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女神と反女神②
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「女神の戦い…怖すぎる。」
ライヤードによって魔王城に連れ戻された亜月は、ブルブルと震えていた。それを見てライヤードは「確かにね」と苦笑している。
「女神の力は僕達とはかけ離れた力だからね。世界を統べて、管理する力を持っている生き物だから、そりゃあ戦うとなればあれぐらいの規模になるよね。」
「そうなんだ…。」
「でもアヅキも本当はあれぐらいはできるんだよ?だって女神と対になる聖獣なんだから。」
「いや…私はさっき覚醒したからまだ聖獣の自覚とかないから。」
「そうなんだね。でもその色、とっても綺麗だよアヅキ。僕、惚れ直しちゃった。」
「…馬鹿。」
「何をイチャイチャしとるんじゃ、お前たちは。」
寄り添って話していたライヤードと亜月の間に入ってきたのはメルリダだった。呆れたような顔でライヤードの頭に手刀を入れていた。
「女神と反女神の戦いが始まったというのに呑気なやつらじゃ。…まぁアヅキが聖獣として覚醒したと聞いたからのぉ。ミィが負けることはないと思うが。なんせ反女神は何千年と生きてるからのぉ。」
「長く生きてると強いの?」
亜月が尋ねると、メルリダはゆっくりと頷いた。
「うむ。長く生きれば生きるほどその力は強くなる。ミィは生まれてまだ数百年だから、単純な女神の力では反女神の方が上じゃ。でも、女神の力を引き上げる聖獣であるアヅキがおるから、力は互角というところじゃな。」
「そっか。ミィさん無事だといいなぁ。」
「まぁ、それはいいとして、こやつらはなんじゃ?さっきからぎゃあぎゃあとうるさいんじゃが?」
「あ。」
メルリダが指差したのは、地面に倒れ込んでうめいているサキラと、ちぎられたサキラの腕を抱えてヘラヘラと笑っている御門だった。
ライヤードは忘れていたというような声を出した後、無言でサキラに歩み寄り、その腹を蹴り上げた。
「お前、アヅキを殺そうとしただろ?能無しの馬鹿女が。まだ自分のことを聖女だと勘違いしてるのか?なら、自分の魔法でその傷を癒してみろ。ほら!できないだろ?お前には何の力もないんだよ。女神に見出された?何馬鹿なこと言ってるんだ。遊ばれてたんだよ。お前は何の力もないただの村娘だ。腕をちぎられてそのまま死ぬんだよ。」
「ひぃぃ…!」
ライヤードに至近距離で怒鳴られてサキラが悲鳴を上げる。その後、ライヤードは御門にも近寄り、顎を蹴り上げて仰向けにさせた。
「何が勇者だ。反女神に踊らされて、この世界の守護神である聖獣を殺そうとした愚か者め。何の力もないただの異世界人が祭り上げられて楽しかったか?お前を支えようとしてくれたアヅキを馬鹿にした結果がこれだ。待っとけ、エセ聖女の後に殺してやるよ。」
「っ!待って!」
「…アヅキ。」
サキラに向かって魔法を繰り出そうとするライヤードの腕を亜月がその体に抱きつくことで止めた。
「離してアヅキ。こいつらは君を馬鹿にして傷付けた。僕は絶対に許さない。」
「許さなくていい。でも殺しちゃダメ。殺したら…!」
「殺したら何?倫理的にダメだって?はは!そんなのこの世界では通じないよ。強いものが弱いものを蹂躙する世界なんだ。それに僕は魔王だ。こいつら人間が僕達を恐れて排除しようとするんなら、こいつらの想像通りの魔王になってやるんだよ。さぁ、だから離して。」
「殺すほどの強い感情をそいつらに向けないで。私のこと好きなんでしょ?愛してくれるんでしょ?ならそんな憎しみより私への愛で心を満たしてよ。そいつらのこと殺すなんて浮気じゃない。」
「…へ?」
「そう、浮気よ。浮気。許さない。私と一緒にいてくれるんでしょ?ね?私、聖獣として覚醒してから変なの。ライヤードのこと大好きで、だれにも取られたくないの。だから私のことだけ見てて。他の生き物に惹かれるなんて絶対に許さない。」
「ひぃぃ!!」
「っうるさい!」
「あ。」
悲鳴をあげるサキラへライヤードが視線を向ける。それさえも気に入らないアヅキは無意識に力を使ってサキラの腕を治した。ついでに御門の錯乱も治療してやる。
「あ、俺…。」
「さっさと帰れ。二度と私の視界に入るな。」
「え?あ、ちょ!」
「待て!亜月!」
魔法を使って2人を人間の国の王城に戻した亜月は、安心したような顔でライヤードの胸にすがりつく。
「え?嘘?夢?これ?幸せ。」
「…亜月は聖獣の性質にかなりひっぱられてるのぉ。にしてもイチャイチャするのをやめてくれんかのぉ。」
