私のバラ色ではない人生

野村にれ

文字の大きさ
534 / 784

ララシャ王子妃の生クリームたっぷり生活~糖尿病への道~

しおりを挟む
「ロペス医師が来ていたようだが、何かあったのか?」

 アンセムが来た時には、まだ四人は濃いブラックコーヒー片手に、揃いも揃ってしかめっ面で、まとめている最中であった。

「ララシャ王子妃の生クリームたっぷり生活~糖尿病への道~を、皆でまとめて貰っているのよ!」
「は?」
「ララシャ王子妃の怠惰なお妾生活~樽への道はコツコツと~でもあるわ!もう文字にするだけで、胸やけよ?」
「へ?」

 アンセムもクイオもオーランも、妻が王妃陛下が何を言っているのか、いつもながら分からなかった。侍女たちも渋い顔をして、頷いている。

 しかも、皆の側にはもれなく真っ黒のコーヒーらしきものが用意されている。

「分かるか?」

 アンセムは、自分だけが分からないのかと、オーランとクイオに訊ねた。

「陛下が分からないのに、分かりませんよ!」
「そうですよ!」
「陛下、恐れながら、私が説明しましょうか?皆様は今、まとめるのと、胸やけでお忙しいのです」

 一部始終を見ていた護衛のマイトが、手を上げた。

「すまないが、頼む」

 マイトはピデム王国からララシャの生活が届いたことから、四人の様子から聞き及んだこと、ロペス医師の判断を全て話した。

 アンセム、オーランとクイオも、全てを聞き終えた頃には、同じようなしかめっ面になっていった。

「マイト、ありがとう!胸やけが酷くて、あなたたちもブラックコーヒーが必要なら言って頂戴」
「は!ありがとうございます」
「マイト、よく分かった。ありがとう」
「とんでもございません」

 マイトは頭を下げて、下がった。

「そういうことだったのだな」
「ええ、毎日、生クリームたっぷりパンケーキ、生クリームたっぷりフレンチトースト、生クリームたっぷりプリン、生クリームたっぷりパフェ、生クリームたっぷりクレープ、生クリームたっぷりドーナツ、あとチョコレートたっぷりドーナツやマカロンもあるわ」

 甘い物が得意ではないオーランは、頭がおかしくなりそうな呪文のようなメニューに思わず、吐き気を催した。

「失礼しました」
「いいえ、だからブラックコーヒーなのよ。文字だけでも、胸やけがするのよ」
「激しく理解いたしました」

 オーランは口元を押さえながら、頭を下げた。

「あと、これは私も言えた義理ではないけど、揚げ芋もお好きみたい。ララシャはこれらを、運動もせず、毎日た―――っぷりと食べていたそうよ」
「飲み物もお茶ではなく、ジュースやカフェラテやカフェオレです」
「生クリームもだけど、甘い物でも砂糖依存症なのでしょうね」
「そんなものがあるのだな」
「ええ、私も知らなかったけど、あるのですって」

 アンセムもソアリスと同じで、そのような依存症があることを知らなかった。

「何ものも、食べ過ぎると毒になると聞いたことがあるでしょう?」
「ああ」
「結局はそういうことでしょうね」
「それで、糖尿病に…」
「ええ、他の病も既に発症しているものも含めて、悪化する恐れがあるそうよ」

 糖尿病に加えて、マルシャと同じで脂質異常でも、治療が必要だとされている。

「健康診断などはしていなかったのか?」
「当然、王子妃なのだからしているわよ!既に高い数値の物は、注意を受けていたの。それでも、私は若いから大丈夫だと、食べ続けていたみたい」

 健康診断の結果も同封されていたが、要注意と書かれている部分もあった。ゆえに、ララシャは既にピデム王国にいる頃から、予備軍であったことが分かった。

「注意を受けていたのに、領地での生活のせいにしていたということか?」
「ええ、ロペス医師によると、依存症なら今は無理かもしれないけど、領地では続けていたのかもしれないわ」
「生クリームを?」
「ええ、追い生クリームをする方がいるように、手に入るみたいよ」

