62 / 224
第3章 大賢者の遺産
第30話 吹っ切れた
しおりを挟む
毎晩のように新たな魔道具を作り始めると、地球の時のボッチでコツコツとシステム開発していたことを思い出して不安に思うのだった。
しかし、予想以上に物造りが楽しくて、止まらないのも事実だ。
訓練施設の一部を高濃度魔力域にして利用するためには、鑑定の魔道具が必要になる。書籍検索すると多くの情報が出てきたが、鑑定スキルについての情報が多かった。
しかし、大賢者も同じように鑑定の魔道具を作ろうと試行錯誤した日記のようなものまで見つかった。
大賢者はラノベにあるような、ギルドカードに本人のステータスを表示できるように苦労したようだが、その為にはギルドカードをミスリルなどの魔法金属で作らないと、鑑定した個人情報を記録して、鑑定結果を表示し、銀行のような機能を持たせられなかったようだ。
ギルドカードを広める為に安価な素材で作った為、個人の魔力紋を記載して、本人の確認が出来るようにしただけで、止めてしまったらしい。
銀行のようなお金を預かる機能は、各ギルドに高価な魔道具を設置することで、本人確認と合わせることで実現したようだが、現在も使われているのかはギルドカードを持っていないので、別途確認することにした。
しかし、大賢者が試行錯誤した内容は非常に面白い内容も多かった。
それらを使って、訓練施設に置く鑑定の魔道具を作り始める。
試作品はあまりにも簡単に完成してしまった!
スライム溶液をアクリル板のように手の大きさで作り、鑑定ではなくステータスの魔法陣をアクリル板に魔法溶液で転写して、その上にスライム溶液で密封するようにコーティングすれば完成である。
試しに使ってみると、問題なくステータスを確認できるようになった。
折角なので大賢者の試行錯誤した内容を利用して魔石に書き込み、手の平より一回り大きいブロックに、スライム溶液を浸透させてから魔石を埋め込み、ブロックに水平になるように、スライム板を取り付けて完成させる。
鑑定スキルはレベルが上がると表示できる情報が増えるので、それらを表示したり非表示にしたりできるようにした。
さらに作成者や管理者、登録者や所属などでも出来る範囲を変更できるようにし、機能の停止も出来るようにした。
それ以外にも自分だけ見えるだけではなく、人に見せることも出来るようにする。
他にも簡単に持ち運べるように、木とスライム板で作ったバージョンを作り、これはデフォルトでは自分ではなく、相手に見せる物にして、検問とかに利用できるように表示内容も調整する。
あと盗まれては困るので、管理者が起動しても6時間で停止するようにする。さらに分解しようと中を開くと、中の魔石が自壊して解析できないようにもしておく。
完成させるとレシピ登録して、レシピで10個ほど作っておいた。
それから大賢者の書籍を検索して、収納について調べると、収納の魔道具についても見つかったので、これは絶対に必要だと考えて作成する。
ミスリルに魔法溶液を浸透させると、それ自体が魔石と同じ効果になる事が、大賢者の書籍には書かれていたので、錬金術でリングとペンダントトップを作成して、魔法溶液を浸透させる。
完成したそれらに魔石書込で効果を付与すると、魔石と同じように問題なく完成する。
リングには馬車2台分、約1トラム(トン)の収納を問題なく付与できた。もちろん状態保存や個人認証、サイズ調整なども付けてある。
やっぱり収納は異世界転生の定番でしょ!
それから毎晩のように様々な魔道具を作って行く。調理器具から生活を便利にする物まで、地球の生活を再現できるように作りまくるのであった
◇ ◇ ◇ ◇
そんな毎晩のように色々作っていたある日。ハロルド様から密偵の話を聞いたときに、作っていた魔道具が役に立つかもしれないと思い出し、人に見せて自慢したかったから、ついドヤ顔で披露した。
「これはですねぇ」
そこまで話してから、使いながら説明しようと思い直す。
「使いながら説明しましょうか。誰か自分の情報をハロルド様に見られて大丈夫な人は居ますか?」
そう聞くとクレアさんが名乗りを上げる。
「閣下に隠すようなことは有りません。これは鑑定の魔道具なのですか?」
さすがクレアさん、潔いな~。
「鑑定の魔道具とは違います。名前や年齢、国や所属などが相手に表示されるものです。それに殺人や盗賊、密偵など、犯罪に関する称号も表示されます。
これは門などの検問に使えば便利かと思って作った魔道具です」
あれっ、反応がない!?
