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第1話-2 【強引なキス】「俺が涙、止めてやる」
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「……どうぞ」
重厚な扉が開くと、そこはまるで高級ホテルのスイートルームだった。
間接照明に照らされた広い玄関、廊下の奥に広がるリビングからは、雨に煙る東京の夜景が一望できる。
「すっご……」
あまりの別世界に、言葉が出ない。
高校時代、同じ教室でバカ笑いしていた彼が、今はこんな場所に住んでいる。 それに引き換え、私は。
(浮気されて、家も追い出されて、びしょ濡れで……)
玄関の鏡に映った自分は、髪も服もぐしゃぐしゃで、捨てられた野良犬みたいに惨めだった。
「ほら、タオル。とりあえず拭けよ」
蒼が真っ白なふかふかのタオルを私の頭にポンと乗せる。
その手つきは、昔と変わらず乱暴で、でも泣きたくなるほど温かい。
「……ありがと」 「あと、服。俺のTシャツでいいか? 乾燥機回しとくから」
手際よく世話を焼いてくれる彼を見ていると、胸の奥がキリキリと痛んだ。
彼は完全に「向こう側」に行ってしまったんだ。
仕事も成功して、スマートで、余裕があって。
私だけが、あの頃から何も変わらず、ただ歳をとって、ボロボロになって。
「あのさ、萌」
不意に、蒼が真剣なトーンで切り出した。
「お前、行くあてないんだろ」 「え……」 「しばらくうちにいろよ。部屋、余ってるし」
その言葉は、今の私にとって一番欲しい救いの手だった。
でも、だからこそ、情けなくてたまらない。
「……う、ぐ……っ」
張り詰めていた糸が、プツンと切れた。
「……何で、そんな優しくするのよぉ……」
「はあ?」
「私なんか……浮気されて、捨てられて……っ、何の価値もないのに……っ」
一度溢れ出した涙は、もう止まらなかった。
元カレに言われた酷い言葉や、同窓会での友人の同情の目、惨めな自分の姿が頭の中をぐるぐると回る。
ポロポロと大粒の涙が床に落ちた。
「うあ……っ、うう……っ」
子供みたいにしゃくりあげる私を、蒼は黙って見下ろしていた。
呆れられる。きっと、「面倒くさい女」だと思われる。
そう思って身を縮こまらせた時、ガシッと強い力で腕を掴まれた。
「っ!?」
そのまま、背後の壁にドンッ! と押し付けられる。
「あ、お……い……?」
驚いて見上げると、そこには今まで見たことのない、獲物を狙う獣のような目をした彼がいた。
「いつまであいつのこと考えてんだよ」
「え……」
「お前を泣かすような男のために、その涙使うな」
低い声が鼓膜を震わせる。 怒っているようにも、焦れているようにも聞こえた。
「でも、止まんない……っ」
「そうかよ。……なら、俺が止めてやる」
蒼の顔が、急速に近づいてきた。
「んっ……!?」
唇が、塞がれた。 優しいものじゃない。
噛みつくような、独占欲に満ちたキス。
驚きで目を見開く私の視界いっぱいに、長いまつ毛と、男の顔をした蒼が映る。
「ん、ぁ……っ、ちょっ、あお……!」
抵抗しようと胸を押すが、ビクともしない。
一度唇が離れたかと思うと、すぐに角度を変えて、再び深く押し当てられる。
「んむ……っ、ふ……ぁ」
チュッ、と水音が響くほど濃厚に吸われ、思考が真っ白になる。
さっきまで「友達」だったはずの彼が、今は完全に「オス」の匂いをさせて私を貪っている。
息継ぎの隙間さえ与えてくれない。 右へ、左へと角度を変えられ、唇の端から甘い痺れが全身に広がっていく。
「ん……っ、んんっ……!」
(だめ、腰が……力入らない……)
頭がクラクラして、足の力が抜けていく。
私は壁に背中を預けたまま、ズルズルとその場に崩れ落ちそうになった。
それでも蒼は許してくれない。
逃げる私の顎を大きな手で固定し、崩れ落ちる私の体を片腕で抱き留めながら、さらに深く、執拗に唇を奪い続ける。
涙なんて、とっくに止まっていた。
あるのは、激しい動悸と、唇に残る彼の熱だけ。
ようやく彼が顔を離した時、私は酸欠で肩で息をしながら、へなへなと壁に寄りかかって座り込んでしまった。
「……はぁ、はぁ……っ」
見下ろす蒼が、口元を親指で拭いながら、意地悪くニヤリと笑う。
「ほら、止まっただろ?」
その顔は、高校時代の悪ガキのようで、でもどうしようもなく「男」の色気に満ちていて。
