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夏
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ビールを飲み干して、次は何にしようとクーラーボックスの中を漁る。チューハイもあるし、焼酎もある。これはきっと律の趣味かな。
レモンの缶チューハイを手にすると、席に戻る。すると私が座っていた横に楓の姿があった。
「どうしたの?」
「横に来たかったから。」
「…そう?でも光がすぐ戻ってこないかしら。」
「戻ってこないよ。しばらくはね。」
「…。」
そうか。光と楓はすべて知っているのだ。光が今日再び律に告白をすることを。
ここに戻ってくるのには時間がかかること。
だから彼はここに来たのだ。
「浴衣似合っている。」
「そうかしら。なんだか窮屈で。」
「君らしい。」
すると彼は私をじっと見ていた。花火なんか見ていないようで、とても恥ずかしい。
「花火。さっきの大きかったわね。」
話題を変えるように私は花火の方をみる。大きな花火は、まるで地面を揺らすようだった。
そのとき後ろから私の腰に手が延びた。
「楓?」
その腕に力が入り、私は楓の方に引き寄せられた。
「楓…。ちょっと何?」
首のあたり。そこにあたたかくて柔らかいものが触れた。
「…ちょっと…。」
振り向かずに、その感触を払いのけようと手を肩に持ってきた。するとその手を掴まれる。
「こっち、向いて。」
向くのが怖かった。私は何もしないでそのままの状態でいた。すると彼がその手を離した。そして腰に回された手もはずされた。ほっとして、立ち上がろうとしたときだった。
彼の方が早く立ち上がり、私の目の前にきた。
「…楓?」
少し微笑み、彼は私の頬に触れ、顔を近づけてくる。
「…やめて。」
肩を押し、それを拒否した。そう言うことをしたくはなかったから。
「誰となら出来る。」
「誰とも出来ないわ。」
「律じゃないのか。」
「…。」
何も言えない。律でもない。という嘘を彼の前でつけなかった。
「律と君は同じ傷を持っているいわば同士だろう。その同情で、君は律を見ているだけだ。そんなものは、恋心と呼ばない。」
「違うわ。何を言っているの?楓。私は…。」
「だったら好きなのか。」
「どうしてそんな考え方にしかならないの?」
「大人同士がずっと一緒にいて、ずっと平行線の関係のままのわけがない。僕はそう思う。」
私はとりあえずその場から離れようとしたが、それを楓は許さなかった。
「少なくても僕は違う。僕は…ずっと君が好きだったから。」
「…楓…。」
体を抱きしめられて、動きがとれない。
「ずっとこうしたかったんだ。」
やめて。やめて。楓。あなたじゃないの。こうして欲しいのはあなたじゃない。
「や…。」
絞り出すように声を出した。でもその願いは楓に届かなかった。
少し体を離し、彼は私の頬に触れた。そして軽く唇に触れるくらいのキスをした。
そのあとも体を抱きしめられていたが、その腕の力がふっと弱まった。
「周?」
目の前が滲んでいる。私は何も言わずに、彼を残したままその場を去ってしまった。
しばらく部屋に戻り、タオルで顔を拭いた。そして化粧を直すと、またベランダに戻った。
「あれ?周どこ行ってたの?」
光も律も戻ってきていて、楓も普段通りだった。
「ちょっと気分が悪くなってね。」
「ビール一本で?あり得ない。」
律はそう言ってコップに焼酎を注いでいた。
目の前のレモンチューハイはもうすでにぬるくなっている。
「今日はやめた方がいいんじゃない?」
楓がそう言って、私にコップを渡してくれた。そしてウーロン茶を注ぐ。
「体調悪そうだったからね。」
「そうだったの?あらやだ。浴衣も締め付けてるから、気持ち悪くなっちゃったんじゃないの?」
光は心配してくれていたが、私は精一杯笑顔を浮かべた。
「平気。平気よ。」
「今日の後かたづけは無理しなくていいから。」
律だけが不思議そうな顔をして私を見ていた。
花火が終わると、簡単にゴミや缶を集めた。作った食事や総菜は少しあまり、冷蔵庫に入れる。
あとの処理は明日する事にした。
先にお風呂に入り、私は風呂場を出たときだった。
「律?」
律はもうすでに甚平を脱いで、キッチンで煙草を吸っていた。
「待ってた。」
「え?」
「ちょっと話できないか。」
それを断ることなんて誰が出来るだろう。私はうなずくと、とりあえず二階に行き、光にお風呂が沸いたことを伝えた。
そしてまた一階に降りる。するともうそこには律の姿はなかった。
外にでも行ったのかもしれない。そう思いながら、私は外に出た。鍵を閉めて、静かになった道路をみる。すると駐車場の所に律がいた。
「律。」
「…飲んでるからな。車の運転は出来ないか。歩く?」
「えぇ。」