自慢気に話したのがダメだったのだろうか?
「アタル、これがどんなに非常識な魔道具か分かっておるのか?」
あぁ~、やっぱりそうなるよねぇ。
だから見せるタイミングを考えていたのだけど、このタイミングでも不味いのかぁ。
「ハロルド様、いい加減慣れて下さい。便利なら良いじゃないですかぁ。これがあれば密偵の確認が出来るのですよ?」
あきれ顔で私を見るハロルド様。しかし、気にしていたら快適で安全な生活は出来ない!
何となく、吹っ切れた気がするぅ。
「お主と言う奴は……。まあ良い、これがあれば密偵の事が分かるのじゃな?」
「とりあえずクレアさんはそこに手を置いてください」
クレアさんは躊躇することなく手を置いた。
「ブフォッ!」
「な、なんじゃ、クレアの名前とか歳とか出ているだけじゃろ?」
表示された内容を見て、噴き出してしまった。
ハロルド様にはたぶん名前や年齢、性別、国、所属だけ見えていると思うが、作成者の俺にはすべての称号が見えているのだ……。
なんで称号に『アタルに一生を捧げる者』なんてあるんだよぉ!
「す、すみません。それより密偵だと、密偵と付く称号が表示されるだけでなく、偽名なら名前の後ろに偽名が表示され、国や所属も本来の所属が後ろに表示されるはずです」
ハロルド様は更に質問をする。
「生命力や魔力量は出ないのか。それにスキルも出て欲しいのじゃが?」
その気持ちは分かるが……。
「これは検問に使う事を想定しているので、そのような情報は表示されません。それは本人の同意なしで見るのは良くないと思いまして」
「それは、そうなのじゃが、儂は自分のステータスを見てみたいのじゃがのぉ」
残念そうにハロルド様は呟く。
「それは、訓練施設に設置してますよ」
「なんじゃとぉ、早速確認しに行くぞ!」
いやいや、それはダメでしょ。
「先にこれの使い方を覚えてください」
そう言うと、ハロルド様は渋々納得してくれた。
ハロルド様を管理者として登録して、管理者の登録方法などを説明する。
「これが説明書です。運用はそちらで考えてくださいね」
ハロルド様は驚いた顔をして文句を言う。
「それなら先にそれをくれれば、良かったではないかのぅ」
まあ、それは言えるけど、訓練施設に行くのは面倒臭かった。
「これは一人では持って帰れぬのぉ」
うん、10個渡したからそうなるよねぇ。
「じゃこれを使って下さい」
そう言って収納のリングを渡す。
「なんじゃこれは?」
「先にそのリング、指輪に魔力を流してください」
ハロルド様は興味深げに指輪を手に乗せて見ていたが、魔力を流すと青白く指輪が光る。
「それは収納の指輪です。これが説明書です」
ハロルド様が驚くと思っていたが、驚いたのは周りだけで、ハロルド様は少し疲れた顔で呆れかえっていた。
「お主は何でもアリじゃのぅ」
気にしない、気にしない、一休み、…一休みはしない!
更にリングを4個出してハロルド様に渡す。
「一つはレベッカ夫人に渡してください。後はお任せします」
溜息を付かないでぇーーー!
「ラナさん、指輪とペンダント、どちらが良いですか?」
両方の手に指輪とペンダントを出して見せながら聞く。
「わ、私がこんな高価な物を……」
ラナさんが躊躇しているが、指輪の方に視線が向いている。
「ラナさんには色々やって貰いますので、使って貰う方が助かります」
そう話すと、おずおずと指輪を手に取った。魔力を流すように言い、説明書を渡したが、指輪を見つめて聞いているか心配になる。
ふと気が付くと、クレアさんが凄い表情で私の事を見つめていた。
クレアさんも欲しいのかなぁ?
