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第12章 領都シュテリオンベルグ復興編
第148話 第2王女アリエスの秘密
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「カイト、ちょっと待って!
まだお昼よ…
こういうのは暗くなってからにしましょ」
ジェスティーナは、そう言いながらオレの体を押し返そうとするが、オレの力には抗えない。
「ねえ、誰か来たら、どうするの!」
「大丈夫!
誰も来やしないさ」
秘書のサクラや、護衛の女性たちは、その辺を弁えているから、無断でドアを開けたりしないと分かっているのだ。
オレの猛攻にジェスティーナの抵抗は次第に弱まっていく…。
お互いの唇を求め合い、さあこれからと言う時に不意にドアが開いた。
「えっ!
あ、あなた達、何してるの?
こんな昼間から…」
振り向くと、そこにはジェスティーナの姉、第2王女のアリエスが、目を見開き、両手で口を抑えて立っていた。
アリエスはジェスティーナの1つ年上で、性格は明るく爽やかで向日葵のような超絶美少女だ。
「ちょ、ちょっと、アリエス、ノックくらいしなさいよ!」
ジェスティーナは着衣の乱れを直しながら、怒っている。
姉に婚約者と抱き合っているのを見られ、その照れ隠しもあるのだろう。
「ア、アリエス、ジェスティーナと戯れてただけなんだ…
ところで、何の用?」
オレは慌ててソファから起き上がり、アリエスに聞いた。
「え~っとね、へ、陛下がね…
い、一緒に昼食は、どうかって…」
そう言うアリエスの声は、有り得ないほど上ずっていた。
そうか、国王がオレたちと一緒に昼食したいから、アリエスを呼びに来させたということか。
普段なら侍女の仕事だろうが、今日に限ってどうしたのだろう?
「分かった、すぐに伺いますと伝えて…」
それを聞き、無言で頷き、アリエスはドアを締めた。
「もぉ、だから言ったじゃない、誰か来るかもって」
ジェスティーナはすっかり、お冠だ。
この怒りは、しばらく収まりそうもない。
オレとジェスティーナが王室ダイニングへ行くと国王陛下を始め、王室一家全員勢揃いでオレたちを待っていた。
久しぶりの王室一家との昼食であるが、ジェスティーナは終始不機嫌で、対象的に第2王女のアリエスは、ニヤニヤが止まらなかった。
「ティーナ、機嫌が悪そうじゃが、カイト殿と喧嘩でもしたのか?」
国王陛下が心配して聞いた。
それに対し、ジェスティーナは『何でもありません、喧嘩なんてしてないわ』と言うだけで、自分が不機嫌な理由を言わなかった。
オレはと言えば、国王と王妃から新領地のことで質問攻めに遭っていた。
その対応に手一杯で、ジェスティーナを気に掛けてやる余裕は、全く無かった。
昼食が終わるとジェスティーナは、オレを置いて一人で『秋桜の館』へと帰って行った。
陛下に辞去の挨拶を述べ、ジェスティーナを追いかけようと歩き始めた時、すれ違ったアリエスに耳元でこう囁かれた。
「みんなには、内緒にしてあげるわ。
1つ貸しよ…」
オレはアリエスに弱みを握られてしまったのだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その日の午後、バレンシア商会へ向かった。
ご機嫌斜めのジェスティーナを残し、秘書のサクラと護衛のリリアーナを伴って、『空飛ぶイルカ号Ⅱ』でバレンシア邸を目指した。
バレンシア邸の中庭に着陸すると、当主のリカールとアスナが出迎えてくれた。
「カイト殿、良く来てくれた、実に久しぶりですなぁ」
「リカール殿、ご無沙汰しております」
「カイト殿の噂は、色々と聞いておりますぞ。
さあ、立ち話も何ですから、中へどうぞ」
案内されたのは、バレンシア商会本館横にオープンした高級喫茶室であった。
王都で展開しているカフェ・バレンシアの高級路線の店だと言う。
店内は落ち着いた雰囲気で、高級そうな家具があちこちに使われていた。
「カイト殿、話の前に仕事を片付けましょうかな」
「はい、そうですね」
「では、まずトリンさんの造ったポーションをお見せ頂けますかな。
娘が鑑定済ですが、私もこの目で品質を確かめたいのです」
「分かりました」
オレは異空間収納から2級、準1級、1級のポーションを、それぞれ4種類1本ずつ合計12本取り出し、リカール・バレンシアに渡した。
リカール・バレンシアは、それを光に翳し、慎重に見ていた。
「いや~、これは見事なポーションですなあ……
実に純度が高い!