私はそう言って彼について行った。今度は海岸ではなく、商店の方へ向かって二人で歩いていった。
祭りの後の静かな夜だった。
レモンの缶チューハイを手にすると、席に戻る。すると私が座っていた横に楓の姿があった。
「どうしたの?」
「横に来たかったから。」
「…そう?でも光がすぐ戻ってこないかしら。」
「戻ってこないよ。しばらくはね。」
「…。」
そうか。光と楓はすべて知っているのだ。光が今日再び律に告白をすることを。
ここに戻ってくるのには時間がかかること。
だから彼はここに来たのだ。
「浴衣似合っている。」
「そうかしら。なんだか窮屈で。」
「君らしい。」
すると彼は私をじっと見ていた。花火なんか見ていないようで、とても恥ずかしい。
「花火。さっきの大きかったわね。」
話題を変えるように私は花火の方をみる。大きな花火は、まるで地面を揺らすようだった。
そのとき後ろから私の腰に手が延びた。
「楓?」
その腕に力が入り、私は楓の方に引き寄せられた。
「楓…。ちょっと何?」
首のあたり。そこにあたたかくて柔らかいものが触れた。
「…ちょっと…。」
振り向かずに、その感触を払いのけようと手を肩に持ってきた。するとその手を掴まれる。
「こっち、向いて。」
向くのが怖かった。私は何もしないでそのままの状態でいた。すると彼がその手を離した。そして腰に回された手もはずされた。ほっとして、立ち上がろうとしたときだった。
彼の方が早く立ち上がり、私の目の前にきた。
「…楓?」
少し微笑み、彼は私の頬に触れ、顔を近づけてくる。
「…やめて。」
肩を押し、それを拒否した。そう言うことをしたくはなかったから。
「誰となら出来る。」
「誰とも出来ないわ。」
「律じゃないのか。」
「…。」
何も言えない。律でもない。という嘘を彼の前でつけなかった。
「律と君は同じ傷を持っているいわば同士だろう。その同情で、君は律を見ているだけだ。そんなものは、恋心と呼ばない。」
「違うわ。何を言っているの?楓。私は…。」
「だったら好きなのか。」
「どうしてそんな考え方にしかならないの?」
「大人同士がずっと一緒にいて、ずっと平行線の関係のままのわけがない。僕はそう思う。」
私はとりあえずその場から離れようとしたが、それを楓は許さなかった。
「少なくても僕は違う。僕は…ずっと君が好きだったから。」
「…楓…。」
体を抱きしめられて、動きがとれない。
「ずっとこうしたかったんだ。」
やめて。やめて。楓。あなたじゃないの。こうして欲しいのはあなたじゃない。
「や…。」
絞り出すように声を出した。でもその願いは楓に届かなかった。
少し体を離し、彼は私の頬に触れた。そして軽く唇に触れるくらいのキスをした。
そのあとも体を抱きしめられていたが、その腕の力がふっと弱まった。
「周?」
目の前が滲んでいる。私は何も言わずに、彼を残したままその場を去ってしまった。
しばらく部屋に戻り、タオルで顔を拭いた。そして化粧を直すと、またベランダに戻った。
「あれ?周どこ行ってたの?」
光も律も戻ってきていて、楓も普段通りだった。
「ちょっと気分が悪くなってね。」
「ビール一本で?あり得ない。」
律はそう言ってコップに焼酎を注いでいた。
目の前のレモンチューハイはもうすでにぬるくなっている。
「今日はやめた方がいいんじゃない?」
楓がそう言って、私にコップを渡してくれた。そしてウーロン茶を注ぐ。
「体調悪そうだったからね。」
「そうだったの?あらやだ。浴衣も締め付けてるから、気持ち悪くなっちゃったんじゃないの?」
光は心配してくれていたが、私は精一杯笑顔を浮かべた。
「平気。平気よ。」
「今日の後かたづけは無理しなくていいから。」
律だけが不思議そうな顔をして私を見ていた。
花火が終わると、簡単にゴミや缶を集めた。作った食事や総菜は少しあまり、冷蔵庫に入れる。
あとの処理は明日する事にした。
先にお風呂に入り、私は風呂場を出たときだった。
「律?」
律はもうすでに甚平を脱いで、キッチンで煙草を吸っていた。
「待ってた。」
「え?」
「ちょっと話できないか。」
それを断ることなんて誰が出来るだろう。私はうなずくと、とりあえず二階に行き、光にお風呂が沸いたことを伝えた。
そしてまた一階に降りる。するともうそこには律の姿はなかった。
外にでも行ったのかもしれない。そう思いながら、私は外に出た。鍵を閉めて、静かになった道路をみる。すると駐車場の所に律がいた。
「律。」
「…飲んでるからな。車の運転は出来ないか。歩く?」
「えぇ。」
私はそう言って彼について行った。今度は海岸ではなく、商店の方へ向かって二人で歩いていった。
祭りの後の静かな夜だった。
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