世界でいちばん邪悪な神聖力の使い方

abang

文字の大きさ
13 / 30

十一、姉弟なんかじゃない


近頃の父上は苛立っている。

姉さんの所為だ。

「シシーリアの所為で妻と離れ離れになった」そう愚痴を溢す姿は見ていられない。あんなにも仲睦まじかった父と母は姉さんの愚行の所為で引き裂かれた。


姉さんは幼い頃から強くて、優しかった。

自分の事より僕や家族だったり友人達ばかりを優先する人で、聖女としての公務は姉さんの多くの時間を奪っていたし正直ずっと心配だった。


だからアイラがアランさんに近づいた時も、幼馴染なはずの皆が突然不自然に姉さんから距離を取った時もまず姉さんじゃなくてアイラを疑った。

アイラは自然と僕も接する事が多くなったけど、何か裏があるんじゃないかってずっそう思いながら付き合いをしていた。

けれど、アイラは特に姉さんの話をした事は無かったし寧ろ身も心もズタボロなのに絶対に誰に虐げられているのか言わなかった。


「アイラは、姉さんの事をどう思う?」


試すつもりで聞いた。

けれど返ってきた返事があまりにも意外で、平凡で拍子抜けした。


「シシーリア様は、とても尊敬できる方だと思うわ」

一瞬、肩を震わせた癖にそう言って心底惚れている男にでも向けるような微笑みで姉さんのことを言うから「あぁ良い子かもしれない」って罪悪感を持った瞬間から何故か姉さんに嫌悪感が湧いた。


(なら、何故姉さんはこんなに優しいアイラを虐げるんだ?)



アイラは姉さんを尊敬する僕の気持ちと、同時に姉弟なのにこんなにも違うという劣等感をよく理解してくれる。


家にいるのが嫌になってアイラが良く居る公園に来てみるとやっぱり彼女は居て「おいでよ」って困ったように笑った。


「せっかく一人の所邪魔してすまない」

「いいの、何かあった?」

「いや……ただこれで合っていたのかと考えると疲れたんだ」

「リズ、私の所為で悩んでる?」

「いやっ、アイラの所為じゃない!元々は姉さんが……」

「辛いのはリズも同じなのに、ごめんなさい」

「いや。アイラに会うだけで何故かスッキリするんだ」


そう言うと恥ずかしそうに笑って「私にはこんな事しかできないけど」ってポンポンと太ももを叩いた。


「膝枕……?」

「リズは忙しくて疲れてるでしょ?貴方は努力家だから」



(あぁやっぱりアイラは僕を見てくれる。姉さんじゃなくて僕を)


「ありがとう……」

「少し休んで、貴方とシシーリア様は違うわ。貴方だけの魅力があるわリズ……」


そう言って影が出来て、額にアイラの柔らかい唇が触れた。


顔が赤くなっているのが自分でも分かった。


けれど、ドクドクと音を立てる心臓とは裏腹に頭の中は冷静で

(姉さんが小さい頃よくしてくれたな)

ふと、姉さんとの幼い頃の記憶が過ぎって胸が苦しくなった。


アイラの手は心地よいけど、姉さんの手じゃない。

声だって、唇の感触にだってドキドキするけど

姉さんがしてくれたように不安がすっと消えて無くなるような感覚はしないなあとまで考えてゾクリとした。


「アイラ、僕はまだ姉さんを嫌えない」

「うん、私の為に誰かを憎まないで」

「君は本当に優しいね」

「リズが大切だからよ」



こうして過ごす時間は時たまアイラが自分だけのものになったような錯覚をさせる。

彼女の空色の瞳が僕を写し込んで、空なんかよりずっと綺麗だとさえ思った。




「大丈夫よリズ、私がずっと傍にいるわ」

「アイラ……」

「リズだけ特別、秘密よ?」

そう言って小鳥がエサをつつくようなキスを何度かしたアイラ以外の事は一瞬でどうでも良くなっていくような気がした。

(僕がアイラを守らなきゃ)

なぜかドクドクと音を立てる心臓はさっきと違う音を立てていた。

まるで不吉な事を察知しているように。


(姉さん……なんで、姉さんが浮かぶんだ)


感想 6

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど

ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。 でも私は石の聖女。 石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。 幼馴染の従者も一緒だし。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

ゴースト聖女は今日までです〜お父様お義母さま、そして偽聖女の妹様、さようなら。私は魔神の妻になります〜

嘉神かろ
恋愛
 魔神を封じる一族の娘として幸せに暮していたアリシアの生活は、母が死に、継母が妹を産んだことで一変する。  妹は聖女と呼ばれ、もてはやされる一方で、アリシアは周囲に気付かれないよう、妹の影となって魔神の眷属を屠りつづける。  これから先も続くと思われたこの、妹に功績を譲る生活は、魔神の封印を補強する封魔の神儀をきっかけに思いもよらなかった方へ動き出す。

私は善意に殺された・完結

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

結婚するので姉様は出ていってもらえますか?

基本二度寝
恋愛
聖女の誕生に国全体が沸き立った。 気を良くした国王は貴族に前祝いと様々な物を与えた。 そして底辺貴族の我が男爵家にも贈り物を下さった。 家族で仲良く住むようにと賜ったのは古い神殿を改装した石造りの屋敷は小さな城のようでもあった。 そして妹の婚約まで決まった。 特別仲が悪いと思っていなかった妹から向けられた言葉は。 ※番外編追加するかもしれません。しないかもしれません。 ※えろが追加される場合はr−18に変更します。