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番外編
若妻、初めての嫉妬
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「はぁ、素敵……旦那様ってどうしてあんなにかっこいいのかな……」
わたしは、練兵場で戦っている旦那様……この国境砦の総責任者である、レオンハルト・ローゼンベルク将軍を見守りつつ、小さな声で呟いた。
旦那様のあまりの素敵さに、私は声をかけることも出来ずに、柱にもたれかかってぼんやりとその姿に見とれた。
背の高い旦那様が、長い軍服の裾を翻して槍を捌いているお姿は、さながら氷の軍神のようだ。
旦那様は、ほかのたくましい兵隊さんに比べればやや細身に見える。
けれど、その分動きが俊敏で、それに、とても力がお強い。
旦那様の一撃で吹っ飛んだ部下の方が、頭を掻きながら起き上がった。
「訓練でしょ! 手加減してくださいよ、閣下!」
部下の方の愚痴に、旦那様が厳しい声で仰った。
「訓練で手を抜いてどうする! 次!」
旦那様はああやって毎週一度は、ご自分が練兵場に立たれる。一緒に戦う覚悟は、一緒に汗を流すことでしか示せない、というのが旦那様の持論なのだ。
旦那様の端正な横顔を柱の陰から見守りつつ、私はうっとりとため息を付いた。
王宮で、将軍用の軍装をした旦那様にむらがって、きゃあきゃあ騒いでいるお嬢様たちは、この一番かっこいい旦那様の姿を見られないのだ。
そう思うと、旦那様を独り占めできて嬉しいようなむず痒い気分になる。
嫌だな、わたし、ちょっと意地悪かもしれない……。どうしてこんな意地悪なことを考えちゃうんだろう? だって、女の子たちが、旦那様を好きになってしまうのは当たり前だもの。カルター王国の守護神と呼ばれる、氷雪の大地の化身のような素敵な方なんだから。
憧れない女の子なんか居ないわけがないよね。事実、王女時代のわたしも、きらめく美貌の将軍様に片思いをして、ひっそり旦那様を見つめ続けてきたわけだから。
「ああ、リーザ、そこに居たのか」
旦那様が満面の笑顔で私を振り返る。兵隊さんたちも、笑顔でわたしに手を降ってくれた。
「リーザ、昼飯はまだだろう。これからみんなで食おうか」
「あ、は、はい!」
わたしは慌てて笑顔を作り、皆様に深々と頭を下げた。
「お昼、わたしもご一緒させてくださいませ」
わたしの言葉に、兵隊さんの一人が明るい声で言う。
「奥様なら大歓迎ですよ! 今日の定食は鶏肉らしいですよ! さ、行きましょ!」
うう、何だかモヤモヤするなぁ……。わたし、いつから旦那様を独り占めしていい気になるような、意地悪な女になってしまったのかしら。
ところで、ローゼンベルク国境砦の旦那様のお部屋はとても質素だ。
砦がとっても広いのでお部屋も広いけれど、贅沢なものは何もない。
わたしと旦那様は、かれこれ半年近く、このお部屋で暮らしている。ローゼンベルク侯爵家のお屋敷は別の場所にあるのだけど、砦のほうが安全だから、という理由で、わたしも此処に置いて頂いているのだ。国境の情勢が落ち着くまでは、お屋敷には戻れない。
旦那様は、わたしまで砦で暮らさねばならないことを、申し訳ないとおっしゃる。
この前なんて、もう少し情勢が落ち着いたら、リーザ一人だけでも屋敷に帰してあげたい、なんて言われた。
たしかに旦那様の私邸はとてもくつろげる場所だけれど、わたしは旦那様のお傍がいい。この砦は女性が暮らすには不便だし、市場からも繁華街からも遠くて、買い出しに行くのも一苦労の場所だけれど、お傍がいいのだ……。
そう思いながら、わたしは旦那様の寝台に潜り込んだ。
寝台は二つ準備してもらっているのだが、一緒に眠っている。
はじめのうちは、夜遅くに戻られた旦那様が『リーザを起こしては気の毒だから』と別の寝台でお休みになっていたけれど、それはお願いしてやめてもらった。
どんな遅い時間であっても、お部屋に戻ってきたら起こして欲しい。それにわたしは、旦那様と同じ寝台で寝たいのだと申し上げた。
そう申し上げた時、旦那様は何故か耳まで真っ赤になって「な、な、ならそうしようか」とおっしゃってくださったので、ホッとした。夫婦なのに別々に寝るなんて寂しすぎる。
「旦那様、今日も遅いのかしら……」
そう呟きながら、寝台の隅っこで小さくなってわたしは目を閉じた。
「ん……」
「ああ、すまんな、起こして。ただいま」
わたしの傍らに潜り込みながら、旦那様が小さな声でささやく。わたしはあわてて擦り、寝台に起き上がって旦那様に頭を下げた。
「おかえりなさいませ。今日もお仕事、お疲れ様でございます」
「起きなくていい。さ、もう寝よう」
旦那様は小さく笑って、そのまま横になってしまわれた。
