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14.だって親友でしょう?

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パーティー、と言っても今日はセイランの付き添い人として出席しているので完璧なお仕事モードの地味なドレスだ。

それを見て膨れるセイランはとても愛らしく、レイヴンは先程から目が優しい。と、言っても殆どの人が彼のその表情の変化には気付かないだろう。


当然のように二人の元にやってくるジョルジオはどこかそわそわした様子でエリスに「今日のパートナーは?」なんて聞いてくるので、

「今日は執務です、セイラン様の付き添いに……」

と、表情を崩す事なく返事をすると何故かパァっと顔を明るくして「じゃあ俺と……」と何か言いかけた所でジョルジオの付き添い人である兄のケールがやって来てレイヴンとセイランに挨拶をする。



「ケール、態とタイミングを計ったな?」

「何のことですか」


(ジョルジオの奴、エリスに恋したようだな)

(とっても嬉しいわ!ジョルジオとエリスなら素敵よ)


小声で話す王太子夫妻の声は届かずエリスを挟んで何やら攻防戦を始めたケールとジョルジオは「兄さんと踊ろうエリス」「いや、俺と踊ろう」なんて言い合っている。


会場にいる他の者からの視線が痛くて、


「ひとりだけ場違いね」

「可哀想だから声をかけてあげているのよ」

「ケール様と本当に似ていないわね」


なんて無遠慮に聴こえてくる悪口に耳も痛い。



そんな時には必ずやってくるロベリアはまるでと言わんばかりに自慢げかつ大きめの声で声をかけてきた。



「エリス!!この間は御免なさい……誤解があったの……!」

「ロベリア、意外と心が強いのね図太いのね

「ーっ、一人でいると不安だと思って!」


エリスの含みのある言葉に怒りを堪えるようにそう言ったロベリアの視線はチラチラとケールやジョルジオ、恐れ多くもレイヴンまで見ている。


「親友だから、側に居てあげたくって」


優しいでしょ?いい子でしょ?って伺うような表情があからさまで、苛々するセイランと「誰だこれ」なんて少しの興味も無さそうにセイランの髪を撫でているレイヴン。

エリスの背後にそっと付き添うように立ち位置を変えたケールと、ジョルジオ。

何故ジョルジオまでもがそのような行動を取ってくれたかは分からないが、少なくとも妃殿下の良い部下として好印象を持ってくれているのかもしれない。


「私って、可哀想な人を放っておけない性分なの……あっ!皆様がいらっしゃるのに。私ったらついエリスしか見えていなくて申し訳ありませんっ」




(一息でたたみかけたわね。ほんと白々しいんだから)


可哀想だなんて自分で思ったことはない。それに今日は仕事である。

会場の注目を浴びているしこれ以上皆に迷惑をかける訳にはいかないので、どうやってロベリアを撃退しようかと巡らせていると、


意外にも初めに口を開いたのはレイヴンだった。



「ひとりに見えるか?」

「えっ……」

「エリスが一人に見えるか?」

「いや、その……友達が居ないので。殿下方に気を遣わせいるのではないかと思って……」


「エリスには俺達が居る。愛しい妻はエリスを大切にしている」



顔を赤くして、羞恥と怒りで顔を歪ませる。

「エリス!また被害者ぶって男に擦り寄ったのね!!王太子殿下にまで色目を使って……!!!」

そう言ったロベリアについカッとなってトンと両肩を押して一歩前に出た。



「侮辱しないで!殿下と妃殿下はとても素晴らしいご夫婦です。大切にして下さっているだけよ」



自分でも思ったよりも大きな声で驚いたざさらに大きな声でまるで被害者のように訴えかけるロベリア。



「可哀想だと思って声をかけたのに!!」



「私はセイラン様に忠誠を誓っているわ。そんな妃殿下とのご公務がどうして可哀想なの?光栄なことよ」


「そうよ、私のエリスに貴女のような無礼な友人は居ないわ。会場で騒ぎ立てるなら退出なさい」


セイランの威厳のある声が響いてシンとなる。



ケールがエリスを引き寄せて「大丈夫か?」などと聞いている内にスッと前に出てからエリスの手の甲に口付けたジョルジオがまるで嫉妬でもしているかのような拗ねた表情でロベリアに言った。




「レイヴンはセイランが居るし、ケールは兄だ。普通、俺との仲を疑わないかな?」


「団長」
「ジョルジオ」

「「そういう問題じゃない」」


「ふふっ、分かったでしょ?エリスに肖ってこの人達とお近づきになろうなんて浅はかなの」



セイランがケールとジョルジオからエリスを奪うとぎゅっと抱きついて言う。

(あぁ本当にお可愛いらしくて、お優しい人)



「そうだな、セイラン。それにエリスが迷惑をかけているんじゃなくてジョルジオが付き纏っているだけだ」


「え」


突然の飛び火に驚くジョルジオ、きっと秘書として力を借りたくて付き纏っていると言いたかったのだろうと考えるエリスとは違って、騒めく会場に耐えきれず少し笑ってしまったエリスの声にまたぽっと頬を染めたジョルジオに令嬢達の悲痛な叫びが会場に響いた。





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