キスだけの契約だったのに。幼馴染に美味しく食べられて、溺愛されています

小木楓

文字の大きさ
12 / 14
第一章 18歳 キスで補給

第12話 ♥二人きりの図書室で秘密の補給

しおりを挟む
あれから数週間。

奈々の周囲の空気は、目に見えて変わっていった。

もともと美人ではあったが、18歳を境に、彼女の肌は内側から発光するような瑞々しさを帯び、黒髪は夜の闇を溶かしたように艶めいた。

無意識に振りまかれる甘い香りは、廊下ですれ違う男子生徒たちの足を止めさせ、放課後の下駄箱には主のいない手紙が何通も投げ込まれるようになった。

「……また、告白されちゃった」

図書室の隅で、奈々は深くため息をつく。 

サキュバスとしての本能が目覚めるたび、彼女の美しさは毒のように鋭さを増していく。

けれど、人見知りの彼女にとって、向けられる視線の熱はただただ恐ろしいものだった。

そして、ついに「その日」がやってきた。

六時間目の現代文。 

窓から差し込む午後の光が、嫌にねっとりと肌にまとわりつく。

 奈々は教科書の文字を追おうとしたが、視界がじわりと歪み始めていた。

(あ、つい……。……だめ、今日なんだ……)

下腹部の奥から、せり上がるような熱。 ふと、隣の列に座る男子生徒の、半袖から覗く逞しい腕が目に入った。

——美味しそう。 その瞬間、頭の中に響いたどろりとした思考に、奈々は戦慄した。

肌に流れる血管、脈打つ熱、そのすべてを吸い尽くしたいという猛烈な渇望。

「奈々……? 顔、真っ赤だよ。大丈夫?」

後ろの席からミカが小声で囁く。 奈々は震える手で顔を覆い、首を横に振った。

「だい、じょうぶ……。放課後まで、あと少しだから……っ」

けれど、状況は悪化する一方だった。

クラス中の男子の「匂い」が、暴力的なまでの誘惑となって奈々の鼻腔を突き刺す。

誰でもいい、誰でもいいからこの熱を鎮めて。

そんな獣のような本能が、理性の薄皮を一枚ずつ剥ぎ取っていく。

キーンコーンカーンコーン。

終礼のチャイムが鳴った瞬間、奈々はカバンを掴んで教室を飛び出した。 

「奈々!」というミカの声を背に、彼女が向かったのは、放課後の人気のない旧館——

図書室の奥にある、閉鎖された資料室だった。

「はぁ、……あ、つ……っ、ふ、ぅ……」

ひんやりとした書庫の空気に触れても、体内の炎は消えない。

奈々は書棚にしがみつき、ずるずると床にへたり込んだ。

瞳はすでに、濁りのない鮮やかな緋色に染まり、視界にあるものすべてが赤く明滅している。

ガタッ、と。 静まり返った図書室の入り口で、扉が勢いよく開く音がした。

「……奈々! どこだ、奈々!」

焦燥に駆られた、荒々しい足音。

廊下を走ってきたのだろう、肩で息をするユウの匂いが、扉が開いた瞬間に流れ込んできた。

他の男子とは違う。

奈々が一番よく知っている、一番欲しがっている、陽だまりのようなエネルギー。

「……あ、ユウ……くん……」

奈々の喉から、熱に浮かされたような、掠れた嬌声が漏れた。

暗い資料室の奥。緋色の瞳を爛々と輝かせ、潤んだ唇を戦慄かせて自分を見上げる奈々の姿を認め、ユウは息を呑んだ。

「……バカ、お前……。限界ならすぐ呼べって言っただろ」

ユウがゆっくりと、獲物を追い詰めるような、あるいは壊れ物を扱うような足取りで歩み寄る。

奈々の理性が、パチンと音を立てて弾けた。

「……っ、奈々!」

ユウが駆け寄り、その場に膝をついた瞬間だった。 

奈々の細い腕が、まるで飢えた獣のようにユウの首にしがみついた。

「は、……っ、ん……!」

言葉になる前の熱い吐息が、ユウの唇を塞ぐ。 それは「キス」と呼ぶにはあまりに激しく、略奪に近いものだった。

奈々の唇は震え、必死にユウの口内を、彼の体温を、魂の欠片さえも啜り上げようと貪欲に動く。

ユウは背後の書棚に背中を打ち付けたが、痛みを感じる余裕さえなかった。 

鼻腔を突くのは、普段の奈々からは考えられないほど濃厚で、熟れた果実のような甘い香りと、微かな涙の匂い。

視界の端で、彼女の緋色の瞳が、陶酔と苦痛の入り混じった色で潤んでいるのが見えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。

イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。 きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。 そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……? ※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。 ※他サイトにも掲載しています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

数年振りに再会した幼馴染のお兄ちゃんが、お兄ちゃんじゃなくなった日

プリオネ
恋愛
田舎町から上京したこの春、5歳年上の近所の幼馴染「さわ兄」と再会した新社会人の伊織。同じく昔一緒に遊んだ友達の家に遊びに行くため東京から千葉へ2人で移動する事になるが、その道中で今まで意識した事の無かったさわ兄の言動に初めて違和感を覚える。そしてその夜、ハプニングが起きて………。 春にぴったりの、さらっと読める短編ラブストーリー。※Rシーンは無いに等しいです※スマホがまだない時代設定です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

処理中です...