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他責と自責
しおりを挟む何故、両親が突然領地から出てきたのかアルベルトは一抹の不安を感じていた。
それでも今のところ大した動きは無いし、気にする事はないだろうと思考を手放して近頃やけに献身的なメーデアのおかげで痛む腰を思わずにやけながらさすった。
「アルベルト」
「父上、どうされたんですか?」
「手紙の管理は誰が?」
「大抵、今はメーデアが……」
メーデアの命令で不正を働くその者を即刻クビにするつもりだった侯爵は額に手を当てた。
「どうしてお前はいつもそうなんだ?」
「どう言う意味ですか?」
「領地の管理こそこちらである程度担っているが、事業は?家門の維持は?前の手紙ではルージュ嬢の不手際だといっていたな?」
「あれは……!ルージュの所為で、けどメーデアが対処を……!」
侯爵はアルベルトの頬を打って冷ややかに睨みつけた。
「お前は何をしていた?」
「俺は執務をしていました!」
「いつも誰かの所為。いいか、お前は何もしていない」
アルベルトは頭に血が昇ったのか、言い訳すらできなくなって逃げ出したのか頬を押さえて大股で侯爵の元から去って行く。
ルージュからの手紙が初めて来た時、あれ程彼女を望んでいたアルベルトがまさかと信じる事はできなかった。
王都へ使いをやり、調査し噂を知った時はがっかりした。
領地を出た時はメーデアを罰するつもりだったが、彼女のお腹にアルベルトの子が居るかもしれないと聞いた時に気づいた。
全ての責任が彼女だけにあるわけでは無いのだと。
アルベルトにも、二人ならばきっと上手くやっていけるだろうと安心しきってあまり目を向けていなかった自分自身にも責任はあるのだ。
いくら相手が憎きメーデアとはいえ罪なき命がもし宿れば、息子にはその責任を放棄する人間にはなって欲しくないし、自分もそうなりたくない。
罪なき命は引き取って何らかの形で育てるつもりだ。
侯爵は今更償うことはできないとしても全ての責任を取るつもりで王都に戻ったのだ。
アルベルトは頑なに信じようとしないが、ウィクトル公子とルージュが婚約秒読みだと言う噂は本当だろう。
一人息子への甘さとは昨晩、妻と今の自分達に見合わぬ苦い酒で決別した。
「セントリック、養子のフィートが王都に到着次第アルベルトとメーデアを別館へメーデアは子を産み落とすまで軟禁しなさい」
王都に来る前に家門内での話は内密に済んでいた。
傍系の家門を初める家臣達とはもう話はついている。
直接確認し、アルベルトに見込みが無ければアルベルトとは親子の縁を切り家門の為に家臣へ降下させる手筈だ。
勿論、王都にもいられない。
気落ちしている妻には胸が痛むが、二度と会えない訳じゃない。
マルグリスの姓と侯爵位を剥奪し家門と名誉を守る為だ。
着々と様々な準備が進んでいく中できっと、アルベルトは誰の言葉にも耳を貸さないのだろう。
けれども事は思ったよりも迅速に進んだ。
養子のフィートが王都に到着する前に、届いたのだ。
ウィクトル大公家からの「婚約パーティーの招待状」が。
数日前から行動を制限された事と、越権行為を指摘され女主人のように振舞えなくなった事で不貞腐れているメーデアも、秘書との取り返しのつかない関係の現実逃避と、ルージュがもう戻ってこないことを信じたくない為に仕事に没頭するアルベルトも知ることになるだろう。目を背け続けた真実を。
「祝いの品を用意してくれ。メーデアの見張りを怠らないように」
「おっ、大旦那様!!アルベルト様がご乱心です……!」
招待状よりも先に新聞の記事でも見たのだろう。
ガシャンと何かが割れる音がした。
情けないことに息子はまだ信じている。
ルージュは自分だけをずっと愛していると。
始めたのも、それを崩したのも自分だというのに……
「放っておきなさい。邸からは出さないように」
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