11 / 14
第一章 18歳 キスで補給
第11話 (ミカ視点)彼氏面の幼馴染
しおりを挟む
教室の引き戸を開けた瞬間、私は思わず目を細めた。
いつもなら始業ベルぎりぎりに、寝癖を爆発させて飛び込んでくるはずのユウが、なんと自分の席に座って教科書なんて広げている。
いや、広げているだけで、視線は窓の外の校門付近をこれでもかと気にしているのが丸わかりだ。
(……あーあ。分かりやすすぎて、見てるこっちが恥ずかしくなるわ)
奈々が教室に入ってきた瞬間、ユウの肩がビクッと跳ねた。
昨夜、大人の階段を一歩(いや、半歩くらい?)踏み出した余裕のつもりか、それとも奈々が来るのが待ち遠しすぎて早く来ちゃったのか。
どっちにしろ、あの「俺、ちょっといいことありました」と言わんばかりの、締まりのない口元がすべてを物語っている。
ふと、昔のことを思い出した。
小学生の頃、転んで膝を擦りむいた奈々を、ユウが泣きそうな顔で背負って帰ったあの日。
中学生の頃、奈々が知らない男子にラブレターをもらって、ユウが三日間くらい露骨に不機嫌だったあの日。
いつだって私たち三人は一緒だった。
がさつで直情的なユウと、控えめで危うい奈々。
私はその真ん中で、二人の絶妙なバランスを眺めるのが好きだった。
けれど。
「よ、よぉ、奈々。……おはよ」
ユウが立ち上がり、わざとらしくぶっきらぼうな声を出しながら奈々に近づいてくる。
その歩き方、その距離の詰め方。……完全に「彼氏面」じゃない。
昨夜、宿命を共有して「非常食」としての契約を交わしたことで、あのがさつ男の中で何かが決定的に変わってしまったらしい。
奈々は奈々で、ユウの顔を見た瞬間にまた真っ赤になって、カバンを抱きしめて固まっている。
私はユウの背後に音もなく忍び寄り、その背中を思い切りパシッと叩いた。
「うおっ!? ……なんだよミカ、痛ぇな!」
「何よ、そのニヤついた面。朝から暑苦しいんだけど」
私はジト目でユウを睨みつけ、それから彼にだけ聞こえるような低い声で囁いた。
「……奈々から全部聞いたわよ。あんた、昨夜のこと」
ユウの顔が、一瞬で奈々と同じ色まで沸騰した。
「なっ、あいつ、話したのかよ……っ」と狼狽えるユウ。
私はその胸ぐらを掴む勢いで、ビシッと指を突きつけた。
「いい? ユウ。奈々があんな体質になっちゃって、不安なのは分かるでしょ。あんたが『協力』するのはいいけど……もし、どさくさに紛れて奈々に嫌な思いさせたり、無理やり変なことしたりしたら……」
私は笑いながら、けれど目だけは笑わずに、ユウの足の甲を思い切り踏みつけた。
「その時は、幼馴染の縁を切るだけじゃ済まさないから。……分かってるわよね?」
「い、痛ってぇ……! 分かってるよ、あんなに震えてる奴にひどいことできるわけねーだろ!」
ユウは半泣きで足をさすりながらも、ちらりと奈々の方を見た。
その瞳には、下心以上に、彼女を守りたいという真っ直ぐで不器用な決意が宿っている。
(……まあ、あんたなら大丈夫だと思うけどね)
私はフンと鼻を鳴らして、自分の席へ向かった。
二人の間に流れる空気は、昨日までとは明らかに違う、甘くてどこか危うい熱を帯びている。
親友として心配なのは山々だけど……。
「……さて。これからの『補給タイム』、どうやって冷やかしてあげようかしら」
私の高校生活も、俄然、面白くなってきた。
いつもなら始業ベルぎりぎりに、寝癖を爆発させて飛び込んでくるはずのユウが、なんと自分の席に座って教科書なんて広げている。
いや、広げているだけで、視線は窓の外の校門付近をこれでもかと気にしているのが丸わかりだ。
(……あーあ。分かりやすすぎて、見てるこっちが恥ずかしくなるわ)
奈々が教室に入ってきた瞬間、ユウの肩がビクッと跳ねた。
昨夜、大人の階段を一歩(いや、半歩くらい?)踏み出した余裕のつもりか、それとも奈々が来るのが待ち遠しすぎて早く来ちゃったのか。
どっちにしろ、あの「俺、ちょっといいことありました」と言わんばかりの、締まりのない口元がすべてを物語っている。
