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13.偽装魔道騎士-2

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「カリーナ姫!昨晩ぶりっすね!」

昨晩、舞踏会で会った巻き毛の騎士だ。
ノーラは訝しげに見ると、ぶっきらぼうに尋ねた。

「何故、貴方がここにいるんです?」

巻き毛の騎士はブラウンの人懐こい眼を輝かせて笑いながら陽気に答える。

「副団長が急用で来れなくなったんすよ。同盟国で紛争が起きたって情報があって、そこの来賓と急遽、対応策について話し合うとかでー」

ノーラはため息をこぼして呟いた。

「貴方が話すと何故だか軽く聞こえるんですよね…」
「それで、俺が代役を掴み取りました!」

巻き毛の騎士は、カリーナの手を取ってブンブン上下に振りながら、自分はキース=フランだと名乗った。
ノーラは呆れながらも、カリーナに話す。

「少々チャラいですが、こう見えても腕は確かです。第三隊長を務めておりますので」

隊長なんだー…カリーナは一抹の不安を覚えながらも笑って頷いた。


***


「副団長には姫と話すなとか、触るなとか言われたんすけどー、話さないと案内出来ないじゃないっすかー。むちゃくちゃっすよねぇ」

キースはチャラい口調の割に中々良い案内役だった。
ずらっと並ぶ屋台を興味津々で眺めるカリーナに、ひとつひとつ丁寧に説明してくれる。

「あれはポポの実っすね、めっちゃ固くてトンカチで叩いて割って食うんです。中はもちもちして甘いやつが入ってます。旨いっすよ」

お土産だと言って買って持たせてくれたり、その他にも串焼きや薄い生地で甘いクリームを巻いたお菓子などせっせとご馳走してくれた。
どれも美味しくて、カリーナはご機嫌だった。

大通りから、手風琴と打楽器が奏でる音楽が聞こえてきた。
カリーナがあれは何かとキースに尋ねると、パレードだという。
大通りの両側に見物客が集まり始めると、左手から巨大な張りぼてが現れた。
どうやら、聖人を象ったもののようで、白い長いローブを着て、額に黄金に光る八角形の飾りのついた冠を被っている。
その飾りと同じものが、錫杖の天辺にも付いている。

「ロミスター教の始祖のアルカイダ聖人すね。星から舞い降りて数々の奇跡を起こした後また星に戻ったと云われてるんっすよ」

ああ、あの飾りは星を表してるんだ。宮殿の形もなるほど八角形だ。

「昔は星から神託を受けてたらしいっすね。だから、ガルシア国民は夜空に祈るんす。ロミスター教の教会も星が良く見える丘の上にあるんすよ」

カリーナは、ドキリとした。
ミルトと誓ったのは丘の上、正に星に誓ったのだ。
ロミスター教を信仰しているガルシア国民にとっては正式な誓いだと言える。
カリーナの胸はざわついた。

「破ったら神を偽ることになるからね」

ミルトは確かそう言った。
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