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13.偽装魔道騎士-1

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翌日、カリーナは早起きして軽く身支度を整えた。
今日は、アルフレッドが城下町の生誕祭に案内してくれる予定だ。
他の来賓達は、展望台で眺めることになっているようだが、アルフレッドが提案してくれたのだ。

「カリーナはそれではつまらないだろう。城下町を歩きたいんじゃないか?」
「え!それは是非ともそうしたいけど、大丈夫かしら…私の格好じゃあ、結構目立つんじゃない?」

アルフレッドは、少し考えてから、それについては僕に任せてくれ。
と、言い残し去った。
カリーナはそわそわしながら扉がノックされるのを待っていた。

それから暫くしてノックの音と現れたのは侍女長とグレーのローブを着た女性騎士だった。

「ノーラ=バンズです」

カリーナと同じほどの背丈の精悍な美女は頭を垂れた。
戸惑うカリーナに、侍女長は抱えていた衣装を掲げてみせた。

「バイオレット閣下からの指示で、本日カリーナ殿下には魔道騎士の扮装をしていただきます」


髪を上できつめに結びフードを被った。

「完璧です」

ノーラから御墨付きをもらい、カリーナは安堵した。グレーのローブの下はショートパンツとロングブーツという出で立ちで少し恥ずかしいが、長いローブのお陰でほとんど見えない。
本当はスラックスが主流らしいが、サイズが大きすぎて断念したのだ。
侍女長に見送られてノーラと並んでアルフレッドが待つという西の門まで歩く。
ふと右を歩くノーラの耳の赤いピアスが目に止まった。
ミルトの耳にあったものと同じ赤い石だ。

「そのピアスってガルシア王国特有のものなの?」

ノーラは、切れ長の瞳を細めて微笑んだ。

「これは、魔術制御の魔道具です。私はまだ見習いなのでつけているんです」

カリーナは愕然とした。
ということは、ミルトは魔術が使えたってこと?
全く気付かなかった。

「カリーナ殿下には今回ダミーのピアスを用意出来なかったので、フードは脱がないで下さいね。城下町は治安は良い方だと思いますが、祭の間は他の国から良からぬ輩が入り込んだりするので」

カリーナは頷いた。

「まあ、副団長が側に付いていらっしゃれば心配することはないでしょう」

ノーラはニッコリ笑った。
しかし、アルフレッドが待っているはずの場所にいたのは意外な人物だった。
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