メルリダは小さくため息をついた。
ライヤードによって魔王城に連れ戻された亜月は、ブルブルと震えていた。それを見てライヤードは「確かにね」と苦笑している。
「女神の力は僕達とはかけ離れた力だからね。世界を統べて、管理する力を持っている生き物だから、そりゃあ戦うとなればあれぐらいの規模になるよね。」
「そうなんだ…。」
「でもアヅキも本当はあれぐらいはできるんだよ?だって女神と対になる聖獣なんだから。」
「いや…私はさっき覚醒したからまだ聖獣の自覚とかないから。」
「そうなんだね。でもその色、とっても綺麗だよアヅキ。僕、惚れ直しちゃった。」
「…馬鹿。」
「何をイチャイチャしとるんじゃ、お前たちは。」
寄り添って話していたライヤードと亜月の間に入ってきたのはメルリダだった。呆れたような顔でライヤードの頭に手刀を入れていた。
「女神と反女神の戦いが始まったというのに呑気なやつらじゃ。…まぁアヅキが聖獣として覚醒したと聞いたからのぉ。ミィが負けることはないと思うが。なんせ反女神は何千年と生きてるからのぉ。」
「長く生きてると強いの?」
亜月が尋ねると、メルリダはゆっくりと頷いた。
「うむ。長く生きれば生きるほどその力は強くなる。ミィは生まれてまだ数百年だから、単純な女神の力では反女神の方が上じゃ。でも、女神の力を引き上げる聖獣であるアヅキがおるから、力は互角というところじゃな。」
「そっか。ミィさん無事だといいなぁ。」
「まぁ、それはいいとして、こやつらはなんじゃ?さっきからぎゃあぎゃあとうるさいんじゃが?」
「あ。」
メルリダが指差したのは、地面に倒れ込んでうめいているサキラと、ちぎられたサキラの腕を抱えてヘラヘラと笑っている御門だった。
ライヤードは忘れていたというような声を出した後、無言でサキラに歩み寄り、その腹を蹴り上げた。
「お前、アヅキを殺そうとしただろ?能無しの馬鹿女が。まだ自分のことを聖女だと勘違いしてるのか?なら、自分の魔法でその傷を癒してみろ。ほら!できないだろ?お前には何の力もないんだよ。女神に見出された?何馬鹿なこと言ってるんだ。遊ばれてたんだよ。お前は何の力もないただの村娘だ。腕をちぎられてそのまま死ぬんだよ。」
「ひぃぃ…!」
ライヤードに至近距離で怒鳴られてサキラが悲鳴を上げる。その後、ライヤードは御門にも近寄り、顎を蹴り上げて仰向けにさせた。
「何が勇者だ。反女神に踊らされて、この世界の守護神である聖獣を殺そうとした愚か者め。何の力もないただの異世界人が祭り上げられて楽しかったか?お前を支えようとしてくれたアヅキを馬鹿にした結果がこれだ。待っとけ、エセ聖女の後に殺してやるよ。」
「っ!待って!」
「…アヅキ。」
サキラに向かって魔法を繰り出そうとするライヤードの腕を亜月がその体に抱きつくことで止めた。
「離してアヅキ。こいつらは君を馬鹿にして傷付けた。僕は絶対に許さない。」
「許さなくていい。でも殺しちゃダメ。殺したら…!」
「殺したら何?倫理的にダメだって?はは!そんなのこの世界では通じないよ。強いものが弱いものを蹂躙する世界なんだ。それに僕は魔王だ。こいつら人間が僕達を恐れて排除しようとするんなら、こいつらの想像通りの魔王になってやるんだよ。さぁ、だから離して。」
「殺すほどの強い感情をそいつらに向けないで。私のこと好きなんでしょ?愛してくれるんでしょ?ならそんな憎しみより私への愛で心を満たしてよ。そいつらのこと殺すなんて浮気じゃない。」
「…へ?」
「そう、浮気よ。浮気。許さない。私と一緒にいてくれるんでしょ?ね?私、聖獣として覚醒してから変なの。ライヤードのこと大好きで、だれにも取られたくないの。だから私のことだけ見てて。他の生き物に惹かれるなんて絶対に許さない。」
「ひぃぃ!!」
「っうるさい!」
「あ。」
悲鳴をあげるサキラへライヤードが視線を向ける。それさえも気に入らないアヅキは無意識に力を使ってサキラの腕を治した。ついでに御門の錯乱も治療してやる。
「あ、俺…。」
「さっさと帰れ。二度と私の視界に入るな。」
「え?あ、ちょ!」
「待て!亜月!」
魔法を使って2人を人間の国の王城に戻した亜月は、安心したような顔でライヤードの胸にすがりつく。
「え?嘘?夢?これ?幸せ。」
「…亜月は聖獣の性質にかなりひっぱられてるのぉ。にしてもイチャイチャするのをやめてくれんかのぉ。」
メルリダは小さくため息をついた。
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