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第3部 プラチナ帝国魔法学園編
第8話
しおりを挟む9月になった。
これから2学期が始まる。
学園では、始業式が始まり学園長の長いお話を聞くことから始まった。
わりとためになることを言うなあ。
僕はそう思いながら聞いていたが、右となりの線の細そうな男子学生は目を瞑っていた。
左となりの見るからに脳筋な女子学生は周りにバレないようハンドグリップで握力を鍛えていた。
みんな、こんなときぐらいしっかり聞きなよ。
次に学園長が新しく着任する教師の紹介を始めた。
「新しく学園に着任していただいた教師をみなに紹介しよう。凄腕の冒険者であるガーネットどのじゃ。冒険者ギルドではAランクの実力者じゃ。学園でも指折りの実力者なので瘴気の森実習を担当してもらうことになった。以上じゃ」
と言ってガーネットに目をやる。
「今、ご紹介にあずかりましたガーネットといいます。なにぶん若輩者ではありますが皆様の助けとなれるよう精一杯頑張ります。よろしくお願いします」
と挨拶をする。見ていて爽やかだ。
きっと中身も爽やかで人好きのする性格なんだろう。
実はあれ以来会わないようにしていたのでどんな性格か知らない。
だって美人過ぎて目立ってしょうがない。
一緒にいたら僕まで目立ってしまう。
他の学生も同じ印象を持ったようでガーネットにたいし歓声をあげている。
特に女子から好評みたいだ。
今日は全身鎧でなく軽装の服だから身体のラインがきれいにでている。
なのでスタイルが良いのがよくわかる。
その上顔もとびきり美形だし。
この人、すぐに貴族から求婚されるんじゃないかと僕は余計なことを考えてしまった。
なんやかんやで歓声が止むと始業式は終わりを告げた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
この日は珍しく、平民の学生から依頼がきた。
依頼人は大金持ちの商会長の娘でカレン・ラズベリーと名乗った。
内容は護衛。
久々にまともな依頼だな。
詳しく聞くと、今週末の休みにどうしても実家へ帰らないと行けなくなったが護衛係が急用でどうしても都合がつかなかったらしい。
学園からラズベリー商会の彼女の実家までは馬車で1日かかるほど。
それほど悪くない依頼だ。
「承知しました。依頼を受けさせていただきます。それで次に会う場所と日時は・・・」
と言いかけると、さえぎるようにカレン嬢は
「依頼受けてくれてありがとう。で、あのね。できれば出発の日までは私のそばにいて護衛をして欲しいの」
と言ってくる。
ぬあー。引き受けた後で依頼を追加するなんてマナー違反も甚だしい。
ギリギリ引き受けても良いかと思える辺りを言うので、この令嬢がヤリ手なのか僕が舐められているのか。
まああいいか。
「あの、底辺腰抜けの僕が側にいると、そちらに何かと迷惑がかかるんじゃないのかな」
と言うとカレン嬢はふしぎそうに
「あら、そんなことはないわよ。本当にそう思っているのは、一部の貴族だけよ。平民棟で学ぶ学生は私を含めて誰もあなたのことをそんなふうに思ってないわよ」
ええ、そうかなぁ。
平民棟で話を聞く限り、周りの学生からの僕への視線は好意的と思えるものではない。
あ、ちなみに平民棟とは、主に平民たちがうける授業の教室が多い棟のことで、必然的に平民の学生が多くいる。対して貴族がうける授業の教室が多い棟は貴族棟という。
まあ、カレン嬢が良いと言うのであれば護衛ぐらいいいかと思い、
「承知しました、カレン様。護衛の件、引き受けましょう。ただあまり近くにいるのは良くないと思うので、少しだけ距離をとりますね」
と言って距離を取ろうとしたら、ガシィと服を掴まれ
「ここでいい」
と言われてしまった。よっぽど淋しいのかな。もういいや。好きにして。
その日から、授業は別々だが出来る限り僕はカレン嬢と一緒にいるようにした。
翌日も休み時間や移動時間の合間、昼休みなど少しの時間も護衛としてカレン嬢の近くにいるようにした。
でも妙なんだ。
学園内の護衛と言っても危険があるわけではないし。
このカレンという人、僕にベタベタしてくるし甘えてくる。
かと言って僕に好意がある感じではない。
何故わかるかと言うと、そのベタベタも人の少ないところではなく多いところで行うから。
しかも決して意識を僕の方に向けず、別の誰かを意識しているみたいに感じる。
なんか別の狙いがあるのかなぁ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そして週末になり、彼女を実家へ護衛する日が来た。
馬車で移動するのだけど僕は御者として外にいる。
そして僕だけでは心許ないので、ガーネットにも来てもらうことにした。
