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1章-2
第25話
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俺たちは洞窟の中へと招かれてそこで豪勢な料理を振舞った。
オーガ族のみんなは嬉しそうに歓声を上げながら一心不乱に料理を頬張っていた。
サイドメニューとして出したほしにくの実の山積みもものの数分もしないうちに姿を消すことに。
これだけでみんながどれだけ腹を空かせてたか分かるってもんだ。
てか食いっぷりが迫力がありすぎてまるで戦場にでも来た気分だった。
その後。
みんなの食事がひと段落すると俺はガンフーに首領の間へと招待される。
長椅子に腰をかけるガンフーの隣りには女戦士長のクリエの姿もあった。
ちなみに彼女とは食事の席で挨拶を済ませている。
「ティム・ベルリ。このたびは本当に助かった。これまで自分が考えていたことがいかに愚かだったか学ぶことができた。大変感謝している」
「俺は霧丸に言われてここまで来ただけだからさ。それに実際に料理を振舞ったのはルーク軍曹たちなわけだし。感謝するなら蒼狼王族のみんなに感謝してほしいかな」
「もちろん蒼狼王族の皆には感謝している。だが彼らをまとめ上げてこんな頑固な我の心を動かしたのは間違いなくそなただ。どうかありがとうと言わせてほしい」
ガンフーはそこで改めて頭を深々と下げる。
「顔を上げてくれガンフー。俺はべつに感謝してほしくてあんたを説得したわけじゃないんだ。純粋にオーガ族のみんなに生きのびてほしかっただけだからさ」
「なんと……! 首領さま、この殿方はとんでもない人格者です! こんな人族の方ははじめてお目にしましたっ!」
クリエは指を組みながら目を輝かせる。
そんな感動されるようなことを言ったつもりはないんだけど。
気を取り直すと俺はガンフーに向けて言った。
「それにさ。自分のことを愚かだなんて卑下するのはやめようぜ。あんたはオーガ族の誇りをひとりで背負い込もうとしてたんだろ? それは想像を絶するほどのつらい決断だったはずだ。俺には到底できないことだよ」
「フッ、そなたには本当に敵わないな。こちらの考えがなんでもお見通しのようだ」
ガンフーは口元に笑みを浮かべる。
そして心の底から言うようにこんな言葉を口にした。
「そなたと出逢えて本当によかった。この恩は一生忘れない。我らにできることがあるならなんでも言ってくれ」
その真摯な口ぶりからガンフーが社交辞令で言ってるわけじゃないってことがすぐに分かった。
こういうのは茶化しちゃダメだ。
俺も真剣に返答を考えないと。
暫しの間、頭の中で考えを巡らせたあとである閃きが思い浮かぶ。
「んじゃさ。うちらの街にオーガ族のみんなで移り住むってのはどうかな?」
「移り住む?」
「みんながいてくれたらモンスターに襲われる心配も減るだろうし。逆にオーガ族としては食糧の心配をせずに済むんじゃないか? きっとwin-winの関係が築けるはずだ」
「おぉっ、なんという素晴らしい提案でしょうか! 首領さま! きっと皆の者も喜ぶはずです!」
クリエが感激したように声を上げるも隣りに座るガンフーは黙ったままだ。
さすがに無謀なお願いだったか。
「ごめん。この洞窟で暮らしてきた愛着だってあるだろうしいきなりすぎたな」
それにほかの種族と生活をともにするっていうのは種族の誇りにも大きく関係してくる。
そんなぽんぽんと決められるような簡単な話じゃない。
霧丸やルーク軍曹、ほかの仲間たちの意見も聞かないで先走りすぎだとちょっと反省。
が。
「……いや。ぜひそうしてくれるとありがたい」
「え、いいのか?」
「我も同じことを考えていたのだ。一緒に生活することができたらどんなに喜ばしいことかと」
「俺に気を使ってそう言ってるんじゃなくて?」
「そうではない。実は以前からそのように考えていたのだ。だが種族としてのプライドが邪魔して言い出すことができなかった。だからこの提案はこちらとしても本当に願ったりのものなのだ」
「種族が手を取り合って共存するというのはこれまでに前例のない発想です! 首領さま、ぜひとも成功させましょう!」
「ああ、そうだな」
クリエの言葉にガンフーはしっかりと頷く。
どうやら俺の提案は受け入れられたようだ。
蒼狼王族のみんなにはあとで俺からきちんと説明して納得してもらおう。
けどガンフーの口ぶりからなんとなく予想はできてる。
たぶん蒼狼王族の仲間たちも本当はオーガ族と一緒に暮らしたかったんじゃないかって。
そうすれば両種族の問題はもう少し早く解決してたのかもしれないな。
◇◇◇
今回の件を皆に報告するためクリエがひと足先に首領の間をあとにするとガンフーは再度礼を口にする。
「そなたが我が一族に新たな可能性の道を示してくれた。もう一度我の気持ちを伝えさせてほしい。本当に感謝している」
「そう何度も言われると気恥ずかしいっていうか……かしこまっちまうからやめてくれ」
