さんっ…!咲…っあは、もうやめて…!!」



天音も店の中のほとんどの人物も、もうこれ以上笑えないという程、物凄い顔で怒鳴り散らす星華を見てお腹を抱えていた。



「アンタ….っ!ちょっと来なさいよ!!もう許さないわ。」



「きゃ!」


「天音….っ!!何すんのよ!!!!」



「咲っ…!危ないから帰って!お爺ちゃんにすぐに伝えて欲しいのっ!」




「五月蝿いわね!アンタにはもう愛慈くんも居ないわよ!あの老ぼれに何ができるっていうのよ!!!」




天音は星華に髪を掴まれ、外に留めてあった黒い車に乗せられて行った。





咲は急いで天音の家まで走った。





「すみません!!!!あのっ!!!!天音のお祖父さんは!!!」




「あれ?咲ちゃんじゃねぇか、久しぶりだなァ!どうかしたんかい?」


「お、本当だ。親父ならちょうど帰ってるぜ!」





「天音が!大変なんです!!!星華って女の人につれてかれて…っ!!!」



「お嬢が!?んな筈…、」



「私が居たから!なんかボディガードみたいな男達が外で待ってました!きっと私を巻き込まない為に…っ!!」





「…っ!!!すぐ親父に伝えろ!!」


「ヤマさん!車回しますッ!」


「おう!見回りは後だ!咲ちゃん悪いが此処で待っててくれるか?」


「っ…はいっ、あの、これスマホで撮った車の写真です。」


「ありがとな!蓮二!撮っとけ!!」

「あい!!」




すると、ヤマさん達と蓮二と呼ばれた若い男が車で星華の元へ向かったと同時に家の奥から天音の祖父が現れた。



「おう、星華とかゆう嬢ちゃんもえらい事してくれよったのぅ」



「親父!!」

「お久しぶりですお祖父さん…すみません…私を守る為に天音が…」




「咲ちゃん、久しぶりやのぅ。大きなって!でもな、それはちゃうで。あれは天音狙ってきてんやろ初めから。気にする事ない。」




「おい、誰か利仁に連絡繋げ。天音にまで手ぇだしたらもうアイツも終わりやな。」




「星華なんかガキはどおでもえぇ、アッチには愛慈行っとるやろ。」




「でも親父、相手は堅気さんですぜ。」




「おう、あんな時限爆弾みたいな餓鬼シマでただでほっとくと思うか?堅気には堅気が一番安全でええ。利仁にすぐ天音のこと伝えろ。」





「あの…天音は無事なんでしょうか?」



「多分実家やろ。アッチには愛慈が婚約の異議申し立てに行っとる。勝手な婚約やゆうて相手の親は有力な政治家やけど心配いらん…天音絡んだ利仁は怖いでぇ。」



そう言って和菓子とお茶を咲に出してやる仁之助は、優しい祖父の顔であった。


「ゆっくりしていきなさい。新しい着替えも届けさせるから天音の住む離れで待っとったらええわ。走って疲れたやろ。ありがとうな。」




「…っ、」



そう言って案内してもらった天音の住む離れの一部屋は客室なのかシンプルな作りになっていた。


仁之助は利仁と話していた。




「おう、利仁か。聞いたんか。…せやかて堅気さんに手ぇ出すわけにはいかんやろ。」



「それはこっちで処理する。あの偉そうで無能な政治家だろ?ウチの跡取りまで奪ろうとするなんて…馬鹿なオッサンだよ。」




「天音と愛慈は無事やろうが一応ヤマが行っとる。」



「ああ、まぁ明日の朝のニュース見てなよ次はもっと話の通じる奴がなるといいんだけどな。」






「とにかく頼んだぞ。」





「ああ。わかってるよ。じゃあな親父。」

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