八年間の恋を捨てて結婚します

abang

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寝取り夫人と無能侯爵

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いつからこんなにも卑屈になったのだろう?


「いやぁ、アルベルト殿はですね」

「ははっ……そうでしょうか?」


時々会話を交わす者達の含みのある物言いに皆がアルベルトを見下げていると言うことはすぐに理解できた。

誰かが自分を馬鹿にする素振りを見せるとすぐに言い返すはずのアルベルトは近頃、自信のなさからか誤魔化し笑いをするばかりだ。

それとも自分よりも能力や力を持つ貴族達や他国の要人たちばかりが集まるこの会場の空気に飲まれてでもいるのだろうか?
メーデアは目の前の男を軽く睨んだ。



婚約者殿をお持ちで羨ましいですねぇ」


そう言ったのは自分達とそう変わらない年齢の男性で国内での爵位は持たないが、レイヴ女侯爵の配偶者で隣国の第三王子らしい。

一瞬、褒められたと勘違いしそうになる穏やかな笑顔だが、その目線はどう見ても胸元を眺めている。
興味があると言うよりはまるで鼻で笑うような表情。


(さっきから鼻につくわね、この男)


「ほんとですな、ウチのレイナに引けを取りませんね」


今度は舐め回すような視線。
どこぞの国の伯爵だとか言っていたが、畜産業で成り上がったただの成金だ。そもそもレイナという女性もどれほどの女性なのか底が知れている。

そんな事を考えているとまた男達がゾロゾロと集まりアルベルトを囲む。国内の貴族達には近頃投資の打診で顔を合わせたばかりの者達も多く、アルベルトは気まずいのかまた誤魔化すように笑った。

(何ヘラヘラしてるのよ……!)


見下すような視線や、いやらしい視線。
遠巻きに見る貴婦人達の冷ややかな視線も含めてメーデアは耐えかねて人に酔ってしまいそうだと思った。

婚約者の邸でも冷遇され、様々な噂の的になる中ルージュはどうやってあんなにも平静を保てていたのだろうか?


(負けていられないわね)

寄せて上げた胸元や尻を誰かが撫でた。

笑うだけのアルベルトに、まるで貴婦人に対する扱いをしない男達の態度と目線。

とうとう手を振り上げた時、少し低めの女性の声が男達のビジネスの話とメーデア達への無礼な視線に割り込んだ。


「ルージュ様とテンタシオン様の晴れの舞台ですよ皆様」

「レイヴ女侯爵殿……」

「貴方も、新人には親切にして下さいね」


メーデアは「レイヴ女侯爵」の名に目を輝かせた。
まさか、こんな大物が自分を庇い立ててくれるなんてと歓喜したのも束の間、彼女の友人だろうか?後ろに居た貴婦人が諌めるように畜産業を営む伯爵に言った。


「レイラは貴方のペットの牝牛ではありませんか。失礼ですよ」

「なんですって……!?」


その貴婦人の言葉によって笑いを堪える周囲の雰囲気に赤面し俯くアルベルトと怒りに震えるメーデア。


「おやめなさい。ウィクトル大公のパーティーの品格を私達が下げてはいけません」


レイヴ女侯爵の言葉によって皆が納得したように散り散りになり始めると、とうとう準備が整ったのか式典が始まった。

情けないアルベルトとは違い、堂々と威厳のあるテンタシオンの姿。やっぱりどうしてもメーデアはルージュが羨ましかった。


「牝牛だ、どうやって紛れ込んだ?」

「誰か買い値を聞いて来いよ」


それでもヒソヒソとメーデアを揶揄う声が聞こえて居心地が悪い。アルベルトは式典に出るルージュに釘付けだし、メーデアの思惑など人脈も、出会いもどちらも叶いそうにない。


この場の皆がメーデアの素行や素性を知っている。
彼女を次期マルグリス侯爵夫人と認める者は居なかった。

否、今のマルグリス侯爵家をかつてのように考えることは出来なかったのだ。

大抵の者が今日二人が「前マルグリス侯爵」への敬意でパーティーに参加出来ていることを知っている。
本来ならばあからさまに別室で監視されながら後の「要件」だけの話し合いの為に登城していたはずだ。

あまりにも二人は浅慮であった。

それにも関わらずまだメーデアは自身の野望の為にレイヴ女侯爵を追いかけた。


「レイヴ女侯爵様……っ!!」






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