トリンさんの腕が、これほどまでに上がっているとは、思いませんでした」
「ね、パパ、私が言った通りでしょ」
アスナは、品質の高さを自分のことのように喜んだ。
「それでは約束通り、金貨440枚(円換算4400万円)で買い取らせていただきます」
オレはリカール・バレンシアから金貨を受け取った。
「ところでカイト殿、最初に決めた『継続的取引基本契約』を覚えておいでですか?」
「はい、もちろん覚えております」
「あの契約書にはポーションの取引価格も載っているのですが、2級までしか想定してなかったので、準1級と1級の価格は決めていないのです。
今後は準1級と1級ポーションも定期的に納品いただけるでしょうから、価格を決めて置きたいと思いましてな」
「そうですね、私もそう思ってました。
その都度決めるのは面倒ですから、予め決めていただければありがたいです」
「分かりました。
それと以前の契約では、商品は当商会の馬車が引き取りに伺うと言う契約でしたが、カイト殿は飛行船をお持ちだし、王都へ来られる際に運んでもらうと言う契約に変更させて頂きたいのですが……
もちろん、その分は買取価格を高く設定させていただきます」
「分かりました、ではそれでお願いします」
『継続的取引基本契約』は下記のように改定し、お互いにサインした。
◎ポーションは毎月1回のペースで納品する。
◎ポーションの最低納品数は2級各200本、準1級各50本、1級は縛りなし。
◎ポーションの代金は市場価格の75%とし、最低保証価格を設定する。
◎薬草、ハーブ、スパイスの納品数は、特に定めず生産余剰分を買い取る。
◎薬草、ハーブ、スパイスは、市場価格の75%で買い取る。
◎上記以外の商品については、都度打ち合わせして価格を決める。
◎取引代金は商品と交換に現金で支払い、引き換えに領収証を渡す。
◎輸送費はカイトの負担とし、諸税販売諸経費はバレンシア商会の負担とする。
◎毎月最低1回、カイトまたはその代理が飛行船でバレンシア商会に納品する。
◎ポーションの最低保証価格は2級銀貨4枚、準1級銀貨16枚、1級金貨4枚とする。
「これで、いちいち価格交渉しなくて良くなりました」
まだお昼よ…
こういうのは暗くなってからにしましょ」
ジェスティーナは、そう言いながらオレの体を押し返そうとするが、オレの力には抗えない。
「ねえ、誰か来たら、どうするの!」
「大丈夫!
誰も来やしないさ」
秘書のサクラや、護衛の女性たちは、その辺を弁えているから、無断でドアを開けたりしないと分かっているのだ。
オレの猛攻にジェスティーナの抵抗は次第に弱まっていく…。
お互いの唇を求め合い、さあこれからと言う時に不意にドアが開いた。
「えっ!
あ、あなた達、何してるの?
こんな昼間から…」
振り向くと、そこにはジェスティーナの姉、第2王女のアリエスが、目を見開き、両手で口を抑えて立っていた。
アリエスはジェスティーナの1つ年上で、性格は明るく爽やかで向日葵のような超絶美少女だ。
「ちょ、ちょっと、アリエス、ノックくらいしなさいよ!」
ジェスティーナは着衣の乱れを直しながら、怒っている。
姉に婚約者と抱き合っているのを見られ、その照れ隠しもあるのだろう。
「ア、アリエス、ジェスティーナと戯れてただけなんだ…
ところで、何の用?」
オレは慌ててソファから起き上がり、アリエスに聞いた。
「え~っとね、へ、陛下がね…
い、一緒に昼食は、どうかって…」
そう言うアリエスの声は、有り得ないほど上ずっていた。
そうか、国王がオレたちと一緒に昼食したいから、アリエスを呼びに来させたということか。
普段なら侍女の仕事だろうが、今日に限ってどうしたのだろう?
