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6.迷惑なエスコート-4
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振り返ると、アルフレッドが憮然とした表情をして立っていた。
「あ、あら。アルフレッド様ったら私のことなどもう宜しかったのに」
アルフレッドはムスゥとして答えた。
「そういう訳にはいきません。僕は貴女のエスコート役なので」
カリーナは明らかに拗ねているであろう美男子騎士をじっと見つめた。
「なんですか」
アルフレッドは顔を赤らめて視線を逸らしている。
「ごめんなさい。先ほどの陛下に対する態度と余りにも違うから不思議に思ったの。普段はあんな無愛想なの?」
カリーナは話しながらアルフレッドの腕に掴まった。
使用人達が片付け始めた園庭は、もう人も疎らだ。
もう、人に取り囲まれることはないだろう。
「それと、もう敬語は止めて頂戴。貴方もだいぶ心を許してくれてるようだし」
顔を下からうかがい見ると、アルフレッドは、頷いて口元を綻ばせた。
どうやら機嫌は直ったようだ。
「表情は変えずにいるし、なるべく話さないようにしてる。社交場に限らず、どこからともなく沸いてきて纏わりつくので、なるべく人目につかないようにしてるんだ」
なんという言いぐさだ。
令嬢達をまるで虫のように…まあ、余程鬱陶しかったんだろうな。
「なのに、逆にカリーナは逃げたよね」
「貴方の顔を見て逃げた訳じゃないわよ」
「僕だって好き好んでこんな顔に生まれた訳じゃないのに」
「……その発言は世の中のほとんどの人を敵に回すからやめた方が良いわね」
「…ミネシア国の王子と何の話をしていたの?」
突然話題を変えてきた。
カリーナは素直に説明する。
物産品の話しかしてない。
「多分、兄としては別の目的で紹介したんだろうけど、残念ながらそういった雰囲気にはならなかったわ」
カリーナはあははと笑ったが、アルフレッドは急に黙ってしまった。
「お互い避けて通れない道とは言え、面倒よねぇ」
同意を求めるように隣を見たが、アルフレッドは唇を強く結んで何かを考えこんでいるようだ。
そうして、意を決したように、訊ねた。
「カリーナには婚約者はいないの?」
「いないわよ。というか、最近解消したというか…消滅したというか」
まあ、幼い頃の口約束だから何の効力もなかったのだけど。
「消滅!?婚約が消滅ってどういうこと?」
えらく食い付いてきたな。
説明するのは面倒だから話を逸らそう。
「貴方こそ、その容姿で肩書だったら、引く手あまたでしょうに」
アルフレッドはとたんに苦い表情になって吐き捨てるように言った。
「寧ろそこしか見てない令嬢ばかりだよ。それか、後ろに家の思惑が透けて見えるか」
王族にしろ貴族にしろ婚姻は概ねそういうものだ。
ただ、割り切れない気持ちがあるのはカリーナも同じである。
「色恋に限らず、貴方の周りにはそんな人ばかりなの?心を開ける人が身近にいないと辛いものよ。少し心配だわ」
アルフレッドは美しい顔を更に輝かせてカリーナを見下ろした。
「貴女がいるよ。こんなに打ち解けて話せるのはカリーナだけだ」
カリーナは言葉に詰まる。
「それはとっても嬉しいけど…私は明後日には帰ってしまうのよ」
アルフレッドは見るからにしゅんと項垂れてしまった。
そうして掛ける言葉を探しているうちに部屋の前まで来てしまう。
隣の部屋の兄はまだ戻っていないようだ。
そういえば園遊会の終盤に、どなたかに呼ばれたらしく、カリーナを一人残して姿を消している。
カリーナはアルフレッドに声をかけた。
「良かったらお茶でも飲んでいく?」
アルフレッドは、戸惑いながらも頷いた。
「あ、あら。アルフレッド様ったら私のことなどもう宜しかったのに」
アルフレッドはムスゥとして答えた。
「そういう訳にはいきません。僕は貴女のエスコート役なので」
カリーナは明らかに拗ねているであろう美男子騎士をじっと見つめた。
「なんですか」
アルフレッドは顔を赤らめて視線を逸らしている。
「ごめんなさい。先ほどの陛下に対する態度と余りにも違うから不思議に思ったの。普段はあんな無愛想なの?」
カリーナは話しながらアルフレッドの腕に掴まった。
使用人達が片付け始めた園庭は、もう人も疎らだ。
もう、人に取り囲まれることはないだろう。
「それと、もう敬語は止めて頂戴。貴方もだいぶ心を許してくれてるようだし」
顔を下からうかがい見ると、アルフレッドは、頷いて口元を綻ばせた。
どうやら機嫌は直ったようだ。
「表情は変えずにいるし、なるべく話さないようにしてる。社交場に限らず、どこからともなく沸いてきて纏わりつくので、なるべく人目につかないようにしてるんだ」
なんという言いぐさだ。
令嬢達をまるで虫のように…まあ、余程鬱陶しかったんだろうな。
「なのに、逆にカリーナは逃げたよね」
「貴方の顔を見て逃げた訳じゃないわよ」
「僕だって好き好んでこんな顔に生まれた訳じゃないのに」
「……その発言は世の中のほとんどの人を敵に回すからやめた方が良いわね」
「…ミネシア国の王子と何の話をしていたの?」
突然話題を変えてきた。
カリーナは素直に説明する。
物産品の話しかしてない。
「多分、兄としては別の目的で紹介したんだろうけど、残念ながらそういった雰囲気にはならなかったわ」
カリーナはあははと笑ったが、アルフレッドは急に黙ってしまった。
「お互い避けて通れない道とは言え、面倒よねぇ」
同意を求めるように隣を見たが、アルフレッドは唇を強く結んで何かを考えこんでいるようだ。
そうして、意を決したように、訊ねた。
「カリーナには婚約者はいないの?」
「いないわよ。というか、最近解消したというか…消滅したというか」
まあ、幼い頃の口約束だから何の効力もなかったのだけど。
「消滅!?婚約が消滅ってどういうこと?」
えらく食い付いてきたな。
説明するのは面倒だから話を逸らそう。
「貴方こそ、その容姿で肩書だったら、引く手あまたでしょうに」
アルフレッドはとたんに苦い表情になって吐き捨てるように言った。
「寧ろそこしか見てない令嬢ばかりだよ。それか、後ろに家の思惑が透けて見えるか」
王族にしろ貴族にしろ婚姻は概ねそういうものだ。
ただ、割り切れない気持ちがあるのはカリーナも同じである。
「色恋に限らず、貴方の周りにはそんな人ばかりなの?心を開ける人が身近にいないと辛いものよ。少し心配だわ」
アルフレッドは美しい顔を更に輝かせてカリーナを見下ろした。
「貴女がいるよ。こんなに打ち解けて話せるのはカリーナだけだ」
カリーナは言葉に詰まる。
「それはとっても嬉しいけど…私は明後日には帰ってしまうのよ」
アルフレッドは見るからにしゅんと項垂れてしまった。
そうして掛ける言葉を探しているうちに部屋の前まで来てしまう。
隣の部屋の兄はまだ戻っていないようだ。
そういえば園遊会の終盤に、どなたかに呼ばれたらしく、カリーナを一人残して姿を消している。
カリーナはアルフレッドに声をかけた。
「良かったらお茶でも飲んでいく?」
アルフレッドは、戸惑いながらも頷いた。
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