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第1章 早速追われる!なぜならバグだもの

6. 元の世界に戻る条件が俺に合いそうにない件①

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穏やかに元の世界に戻ろうと、俺が決意を固めてからは、シェリーが無理して話かけることがなくなった。
とは言え、完全に無言になるような事もなく、自然とした会話はしている。

シェリーはどうやら、俺が転生してきた街とは異なる街で生まれ育ったらしい。
特に上流階級の出身ということもなく、
商人の父と同じ街で育った母を持つ、いわゆる中流家庭の出身だ。
普通のお嬢さんがお姫様を目指すのは、並大抵のことではないと思うのだが、何か考えがあるのか聞いてみると

「それは大人になってから考えればよいかしら」
とのこと。

うん、ノープランってことね。大丈夫。俺も基本ノープランだし。

あ・・・それだと俺みたいな、フラフラした大人になっちゃうぞ~。
と口には出さない、一人乗りツッコミをしてみる。

この事はあまり突っ込んでも、話題の広がりようがなさそうだ。
話題をずらそう。

「そ、そうか・・・まぁ、頑張れ!努力は必ず報われる(キリっ」

とあるアイドルグループの元リーダーの真似をしたのだが、
もちろん伝わることはないだろう。

「ありがとなのよ。見てなさい!私は立派なお姫様になってあげるから!」

どこからどう見ればよろしいのでしょうか、というツッコミは野暮だからよしておく。

「ところで、シェリーは今いくつなんだ?」

さらっと質問すると、ギョッとした顔でこちらを見てくる。

「なっ・・・!レディーに歳を聞くなんて、なんて失礼なのかしら!」

「レディーって、お前さっき自分はまだ子供って言ってたじゃんか。
子供なんだから年齢なんて気にすることでもないだろ?」

「な~~~っ!キィィィ!」

なんか地雷を踏んでしまったらしい。

真っ赤になって、ポカスカぶってくる。
女ってのはイマイチ分からん。

いや、この少女が特別にややこしいのかもしれない。

何度かこんなやりとりをして、俺達は少しずつ歩を進めていった。
ちなみにシェリーは10歳らしい。
まあ、完全守備範囲外なので、年齢なんてどうでもいい事なのだが・・・

しかし、とんでもなく広い草原だ。
もちろん道のようなものはない。
ただ、草の丈は低いため、小さなシェリーでも歩く事が苦にはならなかった。

途中、大きな草食モンスターの群れを見たり、ウサギなどの小動物も見つけた。
そうしたモンスターや動物たちは、ただ見過ごしたが、貧乏性が災いしてか、道すがら薬草や解毒草を見つける度に刈り取っては、アイテムにおさめた。

もう意味がないとは知ってはいるのだが・・・

ちなみに、道中薬草を見つける為にメニューに新たに加わった機能を利用している。

マップ機能だ。

マップには、一定範囲のモンスターの位置や地形が分かる「広域マップ」と
目の前にある採取物やモンスター、プレイヤーの名前や状態が分かる「狭域マップ」の2種類ある。

俺は狭域マップで足元を見ながら歩いている。

薬草を見逃さない為に。せこくなんかないぞ!RPGの基本と言ってくだされ!

そんな中、不思議なモノを見つけた。

「小石【バグ】」

採取物にもバグがあるのか!正直ビックリだ。

他のプレイヤーが見つけて、そいつの報酬になるのもシャクだ。

ドス黒い何かが心を覆う。

おっと!いかん、いかん!

俺は穏やかにこの世界から去るとシェリーに約束したばかりじゃないか。

やれやれってポーズをしている俺を、残念な人を見るような目でみつめないでおくれシェリー嬢。

とにかく心を静めた俺だった。

小石【バグ】はスルー・・・するわけがない。
こっそり持っていこうとして手にとった。

「!!冷たぁぁぁ!」

ドライアイスを素手で持ったら、こんな感じなのかもしれない。
思わず、地面に落してしまった。

ボトンと普通の音を立てて落ちる小石。見た目も至って普通だ。
しかし、火傷するほど冷たい・・・確かにこれはバグだ。

こんな危ないモノが転がっていたら、誰かが火傷するかもしれない!

「仕方ないから、私が持っていって処分してしんぜよう」

決して他人が報酬を得るのがムカツクから持っていくのではない。
決してそれは違う。決して・・・

服を使って器用に取り上げると、アイテムメニューの中に小石【バグ】を入れた。
3つ落ちていたので、3つとも入れておく。

しかし、なんちゅーバグだ。

なんだか、遊び心を感じたような気がしたのだが、この時はそんな事など気にもとめずに先を急いだ。

「もうすぐ、目的の『約束の森』に着くかしら。
そろそろ心の準備をしなさいな」

心の準備かぁ。

まるで処刑台に向かう、囚人にでもなった気分だ。

もっとも、強制退去を命じられてこの世界の住人でなくなるのだから、似たようなものだが・・・

そんな事を考えているうちに、目の前に大きな森が見えてきた。

いよいよ俺のこの世界でのタイムリミットが近づいてきた訳だ。

何か妙な威圧感を森から感じた俺は、ゴクリと唾を飲み込んだ。

あ~、もう少しこの世界を堪能したかったなぁ~・・・




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