色々お世話になっているし、これからもお世話になるだろうから、指輪を上げても良いと思う。
もう一つ指輪を出してクレアさんに渡す。
「これからも宜しくお願いします」
普通に挨拶のつもりで言ったのだが……。
「は、はい、一生大切にします」
いやいや、大げさだから。
「アタルよ、お主も罪作りの男じゃのぅ」
後日、この世界の貴族や金持ちは、妻を娶る時に指輪を送る習わしがあることを知る。
しかし、予想以上に物造りが楽しくて、止まらないのも事実だ。
訓練施設の一部を高濃度魔力域にして利用するためには、鑑定の魔道具が必要になる。書籍検索すると多くの情報が出てきたが、鑑定スキルについての情報が多かった。
しかし、大賢者も同じように鑑定の魔道具を作ろうと試行錯誤した日記のようなものまで見つかった。
大賢者はラノベにあるような、ギルドカードに本人のステータスを表示できるように苦労したようだが、その為にはギルドカードをミスリルなどの魔法金属で作らないと、鑑定した個人情報を記録して、鑑定結果を表示し、銀行のような機能を持たせられなかったようだ。
ギルドカードを広める為に安価な素材で作った為、個人の魔力紋を記載して、本人の確認が出来るようにしただけで、止めてしまったらしい。
銀行のようなお金を預かる機能は、各ギルドに高価な魔道具を設置することで、本人確認と合わせることで実現したようだが、現在も使われているのかはギルドカードを持っていないので、別途確認することにした。
しかし、大賢者が試行錯誤した内容は非常に面白い内容も多かった。
それらを使って、訓練施設に置く鑑定の魔道具を作り始める。
試作品はあまりにも簡単に完成してしまった!
スライム溶液をアクリル板のように手の大きさで作り、鑑定ではなくステータスの魔法陣をアクリル板に魔法溶液で転写して、その上にスライム溶液で密封するようにコーティングすれば完成である。
試しに使ってみると、問題なくステータスを確認できるようになった。
折角なので大賢者の試行錯誤した内容を利用して魔石に書き込み、手の平より一回り大きいブロックに、スライム溶液を浸透させてから魔石を埋め込み、ブロックに水平になるように、スライム板を取り付けて完成させる。
鑑定スキルはレベルが上がると表示できる情報が増えるので、それらを表示したり非表示にしたりできるようにした。
さらに作成者や管理者、登録者や所属などでも出来る範囲を変更できるようにし、機能の停止も出来るようにした。
それ以外にも自分だけ見えるだけではなく、人に見せることも出来るようにする。
他にも簡単に持ち運べるように、木とスライム板で作ったバージョンを作り、これはデフォルトでは自分ではなく、相手に見せる物にして、検問とかに利用できるように表示内容も調整する。
あと盗まれては困るので、管理者が起動しても6時間で停止するようにする。さらに分解しようと中を開くと、中の魔石が自壊して解析できないようにもしておく。
完成させるとレシピ登録して、レシピで10個ほど作っておいた。
それから大賢者の書籍を検索して、収納について調べると、収納の魔道具についても見つかったので、これは絶対に必要だと考えて作成する。
ミスリルに魔法溶液を浸透させると、それ自体が魔石と同じ効果になる事が、大賢者の書籍には書かれていたので、錬金術でリングとペンダントトップを作成して、魔法溶液を浸透させる。
完成したそれらに魔石書込で効果を付与すると、魔石と同じように問題なく完成する。
リングには馬車2台分、約1トラム(トン)の収納を問題なく付与できた。もちろん状態保存や個人認証、サイズ調整なども付けてある。
やっぱり収納は異世界転生の定番でしょ!
それから毎晩のように様々な魔道具を作って行く。調理器具から生活を便利にする物まで、地球の生活を再現できるように作りまくるのであった
◇ ◇ ◇ ◇
そんな毎晩のように色々作っていたある日。ハロルド様から密偵の話を聞いたときに、作っていた魔道具が役に立つかもしれないと思い出し、人に見せて自慢したかったから、ついドヤ顔で披露した。
「これはですねぇ」
そこまで話してから、使いながら説明しようと思い直す。
「使いながら説明しましょうか。誰か自分の情報をハロルド様に見られて大丈夫な人は居ますか?」
そう聞くとクレアさんが名乗りを上げる。
「閣下に隠すようなことは有りません。これは鑑定の魔道具なのですか?」
さすがクレアさん、潔いな~。
「鑑定の魔道具とは違います。名前や年齢、国や所属などが相手に表示されるものです。それに殺人や盗賊、密偵など、犯罪に関する称号も表示されます。
これは門などの検問に使えば便利かと思って作った魔道具です」
あれっ、反応がない!?