今日もお疲れなんだろうな。
わたしはちんまりと正座をしたまま、旦那様の端正な顔をじっと見つめた。お昼は嫌なことを考えてしまったな、って思い出しながら。
本当にわたしは、嫌な女だ。『旦那様はわたしのものなんだから。旦那様の奥さんはわたしなんだから。わたしは特別なんだから』なんて考えてしまって。
でも、やっぱりわたし、どう自分に言い訳しても、とっても旦那様が好き。旦那様を独り占めしたい。わたしなんかが独り占め出来る方じゃないのはわかってるけど……旦那様が他の女の子に囲まれて、素敵、カッコいい、なんてもてはやされている姿を想像するだけで、苦々しい気持ちになる。
「どうした」
不意に、眠ろうとしていた旦那様がぱっちりと目を開けた。氷のような青い目で見つめられ、わたしは慌てて首を振った。
自分が意地悪で、独占欲の強い女だなんて、愛する旦那様に知られなくない。
「なんでもありません、おやすみなさいませ……」
「なんでもないって顔じゃないぞ」
旦那様がそう言って、不意に起き上がり、私にくちづけをしてくださった。
手首をやわらかく捉えられ、私は先程までのモヤモヤした気持ちを一瞬忘れて、旦那様のぬくもりに身を任せた。
「リーザ、もしかして、私が戻るのを待っててくれたのかな」
「え、え、と……」
それは、そのとおりだ。私は耳が熱くなるのを感じながら、旦那様の言葉に頷いた。
「はい」
「そうか……明日は朝会議がないから、少しは寝坊できるな」
旦那様がそう言って、私を広い胸にぎゅっと抱きしめてくださった。
お風呂あがりの旦那様の香りを感じながら、私も手を伸ばしてその背中にしがみつく。
「可愛いな、お前は。どうしてこんなに可愛いんだ……」
旦那様の長い指が、私の寝間着の襟元に忍び込む。私は自ら旦那様にくちづけし、旦那様の寝間着の帯に手をかけた。
「なんだ、今日は脱がしてくれるのか、至れり尽くせりだな」
機嫌よく旦那様がおっしゃるので、私はうつむいたまま、はい、と答えた。
部屋が暗くてよかった。わたしの冴えない表情を悟られずにすんでよかった。
でも、身体を重ねたら、私が嫌な事を考えているって、旦那様は気づいてしまうかな……。
「あ……あ……やだぁ、っ……は、っ」
私は枕を必死でつかみ、寝台にうつ伏せにされたまま必死に声を噛み殺す。
「やっぱり、お前の背中はほんとうに美しいな」
旦那様がわたしの耳元でささやく。その拍子にずぶ、と旦那様のものが体の奥深くに沈み込み、わたしは思わず声を漏らして顔を上げた。
「ひ、ぁ、あ、ああ……っ、そこ、深い……っ」
旦那様が、わたしの耳と首筋に、口づけの雨を降らせる。ゆっくりとわたしの内壁を行き来しながら、旦那様がわたしの胸と寝台の間に、手を差し込んできた。乳房に触れられ、わたしの体がビクンと揺れる。
「ずいぶん尖ってきているな」
「や……ッ」
「気持ちいいか?」
わたしの乳嘴をゆっくりと指先で責め立てながら、少年のような無邪気な口調で旦那様が囁きかけた。旦那様の吐息が、いつになく熱い。まるで興奮が伝わってくるようだ……。
わたしは敷布を握りしめたまま、唇を噛んで頷いた。
「っ、は、い……」
旦那様に抱かれるのは、本当に、気持ちがいい……。
肌と肌が触れあうたびに、わたしの体が溶けていくような気がする。
背中越しに旦那様の逞しい体を感じながら、わたしは手を伸ばして、旦那様の手の甲に自分の指を重ねた。
「痛くないか」
私は、旦那様の昂ぶるものを体の奥に咥え込んだまま、夢中で首をふる。
痛くない。ううん、痛くてもいい。もっとめちゃくちゃに、乱暴にして下さっても構わない。その低い甘い声で、もっと淫らなことをささやいてほしい。
旦那様が、もっと私に夢中になってくれないかな。
だってわたし、旦那様を独占したいんだもの……。
どんなに性格の悪い女だと思われても、旦那様を自分だけの旦那様にしたいんだもの。
「すまん、動くぞ」
旦那様がそう言って、私の腰を軽々と持ち上げ、ゆっくりと私の体を突き上げ始める。
やっぱり旦那様が好き。
いじわるなことばかり考えてしまう自分が悲しいけど、だれにも渡したくない……。
「あ、ああっ、は、ぁ……だんな……さま……すき……」
私は、ボロボロ涙を流しながら、同じ言葉を繰り返した。
旦那様が好き。旦那様が好きなの。結婚して半年も経つのに、どんどん好きになって怖いの。
それと同時に、醜い嫉妬心に気付かされて、苦しいの……。
「ん、どうした、リーザ」
いつも、果てる前に、私が『抱きしめて欲しい』とねだる事を思い出したのか、旦那様が背後から突き上げる動きを止めて、優しい声で仰った。
「この姿勢は、嫌か」
わたしは慌てて首を振る。勝手な思い込みで涙を流している顔なんて見られたら、心配症の旦那様がどんな誤解をなさるかわからない。