ふと、昔のことを思い出した。
小学生の頃、転んで膝を擦りむいた奈々を、ユウが泣きそうな顔で背負って帰ったあの日。
中学生の頃、奈々が知らない男子にラブレターをもらって、ユウが三日間くらい露骨に不機嫌だったあの日。
いつだって私たち三人は一緒だった。
がさつで直情的なユウと、控えめで危うい奈々。
私はその真ん中で、二人の絶妙なバランスを眺めるのが好きだった。
けれど。
「よ、よぉ、奈々。……おはよ」
ユウが立ち上がり、わざとらしくぶっきらぼうな声を出しながら奈々に近づいてくる。
その歩き方、その距離の詰め方。……完全に「彼氏面」じゃない。
昨夜、宿命を共有して「非常食」としての契約を交わしたことで、あのがさつ男の中で何かが決定的に変わってしまったらしい。
奈々は奈々で、ユウの顔を見た瞬間にまた真っ赤になって、カバンを抱きしめて固まっている。
私はユウの背後に音もなく忍び寄り、その背中を思い切りパシッと叩いた。
「うおっ!? ……なんだよミカ、痛ぇな!」
「何よ、そのニヤついた面。朝から暑苦しいんだけど」
私はジト目でユウを睨みつけ、それから彼にだけ聞こえるような低い声で囁いた。
「……奈々から全部聞いたわよ。あんた、昨夜のこと」
ユウの顔が、一瞬で奈々と同じ色まで沸騰した。
「なっ、あいつ、話したのかよ……っ」と狼狽えるユウ。
私はその胸ぐらを掴む勢いで、ビシッと指を突きつけた。
「いい? ユウ。奈々があんな体質になっちゃって、不安なのは分かるでしょ。あんたが『協力』するのはいいけど……もし、どさくさに紛れて奈々に嫌な思いさせたり、無理やり変なことしたりしたら……」
私は笑いながら、けれど目だけは笑わずに、ユウの足の甲を思い切り踏みつけた。
「その時は、幼馴染の縁を切るだけじゃ済まさないから。……分かってるわよね?」
「い、痛ってぇ……! 分かってるよ、あんなに震えてる奴にひどいことできるわけねーだろ!」
ユウは半泣きで足をさすりながらも、ちらりと奈々の方を見た。
その瞳には、下心以上に、彼女を守りたいという真っ直ぐで不器用な決意が宿っている。
(……まあ、あんたなら大丈夫だと思うけどね)
私はフンと鼻を鳴らして、自分の席へ向かった。
二人の間に流れる空気は、昨日までとは明らかに違う、甘くてどこか危うい熱を帯びている。
親友として心配なのは山々だけど……。
「……さて。これからの『補給タイム』、どうやって冷やかしてあげようかしら」
私の高校生活も、俄然、面白くなってきた。
0
あなたにおすすめの小説
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。
イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。
きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。
そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……?
※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。
※他サイトにも掲載しています。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
数年振りに再会した幼馴染のお兄ちゃんが、お兄ちゃんじゃなくなった日
プリオネ
恋愛
田舎町から上京したこの春、5歳年上の近所の幼馴染「さわ兄」と再会した新社会人の伊織。同じく昔一緒に遊んだ友達の家に遊びに行くため東京から千葉へ2人で移動する事になるが、その道中で今まで意識した事の無かったさわ兄の言動に初めて違和感を覚える。そしてその夜、ハプニングが起きて………。
春にぴったりの、さらっと読める短編ラブストーリー。※Rシーンは無いに等しいです※スマホがまだない時代設定です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる