悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜

abang

文字の大きさ
43 / 69

終わりは突然に、

しおりを挟む

「なッ!どういう事だジェレミア!お前達、さっさと剣をどけろ!」



「できません陛下。陛下には嫌疑がかけられております」




真っ青になる皇后を支える心配そうなシエラ。



官僚達をまとめ上げて、皇帝に睨みを聞かせるブノエルン伯爵。



皇宮の騎士達すらも憧れ一目を置くマッケンゼン侯爵こと、リヒトはジェレミアを支持するように彼の周りを固めている。




「父上……尊敬していた貴方が自らの国民を誘拐し、好みの者は奴隷に、それ以外のものは売買しお金に替えていただなんて、今も信じられません」




「頼んだぞ」と皇帝の言葉の意を汲めなかった訳ではなかった。


はなからジェレミアは皇帝をするつもりだったのだ。


愛はなくともまだ、夫の力が必要な皇后は焦った様子で猫撫で声でジェレミアに下手くそな作り笑いで言う。




「ジ、ジェレミア?お父様を離してあげて?」





「いえ……セリアド侯爵の調査で浮上した背後に居る人物は全て父上でした。セリアド侯爵も陛下の命で行ったと自白しています」


「ジェレミア!お前を信じてはずだ!!」



「陛下…….あぁもうおしまいよっ」



「お義母さま……どうかお気を確かに……」




「シエラ!あなたは黙ってなさい!!!!ジェレミア、陛下にもしもの時があった時の権限は私にあるのよ、早く言う事を聞きなさい!」



シエラを突き飛ばした皇后を感情の読み取れない瞳で見てから、少し考えてポツリと話し始めるジェレミア。




「それは……出来かねます、母上。貴女とセリアド侯爵との不貞が明らかになっている以上、国を任せる事はできません」




「なッ!?それもセリアドが!?」




「はい、取引をしました。彼の命と真実を、なので証拠も揃っていますよ」




「……まぁ!お義母さま!なんてことなの!!!」



シエラがわざとショックを受けたようにふらつくと、ジェレミアが手を差し伸べ「姉様はこちらに」とふわりと微笑む。



「ジェレミア…….私よりその子を選ぶのね?」



「父上も、母上にも……尊敬する家族に裏切られた僕の……」.







そう言って極上の笑顔を見せたジェレミアの表情はたしかに、いつもの甘く優しいジェレミアの皇太子の笑顔だったが、



皇后はゾクリと背中を何かが走ったような気がした。



まるでと言ったようにも聞こえたのだ。






「皇后陛下…‥.今この城の者達と多くの貴族達はジェレミア殿下を支持しております」



リヒトが落ち着いた様子で言うと、今度は金切り声を上げて叫ぶ皇后に全員が顔を顰める。



「何を言っているか分かっているの……立派な反逆なのよっ」



「ええ、母上。そうでしょうね。ですが今や父上は罪人、母上も……皇族の不貞は立派な罪だとお忘れですか?ねぇリヒト?」




「はい、民意はすでに両陛下を見放しておりますので。これだけの貴族達のご支持があればジェレミア殿下にとしての不足はないかと」




ジェレミアとリヒトが決して固い絆で結ばれた訳でもなかった。
けれども、国に対する理想や貴族達をまとめ派閥間で過激化する争いを抑えたいと考える政治的意見が一致したのだ。



それこそ、シエラがジェレミアを知ればリヒトは必ず彼に付くと考えていた理由でもあった。


ブノエルン伯爵については、セリアドを政治から排除し皇帝の件以外でも人身売買を行っていたセリアドを罰する事が目的だったので、今回彼が世話をする孤児達の少女達を助けた恩で、シエラの予想どおり貴族派の者達をまとめ上げ、ジェレミアの思想に共感を持たせてまとめ上げた。




そして、かつてから前皇后へと執着する夫への当てつけで何度も身体を重ねていたセリアド侯爵との不貞が公になった皇后はもう殆どの支持を無くしたと言っても過言でもないだろう。




男性皇族の愛妾や、側妃が寛大なのに対して子を産む身体を持つ女性皇族への不貞に関しては厳格である。


皇后は顔を白くさせて、ばたりと床に倒れる寸前で護衛騎士に受け止められた。





「では、後日正式な裁判で会いましょう父上、母上。行こう……姉上」



「……分かったわジェレミー」






「父上と母上は別々の宮で謹慎を。裁判がおわるまでは宮から出られませんが不自由はないように計らいますので、ご安心を」




たった数日だった。



シエラからのヒントで、動き出したジェレミアがパーティーで見事セリアド侯爵を釣り上げたあの日から、たったの数日でここまで事を進めたのだ。



勿論、前世でのジェレミアの頭脳であり影だったシエラが居ての事であったがそれでも彼はやはり前世同様、皇帝としての才能を見せつけた。



(ジェレミーとの関係も良好のまま、皇帝になってもきっと大丈夫よね?けれど過去よりも早く進んでいる時間は止められないわ、いざとなれば……)





「シエラ皇女、大丈夫ですか?」


「……リヒト。大丈夫よありがとう」



相変わらずどこかぎこちない二人だったがそれでもジェレミアにとって他の男がシエラに触れることは気に入らないことだった。



「リヒト、ご褒美はあげないつもりだけど」



「褒美にはなりません殿下、すでに私の婚約者ですので」




「「……」」



まるで取り合っているようにも感じる二人に戸惑うシエラは「まさか」と心の中で鼻で笑ってから「ブノエルン伯爵が待っているはずよ」と未だ睨み合う二人を急かした。











しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。

長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。 仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。 愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。 ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。 ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。 二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。 時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し…… 全ては、愛する人と幸せになるために。 他サイトと重複投稿しています。 全面改稿して投稿中です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

【完】婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました

さこの
恋愛
 婚約者の侯爵令嬢セリーナが好きすぎて話しかけることができなくさらに近くに寄れないジェフェリー。  そんなジェフェリーに嫌われていると思って婚約をなかった事にして、自由にしてあげたいセリーナ。  それをまた勘違いして何故か自分が選ばれると思っている平民ジュリアナ。  あくまで架空のゆる設定です。 ホットランキング入りしました。ありがとうございます!! 2021/08/29 *全三十話です。執筆済みです

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜

氷雨そら
恋愛
 婚約相手のいない婚約式。  通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。  ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。  さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。  けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。 (まさかのやり直し……?)  先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。  ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。 小説家になろう様にも投稿しています。

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

処理中です...