「こ、これで、いい、です……」
けれど、急に尋ねられたので、わたしはしゃくりあげてしまった。旦那様がぎょっとしたようにわたしの体から離れ、うつ伏せの私をくるりとひっくり返した。
「どうした、やっぱり痛いのか、苦しいのか、リーザ、何を泣いている!」
「な、なんでも……な……」
私は慌てて顔を隠した。だがその手も、旦那様にひょいと取り除かれてしまった。
「言いなさい」
「い、いや……言いたく、ないです」
旦那様が見る見る険しい顔になり、低い声でボソリと仰った。
「抱かれるのが嫌なら、嫌だといえばいいのに。我慢してまで、しなくていい」
旦那様の美しい氷色の眼の奥に傷ついた光が浮かぶ。
私はぎょっとして、跳ね起きた。
どうしよう。誤解だ。私は旦那様を拒んでなど居ないのに……。誤解させて、旦那様を傷つけてしまうなんて。
「違うの」
「何が違うんだ」
旦那様の声は暗かった。
わたしは震えながら、首を左右に振った。
ごめんなさい、違うの、旦那様。どうかそんな誤解をしないで欲しい。世界で一番愛している方にこんな顔をさせてしまうなんて、わたしは何をしているの。どうしてこんな掛け違えが起きてしまったのだろう?
「そ、それは、その、わ、わたし、わたし……いじわるなことを考えてしまって」
わたしの言葉に、旦那様が片方の眉を上げる。
「意地悪……なこと?」
「は、はい。わたし、だ、旦那様を、独り占めしたくて……だ、だんなさ、ま、を……う、う」
気がはやって、うまく説明できない。
それに、言葉にしようとしたら、また涙が止まらなくなってきた。
わたしの葛藤など当然ご存じない旦那様は、あぜんとした表情でわたしのことを見つめている。
「だ、だんなさまがかっこいいから……やきもち、や、やきもち……わぁぁぁ……!」
わたしは、どうしようもなくなって、旦那様の前で突っ伏して泣きだしてしまった。
王女らしくないから改めろ、と侍女たちに何度も叱られた妙な泣き方を抑えることすらできず、わんわん泣きながら枕を抱きしめる。
「やきもち、焼いて、しまって……だって、他の女の子に、旦那様、取られたくない……わあぁ……」
「リーザ……」
「わああああ! ご、ご、ごめんなざいぃぃ……」
持ち上げた枕にしがみつき、わたしは盛大に泣きじゃくりながら旦那様に告げた。
「嫉妬深くて、意地悪なんです、わたし。旦那様を独り占めできるのはわたしだけなんだって気持ちが、消せなくて……旦那様は、本来は皆の旦那様なのに、独り占めしたくて」
「ま、まて、お前は何を言っている」
旦那様が慌てたようにそう仰って、わたしの両頬を挟んだ。
「勝手に私を、どこぞの誰かとのの共有物にするな」
「でも、み、みんな、旦那様に憧れて、う、う……なのに、独り占めなんて、わたし、性格がゆがんでる……」
「あのな、リーザ」
旦那様がわたしの腕から枕を取り上げ、ポイとその辺に放り投げた。それから、私を冷え始めた胸にぎゅっと抱き寄せてくださった。
「お前が突拍子もない事を考えるのは知っていたが……驚いたぞ」
「だ、だんなさま……ごめんなさい、こんなふうに考えるの、苦しくて……」
私を抱きしめたまま、旦那様がぷっと吹き出す。
旦那様が厚い胸を震わせて笑い、体を離して、明るい笑顔でわたしの顔をのぞき込んだ。
「そういう意味で言っているなら、わたしも同じだ。いや、わたしのほうが酷いぞ」
「何がですか……?」
「私はお前を、この司令室に閉じ込めておこうかな、と思うことすらある」
「えっ」
わたしは仰天して、旦那様の顔を見上げた。
閉じ込めるなんて。何故そんなことをおっしゃるのだろう。
そもそも、わたしだって少しは仕事があるのに。朝一番に砦の隅にある森でキノコを採って、それから、国境河川のレーエ河でお魚を釣って、旦那様のお昼ごはんを整えねばならない。午後は日が暮れるまで融雪装置の開発と修繕に忙しいのだ。
わたしのことを気に入ってくださった漁師のおじさんに、砦の皆様用のお魚を貰いに行く用事も頻繁に発生する。閉じ込められたら、国境砦の為の労働に励めないではないか。やっと少しずつ、皆様のお役に立てるようになってきたのに……。
「あの……閉じ込められたら困ります」
わたしの答えに、旦那様がおかしくてたまらないというように、明るい笑い声を立てた。
「はは、全くお前は……」
いいながら、旦那様が投げ捨てた枕をひょいと拾い、元の位置に戻した。そのまま、わたしの体を寝台に組み敷く。
再び熱を帯び始めた旦那様の体におどろき、わたしは腕の中から抜けだそうともがいた。
「リーザ」
旦那様の声が、私の耳元でささやく。
「私もお前を独占したい。お前も私を独占したい。お互い様だと思わないか」
独占……?