自慢気に話したのがダメだったのだろうか?
「アタル、これがどんなに非常識な魔道具か分かっておるのか?」
あぁ~、やっぱりそうなるよねぇ。
だから見せるタイミングを考えていたのだけど、このタイミングでも不味いのかぁ。
「ハロルド様、いい加減慣れて下さい。便利なら良いじゃないですかぁ。これがあれば密偵の確認が出来るのですよ?」
あきれ顔で私を見るハロルド様。しかし、気にしていたら快適で安全な生活は出来ない!
何となく、吹っ切れた気がするぅ。
「お主と言う奴は……。まあ良い、これがあれば密偵の事が分かるのじゃな?」
「とりあえずクレアさんはそこに手を置いてください」
クレアさんは躊躇することなく手を置いた。
「ブフォッ!」
「な、なんじゃ、クレアの名前とか歳とか出ているだけじゃろ?」
表示された内容を見て、噴き出してしまった。
ハロルド様にはたぶん名前や年齢、性別、国、所属だけ見えていると思うが、作成者の俺にはすべての称号が見えているのだ……。
なんで称号に『アタルに一生を捧げる者』なんてあるんだよぉ!
「す、すみません。それより密偵だと、密偵と付く称号が表示されるだけでなく、偽名なら名前の後ろに偽名が表示され、国や所属も本来の所属が後ろに表示されるはずです」
ハロルド様は更に質問をする。
「生命力や魔力量は出ないのか。それにスキルも出て欲しいのじゃが?」
その気持ちは分かるが……。
「これは検問に使う事を想定しているので、そのような情報は表示されません。それは本人の同意なしで見るのは良くないと思いまして」
「それは、そうなのじゃが、儂は自分のステータスを見てみたいのじゃがのぉ」
残念そうにハロルド様は呟く。
「それは、訓練施設に設置してますよ」
「なんじゃとぉ、早速確認しに行くぞ!」
いやいや、それはダメでしょ。
「先にこれの使い方を覚えてください」
そう言うと、ハロルド様は渋々納得してくれた。
ハロルド様を管理者として登録して、管理者の登録方法などを説明する。
「これが説明書です。運用はそちらで考えてくださいね」
ハロルド様は驚いた顔をして文句を言う。
「それなら先にそれをくれれば、良かったではないかのぅ」
まあ、それは言えるけど、訓練施設に行くのは面倒臭かった。
「これは一人では持って帰れぬのぉ」
うん、10個渡したからそうなるよねぇ。
「じゃこれを使って下さい」
そう言って収納のリングを渡す。
「なんじゃこれは?」
「先にそのリング、指輪に魔力を流してください」
ハロルド様は興味深げに指輪を手に乗せて見ていたが、魔力を流すと青白く指輪が光る。
「それは収納の指輪です。これが説明書です」
ハロルド様が驚くと思っていたが、驚いたのは周りだけで、ハロルド様は少し疲れた顔で呆れかえっていた。
「お主は何でもアリじゃのぅ」
気にしない、気にしない、一休み、…一休みはしない!
更にリングを4個出してハロルド様に渡す。
「一つはレベッカ夫人に渡してください。後はお任せします」
溜息を付かないでぇーーー!
「ラナさん、指輪とペンダント、どちらが良いですか?」
両方の手に指輪とペンダントを出して見せながら聞く。
「わ、私がこんな高価な物を……」
ラナさんが躊躇しているが、指輪の方に視線が向いている。
「ラナさんには色々やって貰いますので、使って貰う方が助かります」
そう話すと、おずおずと指輪を手に取った。魔力を流すように言い、説明書を渡したが、指輪を見つめて聞いているか心配になる。
ふと気が付くと、クレアさんが凄い表情で私の事を見つめていた。
クレアさんも欲しいのかなぁ?
色々お世話になっているし、これからもお世話になるだろうから、指輪を上げても良いと思う。
もう一つ指輪を出してクレアさんに渡す。
「これからも宜しくお願いします」
普通に挨拶のつもりで言ったのだが……。
「は、はい、一生大切にします」
いやいや、大げさだから。
「アタルよ、お主も罪作りの男じゃのぅ」
後日、この世界の貴族や金持ちは、妻を娶る時に指輪を送る習わしがあることを知る。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
2,145
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる