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2章-2
第18話
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(言われたとおり最初から全力で仕掛けてやる)
紋章剣をいちど後ろに構えると、俺は力の限りそれを振り抜いた。
「《100倍エネルギー斬》!」
ズズズシュババギギギギーーーン!!
爆裂する巨大な閃光の衝撃波が相手に命中する。
(やったぞ。攻撃が当たった!)
それは俺がはじめて敵に攻撃を当てた瞬間だった。
爆音とともに巨大な土煙がその場に上がる。
(これだけ至近距離で攻撃を当てたんだ。ひとたまりもないはず)
運がよければこの一撃で葬れたかもしれない。
ゆっくりと相手のもとへ近づいていく。
が。
「《爆裂連撃・界王波》!」
ドゥルルルルーーーバギイイィン!!
暗黒の波動が土煙を破るようにして放たれるも俺はそれを瞬時に避けた。
どうやら〈拳技〉を使ってきたようだ。
さすがに一撃じゃ倒せなかったか。
「ハッ! 直撃は回避したか。褒めてやるぜ」
「!」
そこで気づいた。
自分の頬から血が流れ落ちてることに。
(どうして? 俺のすばやさは∞のはずなのに)
ジャイオーンが生きてたことよりも相手の攻撃を完全に避けきれなかったことに俺は大きく驚いた。
攻撃を回避できないなんてことはまずあり得ない。
(こんなことが起こり得るとすれば……)
可能性はひとつしかない。
そんなことを考えてると。
相手の方から《零獄接続》を唱える声が聞えてくる。
「おいおいマジかよ。てめぇもステータス∞なのか。どうりでニズゼルファさまと戦えたわけだ」
「……なんだって? 今なんて言った?」
「あん? 戦いの最中にオレサマに話しかけるとはいい度胸じゃねーかオイ!」
ふたたび仕掛けてきたジャイオーンの攻撃を避けようとするも。
(っ!)
完全に回避することができず、俺はその攻撃をわずかに受けてしまう。
バヂィゴゴーーン!
体をよろけさせながら剣を杖代わりにしてなんとか立ち上がる。
なかなか痛かったぞ。
(攻撃が避けられないならこっちから攻撃を仕掛けるしかない)
こうなったら最強技を連続で繰り出してやる。
「《超・覚醒龍極剣》! ついでにもう一発! 《超・覚醒龍極剣》!」
ズズズシュババギギギギーーーーンッ!!
ズズズシュババギギギギーーーーンッ!!
強大な衝撃波が爆音とともに魔王の体にぶち当たる。
今度こそ確実に仕留めたはずだ。
けど。
土煙が上がると、ジャイオーンは無傷でヘラヘラと笑いながら拳をかかげていた。
「これで終わりかぁ~?」
「……」
「しっかしよぉ。肩透かしもいいところだぜ。勇者ってのはこんなもんか。ぜんぜん大したことねぇーじゃねーか。歯ごたえなんてまるでねぇ。んな雑魚生かしておいたニズゼルファさまの気持ちは理解できねぇぜ」
どうして無傷なんだ?
紋章剣がボロボロだから?
(いや違う)
攻撃力∞の攻撃を当てたんだ。
ふつうなら倒れていないとおかしい。
(これでもう疑いようがないな)
ひとつの可能性はある確信へと変わっていた。
「どうしてダメージが通らないのかって顔だな? いいだろう。特別てめぇに教えてやる。オレサマたち魔族もな、ステータスは∞なんだよ!」
「やっぱり……そうだったか」
「なんだぁ? 気づいてたのに撃ち込んできたのか? ハハハッ! こりゃとんだマヌケもいたもんだぜ! だったらもう思い残すことはねぇーよなぁオイ! 《爆裂連撃・界王波》!」
ドゥルルルルーーーバギイイィン!!