そのことばをきいた瞬間、私の全身にかっと甘い熱が走り抜けた。
旦那様も私を独占なさりたいの?
もしかして、同じお気持ちで居てくださるの……?
驚いて、私は旦那様を見つめた。
「……あんまり見るな、照れるだろう」
旦那様が耳まで赤くなったまま、私の唇に唇を押しつけてくる。そのまま、ゆっくりと差し込まれた舌先に、私も舌を絡め返した。
「愛してるよ、リーザ、月なみなセリフしか思いつかんが、私はお前を愛している」
「だ、旦那様……」
「だからお前だけいてくれればいい。他の女はいらない。よその誰かと共有するなんて恐ろしいことは、二度と口にしてくれるな。私はお前に独り占めされていればそれでいいんだ」
再び私の視界が涙で歪み始める。
嬉しかった。私の嫉妬深い気持ちを旦那様が肯定してくださるなんて。
旦那様が、私に独占されたいと仰ってくださるなんて……。
夢を見るような気持ちで、私は再び旦那様と舌先を絡め合う。そのまま、私の脚に旦那様の手が掛けられた。
「またお前の、かわいい声を聞かせてくれ」
「あ……っ……」
旦那様が私の胸の尖端に軽く歯を立てる。それだけで、私の体の奥からとろりと蜜が溢れてきた。恥ずかしくて足を閉じたいのに、閉じさせてもらえない……。
「まったく……お前がかわいすぎて、どうにかなりそうだ」
旦那様の昂ったものが、私の花唇の中央に押し当てられる。
私は息を呑み、かすかに身を捩った。触れられるだけで、体が勝手に動いてしまって、恥ずかしくて仕方がないからだ。
「さっきの続きをしていいかな」
囁かれた瞬間、体の芯がずくりと疼いた。私は応える代わりに旦那様の首に手を回し、脚をたくましい体に絡めて、自分から体を開いた。
「……っ、だんなさ、ま、来て……」
くちゅくちゅと音を立てて旦那様のものを咀嚼しながら、私は体を弓なりに反らせた。
「ああ、っ、あ、あああ……っ」
旦那様の背中が、だんだんしっとりと汗ばんできた。私は奥深くまで旦那様に貫かれ、抑えきれない喘ぎ声を上げながら、その体にしがみついた。
「やぁ、だんな、さまの、熱い、ぃ……ッ」
「あまり、興奮させるな、リーザ」
耳や頬にくちづけをされるたびに、私の身体に新しい快感が走り抜ける。
恥ずかしいくらい響いている湿った音が、更に私を煽り立てる。
「ふぁ、あああ……っ、ああっ」
硬くなった胸の先端が、旦那様の胸板で擦られるたびに、体の芯が甘く疼く。
「っ、ぁ……旦那さ、まぁ……」
私は旦那様の肩口に額をこすりつけ、乱れる呼吸を必死で整えながら、旦那様に言った。
「すき……旦那様が、ほんと、に、すき……」
旦那様のものが、不意に私の中で鉄のように硬くなる。
「……すまん、リーザ、抜いたほうがいいか」
旦那様が苦しげにおっしゃる。
私は首を振り、旦那様の腰に、一層強く脚を絡めた。
このまま離れないで、わたしの中で果てて欲しい。
「や……だ……、全部、欲しい……」
旦那様の熱いほとばしりを受け、私の体の奥がビクビクと震える。私は頭のなかを真っ白にしたまま、旦那様の体に改めて抱きつき直した。
暫くの間、わたしたちは言葉もなく抱擁し合う。
旦那様はずいぶんと汗をかいている。でも、嫌じゃない。
むしろ、旦那様の汗でもっと濡れたいくらいだな、って思う。
私は旦那様に寄り添い、満たされた気持ちで目を閉じた。
嫉妬深いのはよくないことだと思うけれど……わたしやっぱり、旦那様を独り占めしたい。それに、独り占めされたい。
そう思いながら、わたしはあっという間に、眠りに落ちていった。
それで翌朝、旦那様を寝坊させてしまって、わたしは再び、心から反省した……。
わたしは、練兵場で戦っている旦那様……この国境砦の総責任者である、レオンハルト・ローゼンベルク将軍を見守りつつ、小さな声で呟いた。
旦那様のあまりの素敵さに、私は声をかけることも出来ずに、柱にもたれかかってぼんやりとその姿に見とれた。
背の高い旦那様が、長い軍服の裾を翻して槍を捌いているお姿は、さながら氷の軍神のようだ。
旦那様は、ほかのたくましい兵隊さんに比べればやや細身に見える。
けれど、その分動きが俊敏で、それに、とても力がお強い。
旦那様の一撃で吹っ飛んだ部下の方が、頭を掻きながら起き上がった。
「訓練でしょ! 手加減してくださいよ、閣下!」
部下の方の愚痴に、旦那様が厳しい声で仰った。
「訓練で手を抜いてどうする! 次!」
