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第一章 18歳 キスで補給
第3話 幼馴染に触りたい
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コンコン、とガラスを叩く軽い音が静寂を破った。
奈々はびくりと肩を跳ねさせ、ベッドの上で身を固くする。
カーテンの隙間から見えたのは、見慣れた人影。隣の家のベランダから、慣れた身のこなしでこちらのベランダへと飛び移ってきたユウだった。
子供の頃から、親に内緒でゲームをしたり、テスト勉強を押し付け合ったりする時の、二人の間の「当たり前」の合図。
「おい、奈々。……起きてるか?」
低い、けれどどこか安心させるユウの声。
いつもなら「勝手に入ってこないでよ」と軽口で返すところだが、今の奈々には、その声さえも脳を痺れさせる甘い毒のように響いた。
「……ユウ、……だめ。今日は、帰って……っ」
喉が焼けるように熱い。奈々は顔を伏せ、布団を頭から被った。
しかし、ユウは「悪いな」と呟きながら、鍵の閉まっていない窓を音もなく滑らせて部屋に侵入してきた。
「いや、さ。さっき渡したブレスレット、サイズ大丈夫だったかなって。……奈々?」
部屋の主の異様な様子に、ユウの声から余裕が消える。
スニーカーを脱ぎ、ゆっくりとベッドへ近づいてくる気配。
床を踏む微かな振動が、奈々の過敏になった肌を粟立たせた。
「なんだよ、具合悪いのか? さっきまであんなに元気だったのに……。おい、見せろよ」
「……こないで……っ」
拒絶の言葉とは裏腹に、奈々の鼻腔は、至近距離から漂ってくるユウの「オス」としての香りを強烈に捉えていた。
清潔な柔軟剤の奥にある、生命力に満ちた体温の匂い。
それが、奈々の体内に潜む「サキュバス」を狂喜乱舞させる。
「っ……!」
強引に布団を剥ぎ取られた。
「見せろって、顔……」と言いかけたユウの言葉が、凍りついたように止まる。
月の光の下、乱れた黒髪の間から覗く奈々の顔。
頬は薔薇色を通り越して真っ赤に上気し、潤んだ瞳は——暗闇の中で不気味なほどに鮮やかな、緋色に染まっていた。
「奈々……お前、その目……それに、すげぇ熱……」
ユウが驚きに目を見開き、反射的に奈々の額に手を伸ばす。
奈々よりも大きな掌が、奈々の熱い肌に触れた。
「あ……っ、ん……!」
触れられた場所から、電撃のような快感が走り抜ける。
奈々は、自分の奥底で「理性の鎖」がパチンと音を立てて千切れるのを感じた。
(だめ。この手を振り払わなきゃ。記憶を消すなんて、そんなの、ひどすぎる……)
頭では分かっている。
けれど、触れられた部分から流れ込んでくるユウのエネルギーが、飢餓に苦しむ奈々の細胞を一つ残らず潤していく。
もっと、もっと欲しい。
この温かい肌に触れていたい。
彼の中に溶けてしまいたい。
「奈々、しっかりしろ! 病院行くか? それともおばさんを……」
心配そうに顔を覗き込んでくるユウ。
その無防備な首筋、脈打つ頸動脈。
奈々の視界は完全に真っ赤に染まり、目の前の大切な幼馴染が、耐え難いほど魅力的な「獲物」へと書き換えられていく。
「ユウ……、くん……」
奈々は、自分でも驚くほど艶を帯びた声で彼の名を呼んだ。
震える指先が、ユウのシャツの裾をぎゅっと掴む。
行かないで。助けて。それとも、私を壊して。
ぐちゃぐちゃになった感情が、涙となって緋色の瞳から溢れ出した。
「どうしたんだよ……、俺にできること、あんのか?」
ユウの困惑した、けれどどこまでも優しい声。
その優しさに甘えてしまいたい衝動が、奈々の最後の一線を今、踏み越えようとしていた。
「俺……お前のそんな顔、見たことない」
ユウの喉仏が、緊張で小さく動いた。
奈々の潤んだ緋色の瞳、乱れた吐息、そして何より、普段の控えめな彼女からは想像もつかないほどの色香。
それを至近距離で浴びせられ、ユウの頬もまた、火をつけられたように熱くなっていく。
「何が起きてるか分かんねぇけど……。奈々が苦しいなら、俺、何だってする。俺にできることがあれば、遠慮すんな」
