悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜

abang

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唯一の家族への愛情

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ブノエルン伯爵の待つ部屋へと急いだシエラとジェレミア、そしてリヒトは其々のこれからを考えているのだろう言葉少なだった。



(姉様と僕が居れば充分やっていける。後は貴族達の支持だけ……)




(ジェレミーへの支持はこの数ヶ月で充分集めた。後は見極めるだけ…‥.私の退路も資金も順調に進んでいるわ)




(殿下自身はともかく、国を想う志は確かに皇帝に相応しいと思えるものだ。シエラ皇女との事を差引いてもジェレミア殿下には充分支持する価値があるだろう)





ジェレミアは幼い頃から皇帝になるべくして育った上に、彼なりに生まれ育った国を想う心と、理想があった。



それでも、遊び人でいつ何処かから隠し子が出てきてもおかしくないような父が皇帝であるが為に、自分の足元を支える皇后の力に嫌悪しながらも抗えぬ自分の不甲斐なさとで葛藤していたが、



近頃のシエラの積極的な行動や、皇后の命令ではない自立した策によりようやく理想に近づけている気がした。


ただ、と言った所か、自分でも制御しきれないシエラへの想いは時たま夢で見た自分と現実の自分が重なりあってしまう程、まるで皇帝のように狂気的で、怖くなる時もある。


(僕は父上とは違う。きっと姉様を僕が……一生幸せにするんだ)



手放す気など更々ないし、傷つけないように慎重に自分の心の奥底から湧き出てくる欲望と戦っていた。




一方、リヒトもまた自らの思考を巡らせていた。


シエラへの執着をリヒトの前では隠さないどころか、抑えきれていないと言うような様子のジェレミアとずっと相容れないと思っていたが、


シエラを通して何度も、何度も話すうちに国の未来を想う彼の気持ちを知った。それについての理想も全てとは言わないがほとんどリヒトや幾つかの貴族達が望む国のあるべき姿で、


父、母である両陛下に抗おうとする姿は健気にも見えた。


そして……皇帝の過去を知る数少ないマッケンゼン公爵である自分には分かる、父親に似まいとシエラへの気持ちのコントロールに必死で努めているジェレミアをどうしても嫌いにはなれなかった。


ましてや、血は繋がっていないとはいえ二人にはちゃんとしたと信頼関係が見えるのだ。


シエラとジェレミアの持つ感情は違えど、二人が唯一の家族として過酷な皇宮の環境でたった二人で手を取り合ってきた事実は確かだった。


それに気づいてしまえば、ジェレミアは女性としてシエラを見ている面もありながら、行き過ぎたシスコンでもあるのではないか?

たった一人しか家族が居ないのだからそれを必死に誰にも奪われまいとするのは当たり前にも感じて、憎めなくなった。



(むしろ、貴方が好きにさえ感じるよジェレミア殿下)



自分にとって、両親の遺したマッケンゼンと二人が愛した幼馴染しか守るものが無かったようにジェレミアとってはシエラがそうなのだ。



(俺も、殿下のように真っ直ぐにただシエラ皇女だけを護る事ができたら、シエラ皇女は俺を選んでくれるのだろうか)



両親の想いと、自分の気持ちに揺れる自分の優柔不断さに途端に嫌気がさして、目前の会議に集中しようと考えるのをやめた。




(二人とも、やけに静かね。……まぁ助かるけれど)


一度目の人生で、自分を殺したのがジェレミアだった事に深く傷ついた理由が今回の人生で解った。


血の繋がらない両親に、自分を嫌う婚約者、敵ばかりの社交会、そしてどうする事もできない弱い自分。


そんな自分に、歪とはいえ執着を向けるジェレミアはやはりたった一人の家族だった。


(最後は皇后を選んだけれど……ジェレミーは皇帝になるべくして育てられたのだもの。今考えるとそうなっても自然だったのよね)



それほどまでに、シエラには地位も権力も皇女としての信頼も無かった。


壊れていく弟の影で、彼の為だと言い訳をしてただ誰にも逆らえないだけの自分を正当化したかっただけなのかもしれない。



(そんな姉では、貴方を皇帝には出来なかった)




けれども、今は違う。


(私は自由になる、けれど……姉として貴方の野望を叶えてあげたい)



間違えたとは言え、ひとりぼっちの狭い世界で唯一自分を求めてくれた弟だからだった。


(血の繋がりはなくても、歪でも、姉弟なのよジェレミー)



彼は変わり始めている。


シエラ自身もだ。



もうお互いに一人じゃないし、二人ぼっちでもない。




「……今度きっと、幸福な最期よね」



「姉様、何かいった?」


「すまない、俺も聞き取れなかった」




「いえ、ただ緊張すると言っただけよ」






「「ああ、大丈夫……」」


「ちょっと、僕とかぶらないでくれる?」


「……申し訳ありません、殿下」




(仲がいいのかしら、悪いのかしら?)





「そういえば姉様……ウェヌスが好きだよね?」


「……ええ」


「今や小規模ながらも、上質なダイヤモンドと前衛的なデザインで世界中が知る店だ。情報屋なんかも裏ではやってるらしい」


「そう」


「姉様が好きなら、そろそろ僕が買い取る価値があると思うんだ。クレマンのダイヤモンドもウェヌスと取引してるよね?」



「いえ……、責任が増えるのは困るの。今でさえ忙しいのに……それに、私の楽しみが減るわ」




「そう?なら、いいんだけれど。欲しくなったらいつでも贈るよ」



「……それなら俺にもできます」



に大金を払わせると、姉様に悪女の汚名がつくだろう?」


「殿下、



「今はね」


「……二人ともいい加減にして、着いたわ」








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