旦那様はああやって毎週一度は、ご自分が練兵場に立たれる。一緒に戦う覚悟は、一緒に汗を流すことでしか示せない、というのが旦那様の持論なのだ。
旦那様の端正な横顔を柱の陰から見守りつつ、私はうっとりとため息を付いた。
王宮で、将軍用の軍装をした旦那様にむらがって、きゃあきゃあ騒いでいるお嬢様たちは、この一番かっこいい旦那様の姿を見られないのだ。
そう思うと、旦那様を独り占めできて嬉しいようなむず痒い気分になる。
嫌だな、わたし、ちょっと意地悪かもしれない……。どうしてこんな意地悪なことを考えちゃうんだろう? だって、女の子たちが、旦那様を好きになってしまうのは当たり前だもの。カルター王国の守護神と呼ばれる、氷雪の大地の化身のような素敵な方なんだから。
憧れない女の子なんか居ないわけがないよね。事実、王女時代のわたしも、きらめく美貌の将軍様に片思いをして、ひっそり旦那様を見つめ続けてきたわけだから。
「ああ、リーザ、そこに居たのか」
旦那様が満面の笑顔で私を振り返る。兵隊さんたちも、笑顔でわたしに手を降ってくれた。
「リーザ、昼飯はまだだろう。これからみんなで食おうか」
「あ、は、はい!」
わたしは慌てて笑顔を作り、皆様に深々と頭を下げた。
「お昼、わたしもご一緒させてくださいませ」
わたしの言葉に、兵隊さんの一人が明るい声で言う。
「奥様なら大歓迎ですよ! 今日の定食は鶏肉らしいですよ! さ、行きましょ!」
うう、何だかモヤモヤするなぁ……。わたし、いつから旦那様を独り占めしていい気になるような、意地悪な女になってしまったのかしら。
ところで、ローゼンベルク国境砦の旦那様のお部屋はとても質素だ。
砦がとっても広いのでお部屋も広いけれど、贅沢なものは何もない。
わたしと旦那様は、かれこれ半年近く、このお部屋で暮らしている。ローゼンベルク侯爵家のお屋敷は別の場所にあるのだけど、砦のほうが安全だから、という理由で、わたしも此処に置いて頂いているのだ。国境の情勢が落ち着くまでは、お屋敷には戻れない。
旦那様は、わたしまで砦で暮らさねばならないことを、申し訳ないとおっしゃる。
この前なんて、もう少し情勢が落ち着いたら、リーザ一人だけでも屋敷に帰してあげたい、なんて言われた。
たしかに旦那様の私邸はとてもくつろげる場所だけれど、わたしは旦那様のお傍がいい。この砦は女性が暮らすには不便だし、市場からも繁華街からも遠くて、買い出しに行くのも一苦労の場所だけれど、お傍がいいのだ……。
そう思いながら、わたしは旦那様の寝台に潜り込んだ。
寝台は二つ準備してもらっているのだが、一緒に眠っている。
はじめのうちは、夜遅くに戻られた旦那様が『リーザを起こしては気の毒だから』と別の寝台でお休みになっていたけれど、それはお願いしてやめてもらった。
どんな遅い時間であっても、お部屋に戻ってきたら起こして欲しい。それにわたしは、旦那様と同じ寝台で寝たいのだと申し上げた。
そう申し上げた時、旦那様は何故か耳まで真っ赤になって「な、な、ならそうしようか」とおっしゃってくださったので、ホッとした。夫婦なのに別々に寝るなんて寂しすぎる。
「旦那様、今日も遅いのかしら……」
そう呟きながら、寝台の隅っこで小さくなってわたしは目を閉じた。
「ん……」
「ああ、すまんな、起こして。ただいま」
わたしの傍らに潜り込みながら、旦那様が小さな声でささやく。わたしはあわてて擦り、寝台に起き上がって旦那様に頭を下げた。
「おかえりなさいませ。今日もお仕事、お疲れ様でございます」
「起きなくていい。さ、もう寝よう」
旦那様は小さく笑って、そのまま横になってしまわれた。
今日もお疲れなんだろうな。
わたしはちんまりと正座をしたまま、旦那様の端正な顔をじっと見つめた。お昼は嫌なことを考えてしまったな、って思い出しながら。
本当にわたしは、嫌な女だ。『旦那様はわたしのものなんだから。旦那様の奥さんはわたしなんだから。わたしは特別なんだから』なんて考えてしまって。
でも、やっぱりわたし、どう自分に言い訳しても、とっても旦那様が好き。旦那様を独り占めしたい。わたしなんかが独り占め出来る方じゃないのはわかってるけど……旦那様が他の女の子に囲まれて、素敵、カッコいい、なんてもてはやされている姿を想像するだけで、苦々しい気持ちになる。
「どうした」