 オーランは追い生クリームという言葉だけで、再び吐き気を催し、申し訳ありませんと口を押えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】

との
恋愛
「彼が亡くなった?」 突然の悲報に青褪めたライラは婚約者の葬儀の直後、彼の弟と婚約させられてしまった。 「あり得ないわ⋯⋯あんな粗野で自分勝手な奴と婚約だなんて! 家の為だからと言われても、優しかった婚約者の面影が消えないうちに決めるなんて耐えられない」 次々に変わる恋人を腕に抱いて暴言を吐く新婚約者に苛立ちが募っていく。 家と会社の不正、生徒会での横領事件。 「わたくしは⋯⋯完全なる婚約破棄を準備致します!」 『彼』がいるから、そして『彼』がいたから⋯⋯ずっと前を向いていられる。 人が亡くなるシーンの描写がちょっとあります。グロくはないと思います⋯⋯。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済。 R15は念の為・・

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

【完結】最愛から2番目の恋

Mimi
恋愛
 カリスレキアの第2王女ガートルードは、相手有責で婚約を破棄した。  彼女は醜女として有名であったが、それを厭う婚約者のクロスティア王国第1王子ユーシスに男娼を送り込まれて、ハニートラップを仕掛けられたのだった。  以前から婚約者の気持ちを知っていたガートルードが傷付く事は無かったが、周囲は彼女に気を遣う。  そんな折り、中央大陸で唯一の獣人の国、アストリッツァ国から婚姻の打診が届く。  王太子クラシオンとの、婚約ではなく一気に婚姻とは……  彼には最愛の番が居るのだが、その女性の身分が低いために正妃には出来ないらしい。  その事情から、醜女のガートルードをお飾りの妃にするつもりだと激怒する両親や兄姉を諌めて、クラシオンとの婚姻を決めたガートルードだった……  ※ 『きみは、俺のただひとり~神様からのギフト』の番外編となります  ヒロインは本編では名前も出ない『カリスレキアの王女』と呼ばれるだけの設定のみで、本人は登場しておりません  ですが、本編終了後の話ですので、そちらの登場人物達の顔出しネタバレが有ります  

殿下、もう何もかも手遅れです

魚谷
恋愛
偉大なる国王が崩御した。 葬儀の場で、王太子アドルフォスは、父王が病床にいるのを良いことに国を思うがままにしようとする、婚約者である公爵令嬢ロザリンデと、その父である宰相を断罪しようと決意する。 全ては自分が次の王に相応しいことを、その場にいる全ての貴族たちに示すため。 アドルフォスは自分の勝利を信じて疑わなかった。 自分には、麗しい子爵令嬢で、数百年に一度生まれる聖女の力に覚醒したエレインという心強い味方がいるのだから。 勝利は揺るぎないはずだった……そう、アドルフォスの頭の中では。 これはひとつの国の終わりの物語。 ★他のサイトにも掲載しております ★13000字程度でサクッとお読み頂けます

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました

さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア 姉の婚約者は第三王子 お茶会をすると一緒に来てと言われる アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる ある日姉が父に言った。 アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね? バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?

ミィタソ
恋愛
「みんな聞いてくれ! 今日をもって、エルザ・ローグアシュタルとの婚約を破棄する! そして、その妹——アイリス・ローグアシュタルと正式に婚約することを決めた! 今日という祝いの日に、みんなに伝えることができ、嬉しく思う……」 ローグアシュタル公爵家の長女――エルザは、マクーン・ザルカンド王子の誕生日記念パーティーで婚約破棄を言い渡される。 それどころか、王子の横には舌を出して笑うエルザの妹――アイリスの姿が。 傷心を癒すため、父親の勧めで隣国へ行くのだが……

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します

hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。 キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。 その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。 ※ざまあの回には★がついています。

処理中です...