王道くんと、俺。

葉津緒

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終章

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けれどまさか、そこへ別の第三者が現れるとは誰にも予想できなかったはず。


「うわっ」

「郁人!」「郁人様ッ」


突然ドンッという背後からの衝撃を受けて、つんのめる。
俺よりも大きい誰かが、のし掛かるように抱きついてきたせいです。危ないな、もぉ。


「ふーみとっ、会いたかった♪」

「え? んむッ」


くいっと顔を横に向けさせられた直後、唇にはやわらかな感触が。……あれ、デジャヴュ?



『うおおおおーッ!?』
『ぎゃああああーっ!?』


ほんの一瞬だけ静まり返り、そして再び爆発的に叫びだす周囲の生徒達。
えっと、さすがにうるさ過ぎないかな、これ。
というかこの挨拶キスの仕方はもしかして。


「んぅ、ちょっ……アレク?」

「ん。そうだよぉ久しぶりだね郁人。全然会いに来てくれないから代わりに僕が日本まで来ちゃった。しかも僕、今日からここの留学生だよー。よろしくね郁人♪」


そう言って俺の頬や鼻の頭やおでこ、さらには首筋にまでチュッチュッとキスをしながら抱きついてくるアレク。
いつのまにか俺よりも頭一つ分ほどでかくなっちゃった、大型の洋犬みたいな彼の正体は――。


「だ、誰だお前」
「郁人様ッ」
「え、外国人?」

「なっ、だ、誰ですかこいつッ!? 郁人様から離れろケダモノ!」


ギョッとする周りの反応に少し遅れて、ポカンと固まってた優ちゃんも叫びだす。
ちょこっと涙目になってませんか優ちゃん、どうどう。
ノア……はまだ固まってるね。なんか変な顔してるけど。

うおっ、やめて優ちゃん、無理やり俺の腕を引っ張らないで。背中にくっついてるアレクと引っ張り合ったら、俺が千切れちゃうからね!?


「んー? おやぁ、誰かと思えば“ひっつき虫”の優馬だ。何その話し方。おもしろー」

「は? ひっつき虫……って、まさかお前」


そうそう。
昔、来日中のアレクが覚えたての日本語『ひっつき虫』を連発して(なぜか俺を取り合って)優ちゃんと取っ組み合いの喧嘩になったことがあったんだよね。懐かしいなぁ。
んで、最後には確か二人ともギャン泣きしちゃったような……。


「優ちゃんも会うのは久しぶりだよね、覚えてるかなぁ。あ、皆にも紹介するね。この子は俺の従兄弟いとこのアレクです」

「ふ、郁人様の従兄弟!?」

「そうだよぉ。っていうかアレク、本当に留学するの?」

「うん。それと僕、なるべく郁人のそばにいたいから同じ二年生として編入させてもらったんだ。優馬もよろしくー」

「はああ!?」


アレクは俺より一つ年下なんだけど、そういえば飛び級スキップで高校を卒業したんじゃなかったっけ。あっちの大学はどうするんだろう。


「郁人の従兄弟……? で、でも今のキスは」


頬を染めた歩くんが困惑気味に問いかけてくる。
その隣で眉をひそめ、俺を睨みつける副会長。
うーむ。これは多分、アレクのことも俺同様に破廉恥なやからだとか思ってそう。


「日本と違ってアレクが住んでる国だとキスは挨拶だからねー。まぁ昔から少し他の人よりもスキンシップ過剰気味かなぁ、とは思うけど」


『す、少しか?』
『唇にするの? 挨拶で?』
『いや、どう見ても恋人の……』


確かに普通は頬やおでこくらいで、よほど親しい人同士じゃないと口への挨拶キスはしないんだよね。
でもアレクは初めて会った子供の頃からこんな感じだったし、従兄弟だし。
なんかもう慣れたというか、じゃれつくワンコみたいで可愛いから別にいいかなって。
え、やっぱりダメなの?
前に一度、口へのキスはやめよう、って言ったらすんごい悲しそうな顔で

「だめ? 絶対いや? どうしても? 郁人、俺のこと嫌いになった?」

と泣きつかれて……かわいそう過ぎて断れなかったんだよなぁ。うーん。(※だまされてます)


「と、とにかく郁人様から離れろアレク! いつまで抱きついてる気だッ」

「わわっ」


優ちゃんが強く俺の腕を引っ張り、アレクが「優馬うるさーい」とようやく解放してくれて。
バランスを崩しかけた俺の身体は、けれど優ちゃんとは逆の方向へ引っ張られ――

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