不意に、眠ろうとしていた旦那様がぱっちりと目を開けた。氷のような青い目で見つめられ、わたしは慌てて首を振った。
自分が意地悪で、独占欲の強い女だなんて、愛する旦那様に知られなくない。
「なんでもありません、おやすみなさいませ……」
「なんでもないって顔じゃないぞ」
旦那様がそう言って、不意に起き上がり、私にくちづけをしてくださった。
手首をやわらかく捉えられ、私は先程までのモヤモヤした気持ちを一瞬忘れて、旦那様のぬくもりに身を任せた。
「リーザ、もしかして、私が戻るのを待っててくれたのかな」
「え、え、と……」
それは、そのとおりだ。私は耳が熱くなるのを感じながら、旦那様の言葉に頷いた。
「はい」
「そうか……明日は朝会議がないから、少しは寝坊できるな」
旦那様がそう言って、私を広い胸にぎゅっと抱きしめてくださった。
お風呂あがりの旦那様の香りを感じながら、私も手を伸ばしてその背中にしがみつく。
「可愛いな、お前は。どうしてこんなに可愛いんだ……」
旦那様の長い指が、私の寝間着の襟元に忍び込む。私は自ら旦那様にくちづけし、旦那様の寝間着の帯に手をかけた。
「なんだ、今日は脱がしてくれるのか、至れり尽くせりだな」
機嫌よく旦那様がおっしゃるので、私はうつむいたまま、はい、と答えた。
部屋が暗くてよかった。わたしの冴えない表情を悟られずにすんでよかった。
でも、身体を重ねたら、私が嫌な事を考えているって、旦那様は気づいてしまうかな……。
「あ……あ……やだぁ、っ……は、っ」
私は枕を必死でつかみ、寝台にうつ伏せにされたまま必死に声を噛み殺す。
「やっぱり、お前の背中はほんとうに美しいな」
旦那様がわたしの耳元でささやく。その拍子にずぶ、と旦那様のものが体の奥深くに沈み込み、わたしは思わず声を漏らして顔を上げた。
「ひ、ぁ、あ、ああ……っ、そこ、深い……っ」
旦那様が、わたしの耳と首筋に、口づけの雨を降らせる。ゆっくりとわたしの内壁を行き来しながら、旦那様がわたしの胸と寝台の間に、手を差し込んできた。乳房に触れられ、わたしの体がビクンと揺れる。
「ずいぶん尖ってきているな」
「や……ッ」
「気持ちいいか?」
わたしの乳嘴をゆっくりと指先で責め立てながら、少年のような無邪気な口調で旦那様が囁きかけた。旦那様の吐息が、いつになく熱い。まるで興奮が伝わってくるようだ……。
わたしは敷布を握りしめたまま、唇を噛んで頷いた。
「っ、は、い……」
旦那様に抱かれるのは、本当に、気持ちがいい……。
肌と肌が触れあうたびに、わたしの体が溶けていくような気がする。
背中越しに旦那様の逞しい体を感じながら、わたしは手を伸ばして、旦那様の手の甲に自分の指を重ねた。
「痛くないか」
私は、旦那様の昂ぶるものを体の奥に咥え込んだまま、夢中で首をふる。
痛くない。ううん、痛くてもいい。もっとめちゃくちゃに、乱暴にして下さっても構わない。その低い甘い声で、もっと淫らなことをささやいてほしい。
旦那様が、もっと私に夢中になってくれないかな。
だってわたし、旦那様を独占したいんだもの……。
どんなに性格の悪い女だと思われても、旦那様を自分だけの旦那様にしたいんだもの。
「すまん、動くぞ」
旦那様がそう言って、私の腰を軽々と持ち上げ、ゆっくりと私の体を突き上げ始める。
やっぱり旦那様が好き。
いじわるなことばかり考えてしまう自分が悲しいけど、だれにも渡したくない……。
「あ、ああっ、は、ぁ……だんな……さま……すき……」
私は、ボロボロ涙を流しながら、同じ言葉を繰り返した。
旦那様が好き。旦那様が好きなの。結婚して半年も経つのに、どんどん好きになって怖いの。
それと同時に、醜い嫉妬心に気付かされて、苦しいの……。
「ん、どうした、リーザ」
いつも、果てる前に、私が『抱きしめて欲しい』とねだる事を思い出したのか、旦那様が背後から突き上げる動きを止めて、優しい声で仰った。
「この姿勢は、嫌か」
わたしは慌てて首を振る。勝手な思い込みで涙を流している顔なんて見られたら、心配症の旦那様がどんな誤解をなさるかわからない。
「こ、これで、いい、です……」
けれど、急に尋ねられたので、わたしはしゃくりあげてしまった。旦那様がぎょっとしたようにわたしの体から離れ、うつ伏せの私をくるりとひっくり返した。
「どうした、やっぱり痛いのか、苦しいのか、リーザ、何を泣いている!」
「な、なんでも……な……」