「……そうか。むしろかしこまるべきなのは我の方だったな」
「?」
そこでガンフーは長椅子から降りると床に拳を突きつけて頭を下げる。
「おいおい!? 急にどうしたっ?」
「ティム・ベルリ……いえティムさま。ひとつお願いがございます」
「は?」
「お世話になるあかつきには我が一族をティムさまの配下とさせていただけないでしょうか?」
「配下って……いやいや」
俺はただ一緒に暮らせば協力し合えるって思ったから提案しただけで。
べつに配下とかそんなものは望んでない。
対等な関係のままでいいんだが。
でも俺が何度そう言ってもガンフーは姿勢を崩すことはなくて。
「キラキラと目を輝かせている蒼狼王族の皆を見て我はより強い確信を抱くことができました。ティムさまが支配者として蒼狼王族を導いているからこそ彼らはあれほどまで活き活きしているのだと」
「いや、俺はこれといってなにもしてないよ」
「そんなはずありません。その証拠に以前のルーク軍曹たちの間にはどこか重苦しい空気が流れていました。イヌイヌ族の全員がそのような悲壮感に満ちていたのです。それを変えたのは間違いなくティムさまです」
「俺?」
たしかに最初イヌイヌタウンに足を踏み入れたときはそんな印象もあったけど。
でも俺はほんの一役買ったにすぎない。
変わったっていうならそれは蒼狼王族のみんな自身のおかげだ。
が、それもやっぱりガンフーには伝わらなかったみたいで。
「ですから我がオーガ族もティムさまに導いていただきたいのです。そうしていただけたら『強き者こそ正義』という一族の掟も守られます。もちろんティムさまがよければの話ですが」
「今日会ったばかりの俺なんかが上に立って本当にいいのか?」
「時間は関係ありません。信頼できるリーダーに出逢えた。そのことの方が何百倍も重要なことです」
その目は完全に俺を信頼しきっていた。
まあ全力で戦いを挑んで敵わなかったわけだから。
戦いに重きを置くガンフーが俺を神格化して見るのは仕方ないことなんだろうけど。
(でも実際の俺は【命中率0%】なんだし。なんか騙してるみたいで気が引けるなぁ)
かといって、本当のことを言って話がふりだしに戻るのもイヤだし。
結局俺はガンフーの願いを聞き入れることにした。
もう蒼狼王族の支配者やってるんだ。
配下の種族がひとつからふたつに増えたところで今さらだと半ばヤケだったりする。
「ありがとうございますティムさま。これからは我が主のために一族全員で力となります」
「うん。よろしく頼むよ」
俺たちは固い握手を交わした。
こうしてオーガ族が俺たちの新たな仲間になった。
オーガ族のみんなは嬉しそうに歓声を上げながら一心不乱に料理を頬張っていた。
サイドメニューとして出したほしにくの実の山積みもものの数分もしないうちに姿を消すことに。
これだけでみんながどれだけ腹を空かせてたか分かるってもんだ。
てか食いっぷりが迫力がありすぎてまるで戦場にでも来た気分だった。
その後。
みんなの食事がひと段落すると俺はガンフーに首領の間へと招待される。
長椅子に腰をかけるガンフーの隣りには女戦士長のクリエの姿もあった。
ちなみに彼女とは食事の席で挨拶を済ませている。
「ティム・ベルリ。このたびは本当に助かった。これまで自分が考えていたことがいかに愚かだったか学ぶことができた。大変感謝している」
「俺は霧丸に言われてここまで来ただけだからさ。それに実際に料理を振舞ったのはルーク軍曹たちなわけだし。感謝するなら蒼狼王族のみんなに感謝してほしいかな」
「もちろん蒼狼王族の皆には感謝している。だが彼らをまとめ上げてこんな頑固な我の心を動かしたのは間違いなくそなただ。どうかありがとうと言わせてほしい」
ガンフーはそこで改めて頭を深々と下げる。
「顔を上げてくれガンフー。俺はべつに感謝してほしくてあんたを説得したわけじゃないんだ。純粋にオーガ族のみんなに生きのびてほしかっただけだからさ」
「なんと……! 首領さま、この殿方はとんでもない人格者です! こんな人族の方ははじめてお目にしましたっ!」
クリエは指を組みながら目を輝かせる。
そんな感動されるようなことを言ったつもりはないんだけど。
気を取り直すと俺はガンフーに向けて言った。
「それにさ。自分のことを愚かだなんて卑下するのはやめようぜ。あんたはオーガ族の誇りをひとりで背負い込もうとしてたんだろ? それは想像を絶するほどのつらい決断だったはずだ。俺には到底できないことだよ」
「フッ、そなたには本当に敵わないな。こちらの考えがなんでもお見通しのようだ」
ガンフーは口元に笑みを浮かべる。
そして心の底から言うようにこんな言葉を口にした。
「そなたと出逢えて本当によかった。この恩は一生忘れない。我らにできることがあるならなんでも言ってくれ」
その真摯な口ぶりからガンフーが社交辞令で言ってるわけじゃないってことがすぐに分かった。
こういうのは茶化しちゃダメだ。
俺も真剣に返答を考えないと。
暫しの間、頭の中で考えを巡らせたあとである閃きが思い浮かぶ。