三度、暗黒の波動が繰り出される。
今度は少しも避けることができずまともに食らってしまった。
「くっ……」
紋章剣をその場に突き刺して立ち上がろうとするも力が思うように入らない。
「これで分かっただろぉ~? てめぇのすばやさは∞でもこっちのステータスも∞なわけよ! 攻撃が避けられなくて残念だったなぁ!」
「……ならどうして俺の攻撃を受けてあんたは無傷なんだ?」
「あん?」
お互いにステータスが∞なら本来は互角の戦いになるはずだ。
俺が攻撃を避けられなかったり、相手が無傷だったりするのはおかしい。
「んなもん当然だろ? オレサマとてめぇの間には圧倒的なオーラ値の差があるわけだからな」
「オーラ値?」
「はぁ? おい嘘だろぉ? オーラ値も知らねぇーで戦ってたのかよ? ヒャッハハ! こりゃほんと傑作だぜぇ~!」
魔王は勝ち誇ったように胸を張る。
もう決着はついたものと思ってるんだろう。
「冥土のみやげにまた特別に教えてやるよ。オーラ値ってのはな。簡単に言えばこの世界での存在感を示す数値みたいなもんだ。ステータス見りゃ一発で分かんだろ?」
「なんのことを言ってる?」
「APって表示されてるだろーが。それがオーラ値なんだよ」
あぁなるほど。
これまでずっと謎だったAPの意味がようやく分かった。
(この世界での存在感、ね)
仲間を増やすたびにこの数値が上昇していったのもこれで納得できる。
AP1の村人だった頃と違って今はそれなりに存在感があるってことか。
「んでよ。戦闘面でもこのAPは重要になってくるってわけだ。今言ったよな? オレサマとてめぇの間には圧倒的なオーラ値の差があるって。さっきてめぇのAPを確認したが10万って表示されてたなぁー」
「10万?」
「まさかてめぇ。自分のオーラ値すら把握してなかったのか?」
「俺のAPは2万5千のはずだ」
が、そこで思い直した。
勇者に覚醒したことでこの世界での存在感がさらに増したのかもしれない。
「どっちでも同じだ! 2万5千だろうが10万だろうが! よくそんなゴミみてぇな数値でオレサマに戦いを挑もうと思ったな。その度胸だけは褒めてやってもいいぜ!」
威圧しながらジャイオーンが俺の前に立ちはだかる。
「打ち震えて聞きやがれ。オレサマのオーラ値はなぁ、500万なんだよ!」
「!」
これが事実なら相手との間には50倍もの戦力の開きがあるってことになる。
どうりで無傷なわけだ。
「だからいくらてめぇが立ち向かったところでオレサマを倒すことは不可能ッ! 力の差は歴然だなぁオイ? どうだ。少しは絶望してきただろぉ~? クッハハ!」
たしかに絶望的と呼んでいい状況だ。
これだけの戦力差があればジャイオーンが言うように勝つことは難しいかもしれない。
魔族相手にダメージを与えるには、【煌世主の意志】があっても、ステータスが∞でもダメだったんだ。
そして。
この瞬間、俺は理解する。
以前の俺がニズゼルファに勝てなかった理由はこれなんだって。
圧倒的なオーラ値の差を埋めない限り、魔族は倒すことができないんだ。
紋章剣をいちど後ろに構えると、俺は力の限りそれを振り抜いた。
「《100倍エネルギー斬》!」
ズズズシュババギギギギーーーン!!
爆裂する巨大な閃光の衝撃波が相手に命中する。
(やったぞ。攻撃が当たった!)
それは俺がはじめて敵に攻撃を当てた瞬間だった。
爆音とともに巨大な土煙がその場に上がる。
(これだけ至近距離で攻撃を当てたんだ。ひとたまりもないはず)
運がよければこの一撃で葬れたかもしれない。
ゆっくりと相手のもとへ近づいていく。
が。
「《爆裂連撃・界王波》!」
ドゥルルルルーーーバギイイィン!!
暗黒の波動が土煙を破るようにして放たれるも俺はそれを瞬時に避けた。
どうやら〈拳技〉を使ってきたようだ。
さすがに一撃じゃ倒せなかったか。
「ハッ! 直撃は回避したか。褒めてやるぜ」
「!」
そこで気づいた。
自分の頬から血が流れ落ちてることに。
(どうして? 俺のすばやさは∞のはずなのに)
ジャイオーンが生きてたことよりも相手の攻撃を完全に避けきれなかったことに俺は大きく驚いた。
攻撃を回避できないなんてことはまずあり得ない。
(こんなことが起こり得るとすれば……)
可能性はひとつしかない。
そんなことを考えてると。
相手の方から《零獄接続》を唱える声が聞えてくる。
「おいおいマジかよ。てめぇもステータス∞なのか。どうりでニズゼルファさまと戦えたわけだ」
「……なんだって? 今なんて言った?」
「あん? 戦いの最中にオレサマに話しかけるとはいい度胸じゃねーかオイ!」
ふたたび仕掛けてきたジャイオーンの攻撃を避けようとするも。
(っ!)
完全に回避することができず、俺はその攻撃をわずかに受けてしまう。
バヂィゴゴーーン!
体をよろけさせながら剣を杖代わりにしてなんとか立ち上がる。
なかなか痛かったぞ。
(攻撃が避けられないならこっちから攻撃を仕掛けるしかない)
こうなったら最強技を連続で繰り出してやる。
「《超・覚醒龍極剣》! ついでにもう一発! 《超・覚醒龍極剣》!」
ズズズシュババギギギギーーーーンッ!!