私は慌てて顔を隠した。だがその手も、旦那様にひょいと取り除かれてしまった。
「言いなさい」
「い、いや……言いたく、ないです」
旦那様が見る見る険しい顔になり、低い声でボソリと仰った。
「抱かれるのが嫌なら、嫌だといえばいいのに。我慢してまで、しなくていい」
旦那様の美しい氷色の眼の奥に傷ついた光が浮かぶ。
私はぎょっとして、跳ね起きた。
どうしよう。誤解だ。私は旦那様を拒んでなど居ないのに……。誤解させて、旦那様を傷つけてしまうなんて。
「違うの」
「何が違うんだ」
旦那様の声は暗かった。
わたしは震えながら、首を左右に振った。
ごめんなさい、違うの、旦那様。どうかそんな誤解をしないで欲しい。世界で一番愛している方にこんな顔をさせてしまうなんて、わたしは何をしているの。どうしてこんな掛け違えが起きてしまったのだろう?
「そ、それは、その、わ、わたし、わたし……いじわるなことを考えてしまって」
わたしの言葉に、旦那様が片方の眉を上げる。
「意地悪……なこと?」
「は、はい。わたし、だ、旦那様を、独り占めしたくて……だ、だんなさ、ま、を……う、う」
気がはやって、うまく説明できない。
それに、言葉にしようとしたら、また涙が止まらなくなってきた。
わたしの葛藤など当然ご存じない旦那様は、あぜんとした表情でわたしのことを見つめている。
「だ、だんなさまがかっこいいから……やきもち、や、やきもち……わぁぁぁ……!」
わたしは、どうしようもなくなって、旦那様の前で突っ伏して泣きだしてしまった。
王女らしくないから改めろ、と侍女たちに何度も叱られた妙な泣き方を抑えることすらできず、わんわん泣きながら枕を抱きしめる。
「やきもち、焼いて、しまって……だって、他の女の子に、旦那様、取られたくない……わあぁ……」
「リーザ……」
「わああああ! ご、ご、ごめんなざいぃぃ……」
持ち上げた枕にしがみつき、わたしは盛大に泣きじゃくりながら旦那様に告げた。
「嫉妬深くて、意地悪なんです、わたし。旦那様を独り占めできるのはわたしだけなんだって気持ちが、消せなくて……旦那様は、本来は皆の旦那様なのに、独り占めしたくて」
「ま、まて、お前は何を言っている」
旦那様が慌てたようにそう仰って、わたしの両頬を挟んだ。
「勝手に私を、どこぞの誰かとのの共有物にするな」
「でも、み、みんな、旦那様に憧れて、う、う……なのに、独り占めなんて、わたし、性格がゆがんでる……」
「あのな、リーザ」
旦那様がわたしの腕から枕を取り上げ、ポイとその辺に放り投げた。それから、私を冷え始めた胸にぎゅっと抱き寄せてくださった。
「お前が突拍子もない事を考えるのは知っていたが……驚いたぞ」
「だ、だんなさま……ごめんなさい、こんなふうに考えるの、苦しくて……」
私を抱きしめたまま、旦那様がぷっと吹き出す。
旦那様が厚い胸を震わせて笑い、体を離して、明るい笑顔でわたしの顔をのぞき込んだ。
「そういう意味で言っているなら、わたしも同じだ。いや、わたしのほうが酷いぞ」
「何がですか……?」
「私はお前を、この司令室に閉じ込めておこうかな、と思うことすらある」
「えっ」
わたしは仰天して、旦那様の顔を見上げた。
閉じ込めるなんて。何故そんなことをおっしゃるのだろう。
そもそも、わたしだって少しは仕事があるのに。朝一番に砦の隅にある森でキノコを採って、それから、国境河川のレーエ河でお魚を釣って、旦那様のお昼ごはんを整えねばならない。午後は日が暮れるまで融雪装置の開発と修繕に忙しいのだ。
わたしのことを気に入ってくださった漁師のおじさんに、砦の皆様用のお魚を貰いに行く用事も頻繁に発生する。閉じ込められたら、国境砦の為の労働に励めないではないか。やっと少しずつ、皆様のお役に立てるようになってきたのに……。
「あの……閉じ込められたら困ります」
わたしの答えに、旦那様がおかしくてたまらないというように、明るい笑い声を立てた。
「はは、全くお前は……」
いいながら、旦那様が投げ捨てた枕をひょいと拾い、元の位置に戻した。そのまま、わたしの体を寝台に組み敷く。
再び熱を帯び始めた旦那様の体におどろき、わたしは腕の中から抜けだそうともがいた。
「リーザ」
旦那様の声が、私の耳元でささやく。
「私もお前を独占したい。お前も私を独占したい。お互い様だと思わないか」
独占……?
