婚約者曰く、私は『誰にも必要とされない人間』らしいので、公爵令嬢をやめて好きに生きさせてもらいます

皇 翼

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「アリア?あいつは見た目が良いから婚約してやっただけ。アクセサリーみたいな?実際無個性で人に対する肯定ばかりだし、俺に言われるがままで何されても反抗もしてこないんだぜ!なにより役に立たないし、誰にも必要とされない人間ってああいうやつのこと言うんだろうな……本当、哀れな生き物だよ」

王宮での夜会。虚栄心と嘘まみれの社交も粗方終わり、そろそろ婚約者と合流しようと、無駄に着飾った人間達の群れを避けながら前進していた時のことだった。私の耳に偶然その言葉が入ってきたのは――。

アリア。それは呼ばれ覚えのあり過ぎる自身の名前。そしてそれを楽し気に話しているのも聞き覚えのあり過ぎるテノール声……。
声の聞こえた方向を見てみると、そこにいたのは金を紡いだように輝く髪の毛が特徴的な男。この国、ラーガレット王国の第三王子にして、私・アリアネット=カルカーンの婚約者であるジブリール=ラーガレット。他ならぬその人だった。

見た目が良いから婚約してやった。無個性。反抗しない。役に立たないから誰にも必要とされない、哀れな生き物……。

彼の口から放たれた言葉の刃の数々。信頼して、一生を共に生きていくのだと思っていた筈の婚約者からの自分の言われ様に心がズタズタに引き裂かれ、その場に棒立ちになってしまう。
反論したい。……けれどその言葉にどこか納得してしまって反論できない自分もいて――そんなことは出来なかった。
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