放課後砂時計部!

甘露蜜柑

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休み時間終了の五分前。ほくほく顔で教室に戻ると

「あ、遅かったなー」

戸口に立つ僕へと、隼人がすぐに声をかけてきた。

「ほんとだよ、もー」

と隼人の後ろの席に座る(つまり僕の席だ)華子も声をかけてくる。

「パンにしたの? なら別にレンジ使うわけでもないんだから、帰ってくればよかったのに」

「購買で食ってきたけど、食ったのはパンじゃないぞ」

「は? 今日ってパンじゃなかったか?」

「ああ。そのとおり。売ってたのはパンだけだった」

「じゃあどういう意味よー!?」

「ふっふっふ」

「そんな笑い方、今日日聞かねえなあ」

「ブーメラン!」

「そんなオウンゴールみたいな会話、どうでもいいから何があったか説明してよ」

「オ、オウンゴールってお前なあ……」

「隼人はちょっと黙ってて。で、みっくん。どうしたの?」

「部長にね」

「俺の扱いひどくね?」

「部長? って、戸鞠先輩のこと?」

「うん。実は購買で偶然会ってさ、それで先輩にご馳走になったんだ。それも手作りの弁当を!」

「は? ……ええっ!?」

それってどういうこと!? と華子は立ち上がって大きな声を出すので教室中の注目が集った。

「ちょ、声でけーよ」

隼人が嗜め、華子は「あっ……」と自分に集まる視線に対してゆっくり顔を赤らめていくと再び席に着き(僕の席だけど)、口を開けず手招きをする。
招き猫ならぬ招き華子に従い僕は自分の席に近付いて行くと、そこでもさらに小さく手招きをしてくる。
仕方がないので顔を寄せると「どこをどうしたら戸鞠先輩のお弁当を、って展開になるのよ!?」と耳打ちして聞いてくる。

「うん、話せば長く……はならないか。実はさ、戸鞠先輩、あす姉にお弁当を作ってきたんだけど、あす姉が食べられなくなって弁当が余って――」

するとそこでチャイムが鳴り、僕は話を切り上げることにした。

「まあ、そんな感じ」

僕がそう言うと、華子は分かったような分からなかったような、どっちつかずの顔を見せた。

「とゆーわけで、僕の席を返せ!」

「うん……」

華子は渋々ながら頷いて立ち上がると自分の席に戻っていく。
僕がようやく自分の席に腰掛けると

「戸鞠先輩って?」

と隼人がまた話しかけてくるが「部長の先輩」とだけ僕は答える。
そして授業が始まるまで先ほどのことを思い返そうとしたが、入室する教師の姿が目に入って中断する。
僕は教科書を出して生真面目にノートを開き、前回のところを確かめると気合を入れた。
先輩と交わした約束を果たすため、それからあす姉のアドバイスを生かすため。
何事にもまずは興味と関心を持つことが大事。
そうあす姉は言っていた。

「起立」

日直が気だるげに言い、頭を下げたあとに僕はやる気も一緒に起こす。
午後の光景は、いつもと少しだけ違って見えた。
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みんなの感想(1件)

2021.08.06 ユーザー名の登録がありません

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2021.08.07 甘露蜜柑

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解除

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