そのことばをきいた瞬間、私の全身にかっと甘い熱が走り抜けた。
旦那様も私を独占なさりたいの?
もしかして、同じお気持ちで居てくださるの……?
驚いて、私は旦那様を見つめた。
「……あんまり見るな、照れるだろう」
旦那様が耳まで赤くなったまま、私の唇に唇を押しつけてくる。そのまま、ゆっくりと差し込まれた舌先に、私も舌を絡め返した。
「愛してるよ、リーザ、月なみなセリフしか思いつかんが、私はお前を愛している」
「だ、旦那様……」
「だからお前だけいてくれればいい。他の女はいらない。よその誰かと共有するなんて恐ろしいことは、二度と口にしてくれるな。私はお前に独り占めされていればそれでいいんだ」
再び私の視界が涙で歪み始める。
嬉しかった。私の嫉妬深い気持ちを旦那様が肯定してくださるなんて。
旦那様が、私に独占されたいと仰ってくださるなんて……。
夢を見るような気持ちで、私は再び旦那様と舌先を絡め合う。そのまま、私の脚に旦那様の手が掛けられた。
「またお前の、かわいい声を聞かせてくれ」
「あ……っ……」
旦那様が私の胸の尖端に軽く歯を立てる。それだけで、私の体の奥からとろりと蜜が溢れてきた。恥ずかしくて足を閉じたいのに、閉じさせてもらえない……。
「まったく……お前がかわいすぎて、どうにかなりそうだ」
旦那様の昂ったものが、私の花唇の中央に押し当てられる。
私は息を呑み、かすかに身を捩った。触れられるだけで、体が勝手に動いてしまって、恥ずかしくて仕方がないからだ。
「さっきの続きをしていいかな」
囁かれた瞬間、体の芯がずくりと疼いた。私は応える代わりに旦那様の首に手を回し、脚をたくましい体に絡めて、自分から体を開いた。
「……っ、だんなさ、ま、来て……」
くちゅくちゅと音を立てて旦那様のものを咀嚼しながら、私は体を弓なりに反らせた。
「ああ、っ、あ、あああ……っ」
旦那様の背中が、だんだんしっとりと汗ばんできた。私は奥深くまで旦那様に貫かれ、抑えきれない喘ぎ声を上げながら、その体にしがみついた。
「やぁ、だんな、さまの、熱い、ぃ……ッ」
「あまり、興奮させるな、リーザ」
耳や頬にくちづけをされるたびに、私の身体に新しい快感が走り抜ける。
恥ずかしいくらい響いている湿った音が、更に私を煽り立てる。
「ふぁ、あああ……っ、ああっ」
硬くなった胸の先端が、旦那様の胸板で擦られるたびに、体の芯が甘く疼く。
「っ、ぁ……旦那さ、まぁ……」
私は旦那様の肩口に額をこすりつけ、乱れる呼吸を必死で整えながら、旦那様に言った。
「すき……旦那様が、ほんと、に、すき……」
旦那様のものが、不意に私の中で鉄のように硬くなる。
「……すまん、リーザ、抜いたほうがいいか」
旦那様が苦しげにおっしゃる。
私は首を振り、旦那様の腰に、一層強く脚を絡めた。
このまま離れないで、わたしの中で果てて欲しい。
「や……だ……、全部、欲しい……」
旦那様の熱いほとばしりを受け、私の体の奥がビクビクと震える。私は頭のなかを真っ白にしたまま、旦那様の体に改めて抱きつき直した。
暫くの間、わたしたちは言葉もなく抱擁し合う。
旦那様はずいぶんと汗をかいている。でも、嫌じゃない。
むしろ、旦那様の汗でもっと濡れたいくらいだな、って思う。
私は旦那様に寄り添い、満たされた気持ちで目を閉じた。
嫉妬深いのはよくないことだと思うけれど……わたしやっぱり、旦那様を独り占めしたい。それに、独り占めされたい。
そう思いながら、わたしはあっという間に、眠りに落ちていった。
それで翌朝、旦那様を寝坊させてしまって、わたしは再び、心から反省した……。
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