私は真っ赤な顔で、ただ彼を見上げることしかできなかった。
重厚な扉が開くと、そこはまるで高級ホテルのスイートルームだった。
間接照明に照らされた広い玄関、廊下の奥に広がるリビングからは、雨に煙る東京の夜景が一望できる。
「すっご……」
あまりの別世界に、言葉が出ない。
高校時代、同じ教室でバカ笑いしていた彼が、今はこんな場所に住んでいる。 それに引き換え、私は。
(浮気されて、家も追い出されて、びしょ濡れで……)
玄関の鏡に映った自分は、髪も服もぐしゃぐしゃで、捨てられた野良犬みたいに惨めだった。
「ほら、タオル。とりあえず拭けよ」
蒼が真っ白なふかふかのタオルを私の頭にポンと乗せる。
その手つきは、昔と変わらず乱暴で、でも泣きたくなるほど温かい。
「……ありがと」 「あと、服。俺のTシャツでいいか? 乾燥機回しとくから」
手際よく世話を焼いてくれる彼を見ていると、胸の奥がキリキリと痛んだ。
彼は完全に「向こう側」に行ってしまったんだ。
仕事も成功して、スマートで、余裕があって。
私だけが、あの頃から何も変わらず、ただ歳をとって、ボロボロになって。
「あのさ、萌」
不意に、蒼が真剣なトーンで切り出した。
「お前、行くあてないんだろ」 「え……」 「しばらくうちにいろよ。部屋、余ってるし」
その言葉は、今の私にとって一番欲しい救いの手だった。
でも、だからこそ、情けなくてたまらない。
「……う、ぐ……っ」
張り詰めていた糸が、プツンと切れた。
「……何で、そんな優しくするのよぉ……」
「はあ?」
「私なんか……浮気されて、捨てられて……っ、何の価値もないのに……っ」
一度溢れ出した涙は、もう止まらなかった。
元カレに言われた酷い言葉や、同窓会での友人の同情の目、惨めな自分の姿が頭の中をぐるぐると回る。
ポロポロと大粒の涙が床に落ちた。
「うあ……っ、うう……っ」
子供みたいにしゃくりあげる私を、蒼は黙って見下ろしていた。
呆れられる。きっと、「面倒くさい女」だと思われる。
そう思って身を縮こまらせた時、ガシッと強い力で腕を掴まれた。
「っ!?」
そのまま、背後の壁にドンッ! と押し付けられる。
「あ、お……い……?」
驚いて見上げると、そこには今まで見たことのない、獲物を狙う獣のような目をした彼がいた。
「いつまであいつのこと考えてんだよ」
「え……」
「お前を泣かすような男のために、その涙使うな」
低い声が鼓膜を震わせる。 怒っているようにも、焦れているようにも聞こえた。
「でも、止まんない……っ」
「そうかよ。……なら、俺が止めてやる」
蒼の顔が、急速に近づいてきた。
「んっ……!?」
唇が、塞がれた。 優しいものじゃない。
噛みつくような、独占欲に満ちたキス。
驚きで目を見開く私の視界いっぱいに、長いまつ毛と、男の顔をした蒼が映る。
「ん、ぁ……っ、ちょっ、あお……!」
抵抗しようと胸を押すが、ビクともしない。
一度唇が離れたかと思うと、すぐに角度を変えて、再び深く押し当てられる。
「んむ……っ、ふ……ぁ」
チュッ、と水音が響くほど濃厚に吸われ、思考が真っ白になる。
さっきまで「友達」だったはずの彼が、今は完全に「オス」の匂いをさせて私を貪っている。
息継ぎの隙間さえ与えてくれない。 右へ、左へと角度を変えられ、唇の端から甘い痺れが全身に広がっていく。
「ん……っ、んんっ……!」
(だめ、腰が……力入らない……)
頭がクラクラして、足の力が抜けていく。
私は壁に背中を預けたまま、ズルズルとその場に崩れ落ちそうになった。
それでも蒼は許してくれない。
逃げる私の顎を大きな手で固定し、崩れ落ちる私の体を片腕で抱き留めながら、さらに深く、執拗に唇を奪い続ける。
涙なんて、とっくに止まっていた。
あるのは、激しい動悸と、唇に残る彼の熱だけ。
ようやく彼が顔を離した時、私は酸欠で肩で息をしながら、へなへなと壁に寄りかかって座り込んでしまった。
「……はぁ、はぁ……っ」
見下ろす蒼が、口元を親指で拭いながら、意地悪くニヤリと笑う。
「ほら、止まっただろ?」
その顔は、高校時代の悪ガキのようで、でもどうしようもなく「男」の色気に満ちていて。
私は真っ赤な顔で、ただ彼を見上げることしかできなかった。
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