「分かった、すぐに伺いますと伝えて…」
それを聞き、無言で頷き、アリエスはドアを締めた。
「もぉ、だから言ったじゃない、誰か来るかもって」
ジェスティーナはすっかり、お冠だ。
この怒りは、しばらく収まりそうもない。
オレとジェスティーナが王室ダイニングへ行くと国王陛下を始め、王室一家全員勢揃いでオレたちを待っていた。
久しぶりの王室一家との昼食であるが、ジェスティーナは終始不機嫌で、対象的に第2王女のアリエスは、ニヤニヤが止まらなかった。
「ティーナ、機嫌が悪そうじゃが、カイト殿と喧嘩でもしたのか?」
国王陛下が心配して聞いた。
それに対し、ジェスティーナは『何でもありません、喧嘩なんてしてないわ』と言うだけで、自分が不機嫌な理由を言わなかった。
オレはと言えば、国王と王妃から新領地のことで質問攻めに遭っていた。
その対応に手一杯で、ジェスティーナを気に掛けてやる余裕は、全く無かった。
昼食が終わるとジェスティーナは、オレを置いて一人で『秋桜の館』へと帰って行った。
陛下に辞去の挨拶を述べ、ジェスティーナを追いかけようと歩き始めた時、すれ違ったアリエスに耳元でこう囁かれた。
「みんなには、内緒にしてあげるわ。
1つ貸しよ…」
オレはアリエスに弱みを握られてしまったのだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その日の午後、バレンシア商会へ向かった。
ご機嫌斜めのジェスティーナを残し、秘書のサクラと護衛のリリアーナを伴って、『空飛ぶイルカ号Ⅱ』でバレンシア邸を目指した。
バレンシア邸の中庭に着陸すると、当主のリカールとアスナが出迎えてくれた。
「カイト殿、良く来てくれた、実に久しぶりですなぁ」
「リカール殿、ご無沙汰しております」
「カイト殿の噂は、色々と聞いておりますぞ。
さあ、立ち話も何ですから、中へどうぞ」
案内されたのは、バレンシア商会本館横にオープンした高級喫茶室であった。
王都で展開しているカフェ・バレンシアの高級路線の店だと言う。
店内は落ち着いた雰囲気で、高級そうな家具があちこちに使われていた。
「カイト殿、話の前に仕事を片付けましょうかな」
「はい、そうですね」
「では、まずトリンさんの造ったポーションをお見せ頂けますかな。
娘が鑑定済ですが、私もこの目で品質を確かめたいのです」
「分かりました」
オレは異空間収納から2級、準1級、1級のポーションを、それぞれ4種類1本ずつ合計12本取り出し、リカール・バレンシアに渡した。
リカール・バレンシアは、それを光に翳し、慎重に見ていた。
「いや~、これは見事なポーションですなあ……
実に純度が高い!
トリンさんの腕が、これほどまでに上がっているとは、思いませんでした」
「ね、パパ、私が言った通りでしょ」
アスナは、品質の高さを自分のことのように喜んだ。
「それでは約束通り、金貨440枚(円換算4400万円)で買い取らせていただきます」
オレはリカール・バレンシアから金貨を受け取った。
「ところでカイト殿、最初に決めた『継続的取引基本契約』を覚えておいでですか?」
「はい、もちろん覚えております」
「あの契約書にはポーションの取引価格も載っているのですが、2級までしか想定してなかったので、準1級と1級の価格は決めていないのです。
今後は準1級と1級ポーションも定期的に納品いただけるでしょうから、価格を決めて置きたいと思いましてな」
「そうですね、私もそう思ってました。
その都度決めるのは面倒ですから、予め決めていただければありがたいです」
「分かりました。
それと以前の契約では、商品は当商会の馬車が引き取りに伺うと言う契約でしたが、カイト殿は飛行船をお持ちだし、王都へ来られる際に運んでもらうと言う契約に変更させて頂きたいのですが……
もちろん、その分は買取価格を高く設定させていただきます」
「分かりました、ではそれでお願いします」
『継続的取引基本契約』は下記のように改定し、お互いにサインした。
◎ポーションは毎月1回のペースで納品する。
◎ポーションの最低納品数は2級各200本、準1級各50本、1級は縛りなし。
◎ポーションの代金は市場価格の75%とし、最低保証価格を設定する。
◎薬草、ハーブ、スパイスの納品数は、特に定めず生産余剰分を買い取る。
◎薬草、ハーブ、スパイスは、市場価格の75%で買い取る。
◎上記以外の商品については、都度打ち合わせして価格を決める。
◎取引代金は商品と交換に現金で支払い、引き換えに領収証を渡す。
◎輸送費はカイトの負担とし、諸税販売諸経費はバレンシア商会の負担とする。
◎毎月最低1回、カイトまたはその代理が飛行船でバレンシア商会に納品する。
◎ポーションの最低保証価格は2級銀貨4枚、準1級銀貨16枚、1級金貨4枚とする。
「これで、いちいち価格交渉しなくて良くなりました」
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