「んじゃさ。うちらの街にオーガ族のみんなで移り住むってのはどうかな?」
「移り住む?」
「みんながいてくれたらモンスターに襲われる心配も減るだろうし。逆にオーガ族としては食糧の心配をせずに済むんじゃないか? きっとwin-winの関係が築けるはずだ」
「おぉっ、なんという素晴らしい提案でしょうか! 首領さま! きっと皆の者も喜ぶはずです!」
クリエが感激したように声を上げるも隣りに座るガンフーは黙ったままだ。
さすがに無謀なお願いだったか。
「ごめん。この洞窟で暮らしてきた愛着だってあるだろうしいきなりすぎたな」
それにほかの種族と生活をともにするっていうのは種族の誇りにも大きく関係してくる。
そんなぽんぽんと決められるような簡単な話じゃない。
霧丸やルーク軍曹、ほかの仲間たちの意見も聞かないで先走りすぎだとちょっと反省。
が。
「……いや。ぜひそうしてくれるとありがたい」
「え、いいのか?」
「我も同じことを考えていたのだ。一緒に生活することができたらどんなに喜ばしいことかと」
「俺に気を使ってそう言ってるんじゃなくて?」
「そうではない。実は以前からそのように考えていたのだ。だが種族としてのプライドが邪魔して言い出すことができなかった。だからこの提案はこちらとしても本当に願ったりのものなのだ」
「種族が手を取り合って共存するというのはこれまでに前例のない発想です! 首領さま、ぜひとも成功させましょう!」
「ああ、そうだな」
クリエの言葉にガンフーはしっかりと頷く。
どうやら俺の提案は受け入れられたようだ。
蒼狼王族のみんなにはあとで俺からきちんと説明して納得してもらおう。
けどガンフーの口ぶりからなんとなく予想はできてる。
たぶん蒼狼王族の仲間たちも本当はオーガ族と一緒に暮らしたかったんじゃないかって。
そうすれば両種族の問題はもう少し早く解決してたのかもしれないな。
◇◇◇
今回の件を皆に報告するためクリエがひと足先に首領の間をあとにするとガンフーは再度礼を口にする。
「そなたが我が一族に新たな可能性の道を示してくれた。もう一度我の気持ちを伝えさせてほしい。本当に感謝している」
「そう何度も言われると気恥ずかしいっていうか……かしこまっちまうからやめてくれ」
「……そうか。むしろかしこまるべきなのは我の方だったな」
「?」
そこでガンフーは長椅子から降りると床に拳を突きつけて頭を下げる。
「おいおい!? 急にどうしたっ?」
「ティム・ベルリ……いえティムさま。ひとつお願いがございます」
「は?」
「お世話になるあかつきには我が一族をティムさまの配下とさせていただけないでしょうか?」
「配下って……いやいや」
俺はただ一緒に暮らせば協力し合えるって思ったから提案しただけで。
べつに配下とかそんなものは望んでない。
対等な関係のままでいいんだが。
でも俺が何度そう言ってもガンフーは姿勢を崩すことはなくて。
「キラキラと目を輝かせている蒼狼王族の皆を見て我はより強い確信を抱くことができました。ティムさまが支配者として蒼狼王族を導いているからこそ彼らはあれほどまで活き活きしているのだと」
「いや、俺はこれといってなにもしてないよ」
「そんなはずありません。その証拠に以前のルーク軍曹たちの間にはどこか重苦しい空気が流れていました。イヌイヌ族の全員がそのような悲壮感に満ちていたのです。それを変えたのは間違いなくティムさまです」
「俺?」
たしかに最初イヌイヌタウンに足を踏み入れたときはそんな印象もあったけど。
でも俺はほんの一役買ったにすぎない。
変わったっていうならそれは蒼狼王族のみんな自身のおかげだ。
が、それもやっぱりガンフーには伝わらなかったみたいで。
「ですから我がオーガ族もティムさまに導いていただきたいのです。そうしていただけたら『強き者こそ正義』という一族の掟も守られます。もちろんティムさまがよければの話ですが」
「今日会ったばかりの俺なんかが上に立って本当にいいのか?」
「時間は関係ありません。信頼できるリーダーに出逢えた。そのことの方が何百倍も重要なことです」
その目は完全に俺を信頼しきっていた。
まあ全力で戦いを挑んで敵わなかったわけだから。
戦いに重きを置くガンフーが俺を神格化して見るのは仕方ないことなんだろうけど。
(でも実際の俺は【命中率0%】なんだし。なんか騙してるみたいで気が引けるなぁ)
かといって、本当のことを言って話がふりだしに戻るのもイヤだし。
結局俺はガンフーの願いを聞き入れることにした。
もう蒼狼王族の支配者やってるんだ。
配下の種族がひとつからふたつに増えたところで今さらだと半ばヤケだったりする。
「ありがとうございますティムさま。これからは我が主のために一族全員で力となります」
「うん。よろしく頼むよ」
俺たちは固い握手を交わした。
こうしてオーガ族が俺たちの新たな仲間になった。
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