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「お節介だったでしょうけど、何度も来られたら困りますからね」
フエアラはマリアール侯爵家にバインダとクーカが押し掛けたことなどは知らなかったが、待ち伏せをしていたと聞いて、リリカと話ができない状態なのだろうと察しただけである。
「はい、申し訳ございませんでした」
「いいのよ、仕事に戻って頂戴」
「はい!」
リリカは持ち場に戻って行き、フエアラは担当させていたメイドに声を掛けた。
「どうだった?」
「怒られ、責められておられました。マリアール侯爵家にどうにかしてもらえないのか、どこで何をしていたのか、どうして戻らなかったのかと問い詰めておりました。後で発言をまとめて提出いたします」
「ありがとう。あの両親ならそうなるでしょうね」
追い詰めた両親であることは、有名な話であるために、姉であるクリーナから聞いていたこともあるが、フエアラも知っている。
優しい雇い主なら追い返したかもしれないが、フエアラはクリーナから、リリカの様子を伺って欲しいと頼まれており、良いチャンスだと思った。
「何か気になることはあった?」
雇い主に何か話すことはないだろうが、追い詰めたような親と一緒にすれば、冷静さを失うのではないかと考え、両親もフアエラがいたら本性を現さないだろうと席を外した。
だからこそ、記憶力の良い機微に聡い侍女・マイーサをメイドとして付けて、リリカの様子を伺わせることにした。マイーサはバインダとクーカではなく、リリカの動きや表情がよく見える場所に控えていた。
「男と逃げたと言われた際には、とても驚いていました」
「まさか図星って顔?」
「いえ、図星というより、素直に驚いたように見えました」
「そう……」
そんな話になるなんてと、単に驚いただけなのか。何か疚しいことがあったのか。
「男がいたと思う?」
「母親はあり得ないと馬鹿にしておりましたが、男性ではないとしても、誰かいたのではないか、何かあるのかと私は感じました」
「やっぱり誰かいるのかしら……お姉様も手助けした人間がいると言われた方が納得できると言っていたわ」
「私もそう思います」
フエアラはクリーナもマイーサもそう言うのなら、証拠が欲しいところだなと考えていた。
「子どものことも、認めてもらえると思っていたとも言っておりました」
「そこも、お姉様の言う通りね。でもね、子どもも正直、生まれたばかりなら違うけど、もう2歳でしょう?多少なら育ちが早くて、遅くてと言われたらね」
「はい、誤差の範囲なら違うとは言えないと思います」
フエアラもマイーサも子どもを育てており、2歳くらいの子の大きさが違ったり、できることも違うことは経験上知っている。
リリカのことはクリーナから話を聞いたが、どこかぼんやりとしており、フエアラも本当にシールドの子どもなのか?と思った。
「でも否定もできない。だからこんなことになるのよね……調べることができれば解決なのに、とは言ってはならないのよね」
「心中お察しいたします。子爵もどこにいたか分からない女が認めてもらえるはずがない、気味が悪いなどと言われておりました」
「酷い親かもしれないけど、その通りね」
「マリアール侯爵令息は、良く受け入れてくれたとも言っておりました」
「確かに。報告書よろしくね」
「承知いたしました」
フアエラは執務室に戻りながら、リリカについて考えていた。
追い詰められていたのだから逃げたくもなるという者もいたが、大半は同じ貴族としてあり得ないという考えであった。
だが、クリーナからリリカの労働を受け入れることは、二つ返事で了承した。
リリカは今は侯爵夫人ではないが、それでも立場が立場なだけに、働く場所は限られる。きちんと働かせないと、慰謝料や費用が支払えない。
だが、他の使用人と同じように扱うことが条件にした。
フエアラはマリアール侯爵家にバインダとクーカが押し掛けたことなどは知らなかったが、待ち伏せをしていたと聞いて、リリカと話ができない状態なのだろうと察しただけである。
「はい、申し訳ございませんでした」
「いいのよ、仕事に戻って頂戴」
「はい!」
リリカは持ち場に戻って行き、フエアラは担当させていたメイドに声を掛けた。
「どうだった?」
「怒られ、責められておられました。マリアール侯爵家にどうにかしてもらえないのか、どこで何をしていたのか、どうして戻らなかったのかと問い詰めておりました。後で発言をまとめて提出いたします」
「ありがとう。あの両親ならそうなるでしょうね」
追い詰めた両親であることは、有名な話であるために、姉であるクリーナから聞いていたこともあるが、フエアラも知っている。
優しい雇い主なら追い返したかもしれないが、フエアラはクリーナから、リリカの様子を伺って欲しいと頼まれており、良いチャンスだと思った。
「何か気になることはあった?」
雇い主に何か話すことはないだろうが、追い詰めたような親と一緒にすれば、冷静さを失うのではないかと考え、両親もフアエラがいたら本性を現さないだろうと席を外した。
だからこそ、記憶力の良い機微に聡い侍女・マイーサをメイドとして付けて、リリカの様子を伺わせることにした。マイーサはバインダとクーカではなく、リリカの動きや表情がよく見える場所に控えていた。
「男と逃げたと言われた際には、とても驚いていました」
「まさか図星って顔?」
「いえ、図星というより、素直に驚いたように見えました」
「そう……」
そんな話になるなんてと、単に驚いただけなのか。何か疚しいことがあったのか。
「男がいたと思う?」
「母親はあり得ないと馬鹿にしておりましたが、男性ではないとしても、誰かいたのではないか、何かあるのかと私は感じました」
「やっぱり誰かいるのかしら……お姉様も手助けした人間がいると言われた方が納得できると言っていたわ」
「私もそう思います」
フエアラはクリーナもマイーサもそう言うのなら、証拠が欲しいところだなと考えていた。
「子どものことも、認めてもらえると思っていたとも言っておりました」
「そこも、お姉様の言う通りね。でもね、子どもも正直、生まれたばかりなら違うけど、もう2歳でしょう?多少なら育ちが早くて、遅くてと言われたらね」
「はい、誤差の範囲なら違うとは言えないと思います」
フエアラもマイーサも子どもを育てており、2歳くらいの子の大きさが違ったり、できることも違うことは経験上知っている。
リリカのことはクリーナから話を聞いたが、どこかぼんやりとしており、フエアラも本当にシールドの子どもなのか?と思った。
「でも否定もできない。だからこんなことになるのよね……調べることができれば解決なのに、とは言ってはならないのよね」
「心中お察しいたします。子爵もどこにいたか分からない女が認めてもらえるはずがない、気味が悪いなどと言われておりました」
「酷い親かもしれないけど、その通りね」
「マリアール侯爵令息は、良く受け入れてくれたとも言っておりました」
「確かに。報告書よろしくね」
「承知いたしました」
フアエラは執務室に戻りながら、リリカについて考えていた。
追い詰められていたのだから逃げたくもなるという者もいたが、大半は同じ貴族としてあり得ないという考えであった。
だが、クリーナからリリカの労働を受け入れることは、二つ返事で了承した。
リリカは今は侯爵夫人ではないが、それでも立場が立場なだけに、働く場所は限られる。きちんと働かせないと、慰謝料や費用が支払えない。
だが、他の使用人と同じように扱うことが条件にした。
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