建前としては、僕たちが行く町と同じ町にガーネットが用事があるようにカレン嬢に知らせ、それならばとカレン嬢のほうから一緒に行きませんかと誘わせた形だ。
本当はガーネットが僕を心配し、僕のためについてきてくれるのだ。
さあ鬼が出るか蛇が出るか。
なんとなくだがこの道中でカレン嬢のねらいが分かる気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
やっぱり変だ。
敵意は感じないがこの護衛依頼、なんか変。
僕が訝しんでいるとガーネットが声をかけてきた。僕とガーネットは同じ御者台にいる。
「ご主人様、この度は自分を従者として選んでくださりありがとうございます。全身全霊を以てご主人様のお役に立つところをお見せいたしましょう」
「つきましては、周囲2kmの範囲を探知魔法でみたところ、妙なものが2つありまして」
(作者に代わってエクレアからの一言メモ)◇◇◇◇◇◇◇◇◇
魔法騎士団の上位者でも探知魔法は周囲20mが限界です。ですので周囲2kmの範囲の探知魔法は人族の常識をはるかに超えるレベルだと思ってください。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「一つは前方に複数の武装集団がいてこちらに敵意をもっています」
「がもう一つは後方、学生が馬に乗ってこちらの様子を伺いながらついてきているみたいです。」
「その後ろの学生って、もしかして・・・」
僕はガーネットにその学生がどんな顔をしているかや身体の特徴を聞いてみた。するとガーネットから答えを聞いて確信したことがある。
もしかしてカレン嬢が狙っていることはこれかもしれない。
しばらくして。
前方から武装した盗賊が現れ馬車を襲撃してきた。
盗賊は5人ほど。
が、僕とガーネットは予測していたので、打ち合わせ通りガーネットには盗賊を殺さずに無力化しておくよう指示し、僕は馬車の近くで待機しカレン嬢を守ることにした。
すると、襲撃されたことに気づいたカレン嬢がケムリの出る魔道具を取り出し、周囲に煙幕がわりのケムリを大量に吐き出させた。
ケムリが馬車を囲んでいる。そんな馬車の後方の様子をしばらく伺っていると、
「カレンーーーー!」
と叫びながら馬にのってカレンを助け出そうとする若者が走ってきた。
この人、知ってる。
僕が護衛をしている時にチラチラ、カレン嬢の周りにいた人だ。
今から思えば僕にベタベタするのはこの人がいた時だったと思う。
この人に見せつけるためにカレン嬢は僕とベタベタしていたのかも。
カレン嬢もその男子学生もお互いの顔を見ようと近づくがケムリが多すぎて相手の位置がつかめないでいる!!
ガーネットが盗賊5人を相手にしているので問題ないと思っていたが茂みにもう一人隠れていたみたいでその盗賊がカレン嬢のほうに襲い掛かろうとした。
僕は素早くその盗賊に当身を喰らわせ気絶させ、さらにその男子学生が気絶させたようにお芝居をした。
僕は少々棒読みで
「ああ、カレン様に襲いかかろうとした賊を誰かがやっつけたぞ。この人はなんて強いんだ」
と言って持っていた剣をその男子学生に渡し、目配せする。僕の意図に気づいたその男子学生は僕より棒読みで
「あ、おお、か、カレンを襲う不埒な真似をする奴はおれがゆるさないぞー」
これはまあ仕方ない。
しかし、ちょうどいい場面をカレン嬢は見たようで自分を守ってくれたのは僕でなく男子学生だと思ったようだ。
「オルディアン!!私を守ってくれたのね。嬉しいわ!!」
と顔を見て抱きつきに行くカレン嬢と抱き締める男子学生。そうか名前はオルディアンというのかー。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
カレンとオルディアンは昔から好き合っていたらしい。
が家が貧乏でカレン嬢の親が反対していた。
2学期になり、婚約者を探し始めた親にどうしてもオルディアンを許して欲しくて一芝居を打とうと考えた。
だとしたらかなり危ないところだった。
彼に盗賊をつかまえさせて親に認めさせようとしたんだろうけど上手くいかなかったら2人とも死んでただろう。
そのことを言うとにっこり笑って「愛があれば大丈夫!」と胸を張っていたがとなりのオルディアンは顔色が悪かった。
そして僕に依頼してから1週間、僕をそばに置きベタベタしてオルディアンを煽り彼を嫉妬させようとしたらしい。
そして実家へいって僕を親に紹介するのだとオルディアンに言って心配させ、ついて来させて雇った盗賊に自分を襲わせたそうだ。
行動力が無駄にある!!!
上手くいったからいいようなもの。だけどこれ、僕は当て馬役だな。まあいいけど。
この後、彼、オルディアンが「一緒に彼女の親に会いに行って話をします」と言うので僕たちはカレン嬢と別れることにした。
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