ユウの声は微かに震えていたが、その眼差しには、幼い頃から変わらない真っ直ぐな誠実さが宿っていた。
その優しさが、今の奈々には何よりも残酷だった。
奈々はびくりと肩を跳ねさせ、ベッドの上で身を固くする。
カーテンの隙間から見えたのは、見慣れた人影。隣の家のベランダから、慣れた身のこなしでこちらのベランダへと飛び移ってきたユウだった。
子供の頃から、親に内緒でゲームをしたり、テスト勉強を押し付け合ったりする時の、二人の間の「当たり前」の合図。
「おい、奈々。……起きてるか?」
低い、けれどどこか安心させるユウの声。
いつもなら「勝手に入ってこないでよ」と軽口で返すところだが、今の奈々には、その声さえも脳を痺れさせる甘い毒のように響いた。
「……ユウ、……だめ。今日は、帰って……っ」
喉が焼けるように熱い。奈々は顔を伏せ、布団を頭から被った。
しかし、ユウは「悪いな」と呟きながら、鍵の閉まっていない窓を音もなく滑らせて部屋に侵入してきた。
「いや、さ。さっき渡したブレスレット、サイズ大丈夫だったかなって。……奈々?」
部屋の主の異様な様子に、ユウの声から余裕が消える。
スニーカーを脱ぎ、ゆっくりとベッドへ近づいてくる気配。
床を踏む微かな振動が、奈々の過敏になった肌を粟立たせた。
「なんだよ、具合悪いのか? さっきまであんなに元気だったのに……。おい、見せろよ」
「……こないで……っ」
拒絶の言葉とは裏腹に、奈々の鼻腔は、至近距離から漂ってくるユウの「オス」としての香りを強烈に捉えていた。
清潔な柔軟剤の奥にある、生命力に満ちた体温の匂い。
それが、奈々の体内に潜む「サキュバス」を狂喜乱舞させる。
「っ……!」
強引に布団を剥ぎ取られた。
「見せろって、顔……」と言いかけたユウの言葉が、凍りついたように止まる。
月の光の下、乱れた黒髪の間から覗く奈々の顔。
頬は薔薇色を通り越して真っ赤に上気し、潤んだ瞳は——暗闇の中で不気味なほどに鮮やかな、緋色に染まっていた。
「奈々……お前、その目……それに、すげぇ熱……」
ユウが驚きに目を見開き、反射的に奈々の額に手を伸ばす。
奈々よりも大きな掌が、奈々の熱い肌に触れた。
「あ……っ、ん……!」
触れられた場所から、電撃のような快感が走り抜ける。
奈々は、自分の奥底で「理性の鎖」がパチンと音を立てて千切れるのを感じた。
(だめ。この手を振り払わなきゃ。記憶を消すなんて、そんなの、ひどすぎる……)
頭では分かっている。
けれど、触れられた部分から流れ込んでくるユウのエネルギーが、飢餓に苦しむ奈々の細胞を一つ残らず潤していく。
もっと、もっと欲しい。
この温かい肌に触れていたい。
彼の中に溶けてしまいたい。
「奈々、しっかりしろ! 病院行くか? それともおばさんを……」
心配そうに顔を覗き込んでくるユウ。
その無防備な首筋、脈打つ頸動脈。
奈々の視界は完全に真っ赤に染まり、目の前の大切な幼馴染が、耐え難いほど魅力的な「獲物」へと書き換えられていく。
「ユウ……、くん……」
奈々は、自分でも驚くほど艶を帯びた声で彼の名を呼んだ。
震える指先が、ユウのシャツの裾をぎゅっと掴む。
行かないで。助けて。それとも、私を壊して。
ぐちゃぐちゃになった感情が、涙となって緋色の瞳から溢れ出した。
「どうしたんだよ……、俺にできること、あんのか?」
ユウの困惑した、けれどどこまでも優しい声。
その優しさに甘えてしまいたい衝動が、奈々の最後の一線を今、踏み越えようとしていた。
「俺……お前のそんな顔、見たことない」
ユウの喉仏が、緊張で小さく動いた。
奈々の潤んだ緋色の瞳、乱れた吐息、そして何より、普段の控えめな彼女からは想像もつかないほどの色香。
それを至近距離で浴びせられ、ユウの頬もまた、火をつけられたように熱くなっていく。
「何が起きてるか分かんねぇけど……。奈々が苦しいなら、俺、何だってする。俺にできることがあれば、遠慮すんな」
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