ズズズシュババギギギギーーーーンッ!!
強大な衝撃波が爆音とともに魔王の体にぶち当たる。
今度こそ確実に仕留めたはずだ。
けど。
土煙が上がると、ジャイオーンは無傷でヘラヘラと笑いながら拳をかかげていた。
「これで終わりかぁ~?」
「……」
「しっかしよぉ。肩透かしもいいところだぜ。勇者ってのはこんなもんか。ぜんぜん大したことねぇーじゃねーか。歯ごたえなんてまるでねぇ。んな雑魚生かしておいたニズゼルファさまの気持ちは理解できねぇぜ」
どうして無傷なんだ?
紋章剣がボロボロだから?
(いや違う)
攻撃力∞の攻撃を当てたんだ。
ふつうなら倒れていないとおかしい。
(これでもう疑いようがないな)
ひとつの可能性はある確信へと変わっていた。
「どうしてダメージが通らないのかって顔だな? いいだろう。特別てめぇに教えてやる。オレサマたち魔族もな、ステータスは∞なんだよ!」
「やっぱり……そうだったか」
「なんだぁ? 気づいてたのに撃ち込んできたのか? ハハハッ! こりゃとんだマヌケもいたもんだぜ! だったらもう思い残すことはねぇーよなぁオイ! 《爆裂連撃・界王波》!」
ドゥルルルルーーーバギイイィン!!
三度、暗黒の波動が繰り出される。
今度は少しも避けることができずまともに食らってしまった。
「くっ……」
紋章剣をその場に突き刺して立ち上がろうとするも力が思うように入らない。
「これで分かっただろぉ~? てめぇのすばやさは∞でもこっちのステータスも∞なわけよ! 攻撃が避けられなくて残念だったなぁ!」
「……ならどうして俺の攻撃を受けてあんたは無傷なんだ?」
「あん?」
お互いにステータスが∞なら本来は互角の戦いになるはずだ。
俺が攻撃を避けられなかったり、相手が無傷だったりするのはおかしい。
「んなもん当然だろ? オレサマとてめぇの間には圧倒的なオーラ値の差があるわけだからな」
「オーラ値?」
「はぁ? おい嘘だろぉ? オーラ値も知らねぇーで戦ってたのかよ? ヒャッハハ! こりゃほんと傑作だぜぇ~!」
魔王は勝ち誇ったように胸を張る。
もう決着はついたものと思ってるんだろう。
「冥土のみやげにまた特別に教えてやるよ。オーラ値ってのはな。簡単に言えばこの世界での存在感を示す数値みたいなもんだ。ステータス見りゃ一発で分かんだろ?」
「なんのことを言ってる?」
「APって表示されてるだろーが。それがオーラ値なんだよ」
あぁなるほど。
これまでずっと謎だったAPの意味がようやく分かった。
(この世界での存在感、ね)
仲間を増やすたびにこの数値が上昇していったのもこれで納得できる。
AP1の村人だった頃と違って今はそれなりに存在感があるってことか。
「んでよ。戦闘面でもこのAPは重要になってくるってわけだ。今言ったよな? オレサマとてめぇの間には圧倒的なオーラ値の差があるって。さっきてめぇのAPを確認したが10万って表示されてたなぁー」
「10万?」
「まさかてめぇ。自分のオーラ値すら把握してなかったのか?」
「俺のAPは2万5千のはずだ」
が、そこで思い直した。
勇者に覚醒したことでこの世界での存在感がさらに増したのかもしれない。
「どっちでも同じだ! 2万5千だろうが10万だろうが! よくそんなゴミみてぇな数値でオレサマに戦いを挑もうと思ったな。その度胸だけは褒めてやってもいいぜ!」
威圧しながらジャイオーンが俺の前に立ちはだかる。
「打ち震えて聞きやがれ。オレサマのオーラ値はなぁ、500万なんだよ!」
「!」
これが事実なら相手との間には50倍もの戦力の開きがあるってことになる。
どうりで無傷なわけだ。
「だからいくらてめぇが立ち向かったところでオレサマを倒すことは不可能ッ! 力の差は歴然だなぁオイ? どうだ。少しは絶望してきただろぉ~? クッハハ!」
たしかに絶望的と呼んでいい状況だ。
これだけの戦力差があればジャイオーンが言うように勝つことは難しいかもしれない。
魔族相手にダメージを与えるには、【煌世主の意志】があっても、ステータスが∞でもダメだったんだ。
そして。
この瞬間、俺は理解する。
以前の俺がニズゼルファに勝てなかった理由はこれなんだって。
圧倒的なオーラ値の差を埋めない限り、魔族は倒すことができないんだ。
応援ありがとうございます!
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